第41話 偽四天王配置
「じゃあ、誰を一番手にする?」
俺は森の道に配置する偽四天王の順番をプゥルゥに尋ねた。
「えっと、そのマエに……そんなダイジそうなこと、ボクがきめちゃっていいの?」
「全然構わないよ」
「うーん……どうしよう。そういわれてもヨクわからないよ」
彼女は本気で悩んでいた。
まるで本当の四天王を配置するかのように。
そんなに真剣に悩まなくても……しゃべり方が違うだけで中身は全部同じゴーレムだから、あんまり変わらないぞ……?
それに、あくまで形だけ整ってればいいんだし。
プゥルゥは冷たい体が温くなるくらい考え込んでいた。
このままでは、いつになっても決まらなそうなので少しだけ助言。
「この前、オスカーリーダーにやってもらった勇者の演技を参考にすれば、どの順番が最適が分かるんじゃない?」
「それって……どういうこと?」
「例えば、あの勇者は聖剣を持ってたので近接物理攻撃がメインだと分かる。でも、必殺技は聖剣から放つ遠距離攻撃のようにも見えた。そして、攻撃が効かないと分かると無理はせず、あっさりと退く堅実さを持っている。そんな所から考えたらいいんじゃない?」
「なるほど……そのコトをとりいれてかんがえると、イチバンはボクだね」
「ほう、その心は?」
「ボクって、こんなカラダだからブツリこうげきにはトコトンつよいんだ。ケンあいてならまずはボクだよ。それにコウゲキがきかないとアッサリひくセイカクなら、そのままかえってくれるんじゃないかな?」
「そういうことか。いいんじゃない?」
「へへ……」
プゥルゥは嬉しそうに笑った。
実際はゴーレムなので、プゥルゥと違って目茶苦茶硬いけど。
「それで、ツギはイリスかな」
「ほう、それは?」
「カノジョはあまりしゃべらないから、ユウシャはトクチョウをさぐりにくくて、イヤがるんじゃないかとおもって」
「ほうほう、じゃあ二番手はイリス役のゴーレムにしよう」
なかなか調子が出てきたようだ。
「そのツギはシャルかな。カノジョは、まわりのモリがミカタのようなモノだし、サンバンてくらいモリのおくふかくまでさそいこんでからのホウがジツリョクをはっきしやすいとおもう」
「いいね」
ゴーレムなんで実際には死霊を統率出来ないけどね!
それにしてもプゥルゥって、見かけによらず、なかなかの分析力があるみたい。
本物の配置にも使えそうだよな。
「アイルはマオウさまのそばがイチバンいいとおもうし、そうなるとヨンバンめはキャスパーできまりだね。カレのケンジツさから、おしろにはゼッタイにいれないとおもうし……って、こんなのでいい?」
「うん、よく分析出来てたよ。それで行こう。ありがとう」
「うふふ」
プゥルゥは目元をピンク色に染めていた。
「じゃあ早速、プゥルゥ役のフォックストロットリーダーをここへ呼ぼう」
死霊の森の南側、森の道から入ってすぐのこの場所がプゥルゥ役ゴーレムの守護するエリアだ。
コンソール上の魔物リストから呼び出すと、しばらくしてドシンドシンという地響きが近付いてくる。
音の方に目を向けると、城の方面から道沿いに巨体が走ってくるのが見える。
フォックストロットリーダーだ。
彼は魔王役のブラボーリーダーと違い、着飾っていないので見た目は普通のゴーレムリーダー。
早いところ、それっぽい服を着せてあげたい。
ゴーレムが到着すると、俺は目玉コウモリことメダマンを一匹、在庫から取り出す。
魔法陣から現れたメダマンは、相変わらず地面の上でカサカサいっていた。
「マオウさま、ソレどうするの?」
プゥルゥは、このタイミングでメダマンを取り出したことが不思議なようだ。
「こうするのさ」
俺は喚びだしたばかりのメダマンに告げる。
「お前はメダマン・プゥルゥゴーレムと名付ける。フォックストロットリーダーに取り憑け」
「キュィ」
小さな鳴き声で返事をすると、メダマンはフォックストロットリーダーの足元からカサカサと体の上を登って行く。
最終的に頭の部分にまで登り詰めると、そこで顔の中に溶け込むように擬態した。
まるでゴーレムの右目になったような見た目だ。
その一連の様子を見ていたプゥルゥは、
「うわぁ……」
と、気持ち悪いものを見たような反応を示していた。
その気持ち、分からないでもない。
まるでゴーレムの頭に寄生したみたいだものな。
でもこれで、ゴーレムからの視点で映像が見られるようになった。
勇者と相対した時、この目線で見ることが出来ると非常に物事を進めやすい。
超便利。
同じ手順で、他の偽四天王にもメダマンを取り付けて、それぞれ決めた場所に配置した。
「とりあえず、これでOKかな? ありがとうプゥルゥ、助かったよ」
「ううん、いわれるほどボクそんなにはたらいてないよ」
彼女は首を振るように体を細長く伸ばして横に振った。
「じゃあ、そろそろ城に戻ろうか」
「うん」
今日の作業はこれくらいにして、また明日にしよう。
そう思って二人で歩き出した時だった。
ガサガサ
森の繁みが揺れた。
「?」
森に住んでる魔物か? それともゾンビとか死霊の類い?
そんなことを考えながら注意深く見守っていると、草むらの中から一匹の動物が飛び出した。
「おおっ?」
それは狐とも猫とも似つかない不思議な見た目をしていて、毛並みはとても美しく、虹色の輝きを放っていた。
そしてその額には、体の一部なのか赤い宝石のようなものが煌めいていた。
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