第16話 ゴーレムを作ろう


 俺は早速、魔物レシピからゴーレムを選び、とりあえず一体作ってみる。



 レシピを選択した直後、目の前の床に光で描かれた魔法陣のようなものが現れる。

 その魔法陣の中央から次第に上に向かって迫り出して来るものがある。



 硬い土の塊のような頭。

 人間の五倍はあろうかという肩幅。

 丸太の如き太い腕と脚。

 三メートルはありそうな身の丈。



 ものの数秒で眼前に現れたのは、まさしくゲームなどでみるゴーレムそのものだった。



「おお……ホントに出来た! すげー」



 ただ、泥と石の巨人は俺の前に佇んだまま一ミリ足りとも動く気配がない。

 まるで銅像のようだ。



 これってやっぱり、命令するまでは、ずっとこのままなんだろうか?

 なら試しに何か命じてみるか。



 うーん、何にしよう。

 まずは簡単な奴がいいな。

 よし、決めた。



「歩け」

「グォォ……」



 返事でもしたかのような低い声が巨体から聞こえてくる。

 ゴーレムはゆっくりと脚を前に出し、一歩ずつ進み始めた。



「おおっ! ちゃんと言うこと聞いてくれた」



 なんでもない事なのに超嬉しい。



 だが、ゴーレムは止まることなく俺に向かって進み続ける。



「おわっ!? ちょっ、ちょっとストップ!」

「グォ……」



 ゴーレムはピタリと足を止めた。



「ふぅ……」



 思わず安堵の溜息を吐く。



 この調子だと本当に単純な命令しか出来なさそうだ。

 何が出来て、何が出来ないのか、本格稼働させる前に色々試しておいた方がいいだろうな。



 そうと決まれば移動だ。



「おい、えーと……」



 名前を付けないと不便だな。

 これから複数のゴーレムで運用することを考えると決めておいた方が便利だ。



 でも、どうしよ……見た目に個体差が無い場合は、一番分かり易いのは番号かなあ。

 そうするか……。



「よし、お前は今からゴーちゃん1号だ。了解?」

「グォ」



 良い返事。大丈夫そうだ。



「じゃあ1号、ダンジョンに移動するよ」

「グォォ」



 それでゴーちゃん1号は、ダンジョンと言う名の大浴場に移動を開始する。



 ふむ、俺があそこをダンジョンと認識していれば、ゴーレムもそのように動いてくれるらしい。

 その点に関しては一々説明しなくていいから便利だ。



 そんな訳でやってきました大浴場(男湯)。



 俺はゴーレムを風呂場の最奥にある壁の前へ立たせた。

 そこをダンジョンへの入り口にする為だ。



 あとで魔法の扉が作れるようになったら、そこへ設置する予定。

 そうなれば不可視インビジブル効果がある扉なので、侵入者にはただの風呂場にしか見えないはず。



 その為にも、そこから横穴を作っていかなければならない。



「よーし1号、目の前の壁を掘ってくれるかい?」

「グォ」



 ドゴォォォン



「っわ!?」



 1号の大きな拳が壁を殴りつけると、石や壁の破片が爆発したように飛び散る。



 すげーびっくりした。かなりの剛腕だ。

 今の一撃で畳一畳分くらいのスペースは削れたぞ。



 それに飛び散った破片が霧のように消えて無くなったので、自分のアイテムボックスを確認してみると今破壊した分と思しき素材が増えていた。



 これは大分、捗りそうだ。



 それにしてもあの剛腕。戦闘にも充分耐えうる能力じゃないだろうか?

 ゴーレムを大量に生産してダンジョンの入り口に配置すれば、防衛力の増強になる。



 まあ、それは後々考えるとして、今はこの調子でダンジョンを掘り進めよう。

 という訳で作業人員を増やす。



 俺は一気に九体のゴーレムを作り上げた。

 合計十体のゴーレムが俺の前に並ぶ。



「よーし、お前達、早速掘っちゃってー」



「「「「「「「「「「グォォ」」」」」」」」」」



 十体のゴーレムが一斉に雄叫びを上げる。

 自分で命令しておいてなんだけど、その時、嫌な予感がした。



 全員が全員、同じ方向の壁に向かって拳を振り上げたのだ。



 ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォン



 地震でも起きたかのように魔王城が震える。

 見れば、とんでもない大穴がそこに出来上がっていた。



「ちょ、ちょっと待った!」



 ゴーレム達はそのまま二発目の腕を振り上げたので、俺は慌てて止める。

 命令が一つでは全員が同時に行動を起こしてしまうのだ。



 これは一体、一体、個別に命令してやらないと駄目だな。



「えーと、じゃあ1号から5号は前方から斜め下に向かって掘り進めて行って。6号から8号は横に向かってフロアを作って行ってくれない? 第一階層目を作るから。んで、9号と10号は掘った穴の壁面に城壁ブロックと壁掛け燭台を設置して行ってくれるかな」



「「「「「グォ」」」」」

「「「グォォ」」」

「「ググォ」」



 それぞれのチームが個別に返事をして作業に取り掛かった。



 アイテムボックス内にどんどん素材が増えて行く。

 逆に大量に城壁ブロックと燭台を合成してボックス内に入れておくと、それが徐々に使われて行くのも確認出来た。



 どうやら上手く行ったようだ。



 しかし、このままだと作業を変更する度に個別に指示を出さないといけない。

 今は十体程度だからいいけど、数が増えてくると面倒だ。

 それに、こいつらは俺は止めろと言うまで永遠に同じ作業を繰り返す。



 やっぱり、ゴーレム達をまとめ上げ、それなりに統制を取ってくれるであろうゴーレムリーダーを早急に作りたいな。

 俺の負担が減りそうだし。



 その為には魔紅石という素材を探さないといけない。

 さて、それはどこで手に入るんだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る