第40話 森の道
俺は所持している大量の土と石で一万体のノーマルゴーレムを作り上げた。
それらを全て、死霊の森の外側を囲うように配置。
但し、西側から北側にかけて、やや警備を厚くした。
それは西側からやって来るであろう勇者を南側に口を開けている森の道へと誘い込む為だ。
ちなみに一万体のゴーレムにいちいち指示を出すのは大変なので、手の空いてそうなゴーレムリーダー十体に、それぞれ千体ずつ率いてもらうことにした。
さて、ゴーレムに関してはそれで良しとして、これからやらなくちゃいけないことは、森の南から城の袂まで続く道に勇者を迎え撃つ為の罠を仕掛けることだ。
とは言っても、今の俺が作れる罠っぽいものといえば、落とし穴とトゲ罠、そしてバネ罠と可動壁くらいだ。
これだけじゃ、なんとも心許ないが、あるものでなんとかしないと。
そんな訳で俺は、いつの間にかそんなふうに呼び始めている〝森の道〟、その入り口へとやって来ていた。
とりあえず落とし穴を大量に作ったから、これを城前まで設置していこう。
その数、千個以上。
内、いくつかはトゲ罠付き。
相変わらずの罠だけど、これだけ数があれば時間稼ぎくらいにはなるだろう。
ゴーレムに手伝ってもらいながら、まるで種撒きのように設置してゆく。
「落とし穴♪ の隣に落とし穴♪ そのまた隣に落とし穴♪」
そんな即興ソングを口ずさみながら作業していると、
「マオウさまー、ナニしてるのー?」
城の方からプゥルゥが、ぴょんぴょん跳ねながらやって来るのが見えた。
「ああ、落とし穴を設置してるところ……あっ、そこ危ないよ」
「へー、ボクもてつだう……ぷぎゃ!?」
「……」
案の定というか、いつものヤツというか、プゥルゥは落とし穴に落ちていた。
アイルも大概引っ掛かるけど……プゥルゥ、お前もか……。
「大丈夫?」
「う、うん……このくらいなんともないよ……」
穴の中からヌメッと這い出てきたプゥルゥは何事も無かったかのように元気に飛び跳ねた。
「それより、ボクもてつだうよ。みんなのイバショをまもるためなのに、マオウさまだけにハタラカセるなんてデキない」
「その気持ちはありがたいけど、俺が持ってるアイテムを共有するのが難しいんじゃないかな?」
「それはどういうイミ?」
「例えば、このリゴルの実」
そう言いながら俺は、アイテムボックスからそれを選択する。
途端、手の中にリゴルの実が現れた。
「わあ、ナニもないところからだせるなんて、テジナみたいだね」
プゥルゥは目を丸くする。
「これはプゥルゥに手渡すことが出来る。はい」
「ありがとう」
リゴルの実を受け取った彼女は、それを体内に取り込むとボコボコ言わせながら凄い早さで消化してしまった。
「ああ、おいしかった」
「でも、落とし穴みたく、元の物質に空間だけを作り出すようなアイテムはどうだろう。手渡すことは難しくない?」
「いわれてみれば、そうだね」
「それとは違うけど、城壁のような重くてデカいアイテムも同じようなことが言える。出すことは出来ても手渡すのはちょっと大変じゃない?」
「そ、そうだね……ボク、つぶれちゃうかも……」
プゥルゥは体を凹ませた。
「そんな訳でこの仕事は俺か、俺とアイテムボックスを共有してるゴーレムにしか出来ないんだ」
「そっか……それじゃしかたないね……」
しょんぼりとする彼女を見ていると、折角の厚意を無下にしてしまったようで、やるせない気持ちになる。
「そうだ、プゥルゥにやってもらいたこと……というか、決めてもらいたいことがあるんだけど」
「えっ! なになに??」
急に元気になって食い付いてきた。
「それはね、勇者と戦う中ボスの順番さ」
「中ボス?」
プゥルゥは柔らかい体をムニュっと曲げた。
「ゲームでは大体……ってこれは、前世の話だからプゥルゥには分からないか。じゃあ分かり易く説明すると、魔王を守る為に配置された配下のこと」
「おお」
「今回はこの森の道を幾つかのブロックに分けて、それぞれを中ボスに守ってもらおうと考えてる」
「ふむふむ」
「勇者にしてみれば、中ボスを倒さないと大ボスである魔王に辿り着けないわけだ」
「なるほど、リカイしたよ。ボクたちシテンノウとアイルがマオウさまをマモるんだね」
「違う違う」
「えっ……?」
予想と違う反応だったのか、プゥルゥは虚を突かれたような顔をしていた。
「四天王は四天王でも偽物の方だよ」
「あ……」
どうやら、その存在を思い出したらしい。
そう、俺達の真似を覚え込ませたゴーレムリーダーのことだ。
「彼らをこの道に配置しようと思ってね。その順番をプゥルゥに決めてもらいたいんだ」
「な、なるほど……でも、それでユウシャをたおせそう?」
「別に倒す必要は無いと思ってる」
「?」
「寧ろ、偽魔王と善戦しつつ倒された感を演出して、そのまま喜んでお帰り頂く感じかな?」
「え……」
「まあ、すぐにバレるだろうけど一時凌ぎにはなるんじゃない? その間に俺はどんどん素材やレシピを増やしていって、表の魔王城を強化。俺達は地下のダンジョンでぬくぬく快適に暮らす。それが今の所、考え付く一番の理想かなって思ってる」
ニヤリと笑ってみせた俺に対し、彼女はきょとんとしていた。
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