第6話 星の正体
「あ……アイル、その頭上の★は一体……?」
「えっ? 星??」
言われて彼女は自分の頭の上を確認するが、その星は俺にしか見えていないようで、
「何のことでしょう? 何もありませんが……」
と不思議そうにしていた。
それに、しばらくするとその星は霧のようにフッと消えてしまった。
なんだったんだ? 今のは……。
しかし、俺がこれまでに体験してきた中で★に心当たりがあるとすればアレしかない。
俺は、すかさずステータス画面を開いた。
[ステータス]
名前:魔王
レベル:2 ★:20
HP:3605 MP:2913
攻撃力:634 防御力:559
素早さ:448 魔力:592
運:657
特殊スキル:
おおっ、★の数値が増えてる!
しかも一気に20も。
それにレベルが2に上がってる。
全体的な数値もそれに合わせて上昇しているのが見て取れた。
これは、もしかしてアレかな?
★は経験値みたいなもので、ある一定量貯まるとレベルアップする……みたいな。
問題はその★の獲得条件だけど……アイルの頭から出たってことは彼女に関係していることで間違い無い。
あの★が出た直前の出来事と言えば……トゲ罠を作ったら彼女が喜んでくれたことくらい。
ってことは……感情に関係してるってことか?
喜びとか、感謝とか、満足とか、嬉しい気持ちとか、厳密には分からないが、そういったものが条件になっている可能性が高い。
でもなんでアイル?
配下だからか?
もしそうなら、全ての配下から大量に★をゲット出来る可能性があるぞ。
それは夢が広がるなー。
おっと、そうだ。
レベルが上がったのならレシピに変化が起きてるかもしれない。
そう思ってレシピ画面を開いてみると――。
[合成レシピ]
石×5 = 石壁×20 NEW!
鉄鉱石×1 + 油×1 = 壁掛け燭台×5 NEW!
大理石×5 = バスタブ×1 NEW!
新しいの来てたーっ!
石壁はダンジョンを掘り進めて行く上で壁を補強するのに役に立つだろう。
壁掛け燭台も同様にダンジョンには必須のアイテムだ。
それで……なんでそこでバスタブ!?
それだけ異質なんですけど……。
確かに、配下の者達の為に風呂を作ってやったら喜んでくれるかもしれないが……それ以前に水回りとか色々やらなきゃいけないだろうから、それに関しては今すぐにどうこうするものでもなさそうだ。
ともかくレシピを増やす方法が見えてきたのはいいが、このままのラインナップじゃ、とても勇者を迎え撃てないぞ……。
もっとレベルを上げて、作れるものを増やさないと。
その為には★を出してもらわないと。
「アイル、俺に何かして欲しい事ってある?」
「な……なぜ急にそのようなことを……??」
ちょっと唐突すぎたみたいで、彼女は少し動揺しているようだった。
顔も僅かに火照っている。
「アイルの喜ぶ顔を見ると、俺が強くなるみたいなんだ。だから、もっと君を満足させてあげたいと思ってる。協力してくれるかい?」
「え……そ、それって……もしかして……」
彼女の顔が沸騰したようにみるみる赤くなってゆくのが分かる。
「だっ……だめですよ! わ、私達は……そ、その……主人と配下の関係ですから……そんな感情を持つことは許されないのです! で、でも……魔王様がそれを望むのなら……私に断る権利はありません……。ですので……」
彼女は俺に向き直ると目を瞑り、唇を尖らせて何かを待っている様子。
これ絶対、何か勘違いしてるだろ……。
俺の言い方がまずかったのもあるが。
「そうじゃなくってさ、さっきトゲ罠を作ってあげたら喜んでたみたいに、アイルにとって心がときめくようなことって何かな? と思って。それを聞きたかったんだ」
「心がときめくこと……ですか? 今もときめいてましたが?」
「いや、それはおいといて!」
すると彼女は顎に手を当て考える。
「うーんと、そうですねえ。魔王様が世界を征服した時のことを考えると、非常にときめきますねえ。それと勇者共が苦しむ姿を想像するのも大変ときめきます! クククク……」
「……」
どうやら彼女は勇者に対するサディスティックな部分さえ刺激してやれば、それだけで良さそうだ。
この城やダンジョンを彼女好みのエグい罠で埋め尽くせばいいってこと。
そうすれば城の防御力も、俺のレベルも同時に上がって丁度良い。
ただ、そのエグい罠の元手となるレシピが無いので、その為には別の方法を取らなければならない。
「ねえアイル、頼みたい事があるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「配下の者達を玉座の間に集めてくれないかな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます