第45話 罠で遊ぼう
「魔王様、新しい罠はどういったものでしょうか? 私、とても興味があります」
アイルは頻りに瞬きをして、体からワクワクが溢れ出ていた。
俺はちょっと圧倒され気味。
近くにいたプゥルゥも、彼女のことを呆然と見ていた。
「ああ、ちょっと待ってね」
ともかくコンソールを確認する。
[合成レシピ(罠・兵器)]
・城床ブロック×1 + バネ罠×1 = 床スイッチ×5 NEW!
・城床ブロック×1 + 魔紅石×1 + 魔力の鏡×1 = ファイアトラップ×1 NEW!
・鉄鉱石×3 + 歯車×1 = スイングカッター×1 NEW!
・鉄鉱石×2 + 木材×5 + グーランの髭×1 = 大弓×1 NEW!
・鉄鉱石×1 + 亜鉛×1 = 金ダライ×1 NEW!
物凄く一杯来てた。
一個一個、見て行こう。
まずは床スイッチ。
バネ罠に付属になっていたものとは違うようだけど……。
[床スイッチ]
様々な罠の発動に使える汎用スイッチ。床や壁に設置し、踏んだり押されることで罠に伝達される。罠だけでなく照明や扉の開閉にも応用が可能。
なるほど、色々なアイテムに連動させることが出来る万能スイッチってわけか。
これは使い方によっては、かなり便利そう。
次は、
[ファイアトラップ]
床スイッチ連動専用トラップ。
足元から吹き出す地獄の炎。あらゆる侵入者を消し炭に変えるでしょう。うしし
なんで最後笑った!?
それはそうと、この罠はかなり強力そうだ。
さっきの床スイッチを組み合わせて使わないと動かないみたいだけど、誤って踏むと冗談では済まなそう。
お次は、
[スイングカッター]
床スイッチ連動専用トラップ。
発動すると天井から吊された大鎌が振り子運動を開始。そのまま侵入者の首を切り落とす。尚、大鎌はハンマーや鉄球など別のアタッチメントと交換が可能。今期、一押しの罠。
今期って、どの期だよ!
相変わらずだな……。
で、
この罠も結構使えそうだけど、仕組みからして屋外では使えないな。
狭くて天井のある場所。ダンジョン専用の罠って感じか。
次は大弓。
[大弓]
矢を連射出来る大型の弓兵器。城壁の上に設置して敵を迎え撃ったり、狭い空間に誘い込んで速射で風穴を開けるなど、活用用途は多彩。尚、弓矢は自動装填な上、弾数は無限。よって撃ち放題、殺し放題。
何、食べ放題、飲み放題みたいな言い方になってんの!
ってか、この説明文考えてる人、誰よ?
で、この大弓は罠ではなくて、設置型の武器って感じか。
城やダンジョンの防衛に一役買ってくれそうだな。
弓矢が無限ってところがいい。
んで、最後だけど……。
[金ダライ]
言わずと知れた金属製のタライ。お洗濯に良し、水汲みに良し、お子様の水浴びに良し、金魚も飼える万能用器。もちろん罠にも良し。
もちろん罠にも……じゃねえよ!
何となく想像出来るけど、これも床スイッチと連動させるんじゃないか?
普通にタライとして使った方が良さそうだけどな。
そんな訳でこれで全部か。
一部を除いて、かなり良い物が揃ったと思う。
「魔王様?」
あんまり長いことコンソールを見詰めていたので、アイルが待ちを通り越して心配になったようだ。
「ああ、ごめん。全部、確認したよ。今回は使えそうな罠が結構あった」
「まあ、それは宜しゅう御座いますね。勇者が泣き叫んで命乞いをするような罠は御座いましたか?」
アイルは瞳を輝かせる。
「ファイアトラップとスイングカッター、それとこれは罠ではないけど大弓はかなりイケてると思うよ」
「名前だけでゾクゾクしてしまいますね」
「そ……そうかな……?」
「それで、その罠はどんな罠なんです?」
「侵入者を炎で焼き殺す罠と、首を切断してしまう罠かな」
自分で言っててなんだけど、酷い罠だな。
でもアイルは、
「ああっ……素晴らしいですねっ!」
そんなふうに息を荒くしながら、まるで恋をした少女のようにうっとりとした表情を浮かべていた。
「でも、この罠って床に設置したスイッチを踏ませないことには発動しないんだよね。それを踏ませるのが、なかなか難しいんじゃないかな」
「それでしたら、魔王様は勇者の心理を突いて落とし穴を設置するのが得意ではありませんか。そのスイッチとやらも同じ要領で行えば良いのではないでしょうか?」
「落とし穴は地下に空間を作る素材だから、一見すると他の地面や床と変わらない見た目なんだよ。でもこのスイッチは、スイッチだと思うから、何かに擬態させるとか、隠すとかしないとバレバレなんじゃないかと思う」
「なるほど、踏ませるのに何かアイデアが必要なのですね」
「へー、ワナってムズかしいんだね。ムシャムシャ……」
俺達の会話をしばらく黙って聞いていたプゥルゥが、久し振りに口を開いた。
しかも、体が何かを咀嚼するようにモニュモニュと揺れている。
「ムシャムシャ……って、プゥルゥ? さっきから何か食べてない?」
「え? ああ、これだよ。マオウさまもたべる?」
そう言ってどこからともなく彼女が取り出してきたのは、黄色くて反りのある果物のような……いわゆるバナナみたいなものだった。
バナナとちょっと違うのは、青い水玉模様な所だ。
「何、それ?」
「バナーネだよ。とってもアマくておいしい。このへんのモリによくナってるよ」
「そ、そうなんだ」
プゥルゥは持っていた房から一本千切ると、また食べ始めた。
ってか、皮ごと食べちゃってない?
大丈夫なのか?
「はい、マオウさまもひとつ」
「あ、ありがとう」
何気なく貰ったそれを見詰める。
見た目さえ違えど、感触や香りはバナナと一緒だ。
食べられそう。
但し、皮は無理だ。
俺の直感がそう言ってる。
早速、そのバナーネの皮を剥く。
プゥルゥがくれるものだから安心して食べて大丈夫だろう。
なので一口、囓ってみた。
「ん……バナナだ。しかも普通のバナナより濃厚でうまい」
「うふ、よろこんでくれてナニよりだよ」
プゥルゥは嬉しそうにしながら、もう一本食べていた。
この世界の食べ物は何でもうまいなー。
あっと言う間に食べ終わってしまった。
俺の手に残されたのはバナーネの皮だけ。
さすがにその辺に投げ捨てるわけにもいかない。
かといって、ずっと手に持ってるのもムズムズする。
そこで思い付いたのが
これで一旦、格納できるんじゃないか?
思ったが試し時、早速やってみる。
牙でガブッと噛み付くと、皮が消える。
一応、コンソールでアイテムボックスを確認してみると、ちゃんとバナーネの皮×1で格納されていた。
こういう使い方も有りか。巨大な入れ物を持ってるみたいで便利だな。
このままコンソールを閉じても良かったんだけど、ちょっとした興味からバナーネの皮の
[バナーネの皮]
バナーネから果肉を取ってしまった残り。
踏むと1ブロック分、強制的に前へ飛ばされる。罠アイテム。
「え……
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