第4話 本屋にて


(ゲイとは何かわからない人向け...ゲイとは男性を恋愛対象として見る男性のこと。(同じような言葉にホモがありますが、これは差別用語です)また女性を恋愛対象として見る女性のことはレズビアンといい、同性も異性もどちらも恋愛対象として見る人のことをバイセクシャルと言う。)


「ゆーう ! おーい !」


放課後、約束の図書館まで歩いていると爽斗が手をひらひらと振ってスキップしながら近づいてきた。現地集合と言いつつも一緒じゃねーか。通学リュックがゆらゆら揺れて、満面の笑みまで浮かべちゃってるぞこいつ。


「いやー、楽しみだよ。今日はあの先生の新刊と雑誌とあと小説も新作出来てるんだよねぇ。BLは俺の生きがい」

「そうか」


BLは冊数が多い。どこの本屋でも。俺は前ブック●フで2時間百合を求めてさまよった挙句2冊しか見つけられず涙を飲んだ経験があるので羨ましい限りですね...。BLコーナーの他にGLコーナー作っていただけませんかね...。コーナー作るほどメジャーじゃないか。


「俺は恋愛対象が男だからさ、NLは違和感があるし。」


NLとはノーマルラブ、ノンケラブとも言うつまり異性間の恋愛の話のこと。普通の少女漫画などはこれにあたる。

NLに違和感があるのは、まあそういうことだ。


「悠は?」

「俺の追ってるシリーズ何冊か出てる気がするからな、それ見るわ。」

「おー。健闘を祈る。」


てくてく道を歩く。到着地に着いた。透明なガラス戸をそっと開いて中に入ると5月下旬にしては効いている空調のせいで少し寒気がする。真っ先に奥に進んでいった爽斗を横目に俺も目的地へと向かう。あったあった。


「おっ、初めて見るなこの人。絵柄好みだし買うか...あっこっちは設定が惹かれるな...この作家さん絵柄変えたか。ぜったい絡み濃いめじゃんストーリー...はぁぁ」


やべぇ。我に返ったら独り言呟いてるただのやべぇやつじゃないか。背中に一瞬視線を感じたような気がするが振り返ると誰もいなかった。気のせいだと信じたい。まぁ人は好きな物を見ると浮き足立つって言うしいいか。気をつけなければいけないのは周りの人間に引かれるそうにならないか、ということだけである。それは爽斗もおn


「なぁなぁ悠悠!これめっちゃそそられる!は?ああもう絡みが想像できるぞ尊師あわわ...○×□pjtd」


あ...こいつオープン腐男子だ忘れてた。すぐ俺は他人とくに同じ学校のやつとかに見られてないかとか自意識過剰になるので素直に感情を出せるのは少し羨ましい。


同性愛の物語を読むことが後ろめたいとは思わないがこんな所で人の目を気にしてしまうのは、一般的な恋愛とは違うことを頭のどこかで認識してしまうからだろうか。


「好きなものがちゃんと好きって言えるっていいよな。」

「俺の好きな物は好きな物だから。隠さないで生きていきたいと思ってる。ゲイってことまでは差別とかまだあるし簡単には言えないけど。」


「前から気になってたんだけど、何故俺にカミングアウトしてくれたんだ?」


俺と爽斗の出会いは去年高一の頃本屋でばったり会いお互いの持っている本を本を見つめあって「えっあなたって...腐男子(百合男子)......??」みたいな感じである。何故かそれから直ぐに爽斗はカミングアウトしてくれた。


「何となく、百合読んでるから言っても引かれないかなって。現になんともないし」

「だって爽斗は爽斗だし」

「せんきゅ。悠ほんと良い奴だよな。俺悠と付き合いてーよ」

「お前が言うと冗談に聞こえないぞ、友達としてはお前良い奴だと思うが。」


たまに言われるので少し困る。いつかこいつに彼氏ができるといいな。


「それじゃレジ行ってくる。」

「俺もそろそろ並ぶか。」


俺と爽斗はカゴの中に積み上げた本を持ってさっさとレジに向かった。金が飛びそうだ。



「この本綾乃知ってるー!インスタに載ってたよっ」

「そうなん?私見たことない。良い?」

「ここら辺の美味しいカフェいっぱい載ってるし見て損はないと思う!ほらこれとか!」

「おーいいね...」

「なぎさ今度一緒にここ行こ?」

「行こ行こ」


精算が終わると、女子達の声が聞こえた。名前から察するにうちのクラスの奴であろう。

内容から察するにインスタ映えしそうなカフェの紹介本ですね...流行りに乗りたそうないかにも女子っぽい2人の会話だ。 2人...あ。ふたり??


俺はそこで違和感に気づく。

あれ、いつもこのグループって2人じゃない。いつも3人だった気がするんだが。たしかあいつは...。


「お、美味しそ、うだねそ、のパフェ」


途切れ途切れに紡がれた言葉が聞こえる。

どう考えたってここでそのリアクションは遅いんじゃ...。あと相手に絶対聞こえてないだろ。後ろを振り返るとそこには2人と一定の距離を置き若干影になりつつある俺の幼馴染、上山花恋がいた。

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