第4話 ヨハネス様の為なので
この私がこの雌猫どもと競争ですの?
ふっ、良いですわ実力の差と言うものを教えて差し上げますわ!!
私はヨハネス様の為ならば何でもできますの。
私はそう思い翌日からすぐに行動に出ますの。
* * * * *
まずは朝早くから起き宿舎の掃除とヨハネス様のお食事の準備を‥‥‥
「あら、新参者が何の用かしら?」
見るとあのユミルとか言う司祭の姿をした女が既に宿舎の掃除をしていますの。
私だって結構早くから起きているというのにこの女、いつからですの?
「ふ、おはようございますですわ、ずいぶんとお早いですわね?」
「何を言うのですか? こんな時間までゆっくりと寝ていたくせに、既に朝の六時を回っています。私たちの起床は五時ですのよ」
なっ!?
そんなに早くから起きているのですの?
私は歯ぎしりしながらその事実と向かい合いますの。
おのれ、このような所でまさか出遅れるとは思いもよりませんでしたわ!
「そ、そうですの? それはご苦労様ですわ。私はヨハネス様のお食事の準備でも致しましょうかしら?」
そう言って私は急いで厨房へと向かうのですの。
* * *
厨房ではすでに朝のお料理が出来上がっていますの。
私はポカーンとそれを眺め、その料理を作った赤毛のメイド服の女を見ますの。
「あら、あなたですか。確かジェ、ジェシカさん?」
「ジェリーンですわ!」
全くこの女は物覚えが悪いようですわ。
私はテーブルの上の料理を見ますの。
そこには悔しながら完璧な朝食がそろえられていますわ。
「お、お料理上手のようですわね、フェルさんは」
「ええ、ヨハネス神父様のお食事は私が作ります、どうぞジェットさんはヨハネス神父様の事は私にお任せください」
「ジェリーンですわっ!」
全く、この女ときたらですわ。
でもまあ、いいですわ、下女に料理は作らせて私はもっと他の事をいたしましょうですわ。
ふんっ、こ、これは負けたのではありませんわ!
私だってその気になればお料理の一つや二つ出来ましてよ!
私はそう思って厨房を後にしますの。
そしてそこでふと思いつき、私はヨハネス神父様の部屋に向かいますの。
そう、すでに起きられているはずですわ。
もしまだお休みならば‥‥‥
ぐふっ、ぐふふふふふっ!
私が優しく優しく起こしてあげますわよ、この豊満な胸を使ってですわ!
私はウキウキしながらヨハネス神父様のお部屋に行きますの。
* * *
「ヨハネス神父様、おはようございますですわ、ジェリーンですわ」
私はヨハネス神父様のお部屋の扉をノックしますの。
しかしお返事が無いですわね?
こ、これはもしやして未だにお休みなのではないかしら!?
私は扉の取っ手に手をかけると鍵がかかっていないようで簡単に開いてしまいますの。
思わずごくりと唾を飲みそぉ~っとお部屋に入りますの。
見るとまだカーテンが閉められていたままでベッドにも布団にくるまったままヨハネス様がいらっしゃるよですわ。
私は思わず小躍りしたい気持ちを抑え、ゆっくりとベッドに近づきますの。
このままヨハネス様を優しく起こして‥‥‥
い、いえ、これはチャンスですわ!
このまま既成事実を作り上げ、そのまま子宝を得ればあの雌猫どもに一泡吹かせられましてよ!!
私から殿方にするなんてはしたないですが、ここは勝負ですわ!
初めてですけど知識だけは沢山学んでおりますの。
するすると服を脱ぎ私はそおっとヨハネス神父様のベッドにもぐりこみますの。
ああ、お父様、お母様。
ジェリーンは大人の階段を上りますわ。
そして可愛い孫をお見せいたしますわぁ!!
私は鼻息荒くお布団の中のヨハネス様にふれますの。
すると‥‥‥
ぷにょん
い、意外とヨハネス様ってやわらかいのですわね?
し、しかし殿方だってすべてが筋肉質で堅い訳では無いですわ!
あそこは固い方が良いというらしいけど‥‥‥////
私はそのままヨハネス様を触り始めますの。
しかし、一向に殿方の筋肉質な感触が見当たらないですわね?
ぽよん
なっ!?
何なのですのこの感触!
私自身も何度も感じたこの感触は!!
私は起き上がりながらヨハネス様のお布団を取り除きますの。
するとそこには全裸のフィジーとか言う女が寝ていますの!?
「こ、これは一体どういう事ですの!?」
「ああん、ヨハネス様、やっと私を求めてくださるのねぇ」
私が触っているのは私にも負けない大きな胸!
私にその胸を揉まれながらあろうことかヨハネス神父様のベッドで何をしているのですの!?
「フィジーさん、フィジーさん! こんな所で何をしているのですわっ!」
「あらぁ? ヨハネス神父様でない?? もう、残念だわぁ、せっかくずっとお待ちしていたのにぃ」
そう言ってこの女は起き上がりあくびをしますの。
「あら、あなたは確かジェリーンさん? ヨハネス神父様のお部屋に何の御用ですのぉ?」
「あ、あなたこそその破廉恥な格好は何なのですの!? ヨ、ヨハネス神父様は!?」
フィジーと言う女は色っぽく髪の毛をばさりと頭ごと動かして右肩にまとめますの。
「昨日の夜からお待ちしているのにお戻りになられないのですものぉ。せっかく私がこの体で癒して差し上げようと思ったのにぃ」
そうなると昨晩はヨハネス神父様はこの部屋にお戻りになられていないのですの?
だとすればこの女とは何もなかったのですわね!?
私は安堵の息を吐きながらベッドから降り、さっさと服を着て部屋を出ようとしますの。
「ジェリーンさん、あなたまさか私のヨハネス神父様を朝から襲おうとしていたのぉ?」
「それはフィジーさんも同じお考えなのですわね?」
私とフィジーと言う女はにらみ合い目線の火花を散らしますの。
「ふんっ!」
「ふんですわっ!」
ひとしきりにらみ合ってから私はこの女を置いて部屋を出ますの。
しかし、そうするとヨハネス神父様は何処にですわ?
と、私の頭にひらめきが。
きっとヨハネス神父様の事ですわ、ジュリ様に朝のお祈りをしているに違いないですわ!
そうだ、ジュリ様にお花をお持ちすればヨハネス様もきっと私の真摯な行動をほめてくださいますわ。
私は急いでお供え用の花を探しに外へ出ますの。
* * *
「ありゃ? 新参者の人だ」
庭先に出ますと青い髪の一番若そうな子が花壇の手入れをしていますの。
「あら、おはようございますですわ、えーと、メルさんでしたわね?」
「おはよう、そう、メルだよ。あなたは確かジェリーン??」
「ええ、そうですわ。それより花壇のお花を分けてもらえますかしら、ジュリ様にお供えいたしたいのですわ」
するとこの青髪のメルという女はきょとんとした顔で私を見ますの。
「お供えのお花ならもうあたしがジュリ様にお供えしたよ? ヨハネス様からご苦労様って褒められちゃった」
なっ!?
既にお花のお供えは終わっていると同時にヨハネス様は教会においでですの!?
私は慌てて教会に向かいますの。
* * *
「女神ジュリよ、どうか今日も一日穏やかな日でありますように。」
教会に行きますとヨハネス様が朝のお祈りをしていますの。
そのお姿は神々しく、静かに、そして差し込む光がヨハネス様を更に凛々しく演出していますの。
ああ、ヨハネス様、何度見てもいい男。
私それだけでもう、もうっ!!
私がヨハネス様に見とれているとそのすぐ近くに黒髪の女が一緒になってお祈りを捧げていますの?
私は慌ててそばに行きますの。
見れば黒髪の清楚華憐を絵にしたような巨乳の女、確かテルモだったですわね?
「おはようございます、ヨハネス神父様」
「ああ、おはようございます、ジェリーンさん。昨日は休めましたか?」
ヨハネス神父様に朝のご挨拶をしながら私もジュリ様に朝のお祈りをいたしますの。
ヨハネス神父様はにこやかにその様子を見てくれますの。
お祈りが終わってから私はヨハネス神父様に向き直りますの。
ああ、近くで見れば更にいい男。
「おはようおございます、ジェリーンさん」
黒髪のテルモはつまらなさそうに私に挨拶してきますの。
しかしここは大人な私をヨハネス様に見せる所、私は作り笑顔をしながらこの女にも挨拶してあげますのよ。
「おはようございますですわ、テルモさんでしたね?」
彼女は一瞬むっとした表情になったものの、すぐさま同じく作り笑いをして私に答えますの。
「ええ、名前を憶えてくれてありがとうございます。時にジェリーンさんはどんな御用ですか?」
「あら、私も今後ヨハネス様と共にジュリ様をあがめますので朝のお祈りに参りましたのよ、おほほほほほほっ」
表面上は和やかに、しかし視線は火花を散らしながら私とテルモは睨み合いますの。
そんな空気を変えたのはヨハネス神父様の一言でしたわ。
「ははっ、朝からお元気そうで何よりだ。皆さんのその元気な姿を見ますと私も元気がみなぎってきますよ。さあ、朝食をいただきましょう」
そう言ってヨハネス神父様は私の肩に手をまわしてくれますの!
きゃぁー!!
朝からうれしいボディータッチ!
ああ、そのまま抱かれたいですわぁ。
私がうっとりとヨハネス様を見ているとテルモも同じようにうっとりをヨハネス様のお顔を見ていますの。
どういう事でしょう?
よくよく見るとテルモの肩にもヨハネス様の手がっ!?
そんな、ヨハネス様。
そのような女などほっておいて私だけをその手に抱きしめてもらいたいのに。
しかしお優しいヨハネス様はこの雌猫にも愛の手を差し伸べてそのまま食堂にまで私たちを連れていきますの。
* * *
食堂には既に他の女共も来ていて朝食の準備を整えていますの。
ヨハネス様がテーブルに着き、私たちもテーブルに着きますの。
「さあ、皆さんジュリ様に今日の糧をいただくことを感謝して朝食をいただきましょう」
そう言ってジュリ様に感謝のお祈りを捧げてから食事を始めますの。
「!」
な、何という事ですの!?
この食事、下手をすると私の実家の料理人より上ですの!?
これだけ素朴な素材なのに何が違うのでしょうかしら?
いえ、それだけではありませんわ。
よくよく見れば宿舎の掃除は完璧、塵一つ無いですわ。
それに食卓に飾られているこの花は見事な生け花。
食事用に並べられたお皿やナプキンもとても教会とは思えないレベル。
そして食事をしながら黒髪のテルモはヨハネス様に何やら今日のご予定を告げている??
ここに居る女共はもしかしてその道のスペシャリストばかりですの!?
「そう言えばジェリーンさん、ジェリーンさんは魔術が得意でしたね?」
「あ、は、はい。そうですわ。私の実家は魔術の名門、ベスボン家ですもの。」
「ベスボン!? ベスボン家の女だったのですね!」
茶色い髪のフィジーはそう言って私を見ますの。
そう言えばこの女だけどことなく気品があるというか‥‥‥
「まさかこんな所でベスボン家の者に会うとはですわぁ、私は元インスタンド家の者よ」
インスタンド家ですって!?
インスタンド家と言えば私のベスボン家と双を成す魔術の名門の家柄!
もともと王族との婚姻で争っていた家柄でもありますわ。
まさかこんな所で出会うとはですわ!
しかも私のヨハネス様に昨日の晩から夜這いをかけるとは。
「ふふふっ、初めて会った時には気にしていなかったけどまさかベスボン家の者とはねぇ」
「私こそ驚きましたわ、インスタンド家は皇族とのご縁を諦めていたとは」
バチバチと私とフィジーの目線が火花を散らしますの。
「まあまあ、お二人とも落ち着てください。過去に何が有ったかはここでは御法度ですよ。でないと私はお二人の事が嫌いになってしまいます」
「あっ」
「うっ」
思わず私とフィジーはうめいてしまいましたわ。
ヨハネス神父様に嫌われるなんてありえませんわ!
「それでですね、皆さんそれぞれ特技をお持ちで非常に優秀だ。ユミル司祭様には既に連絡が来ていますよね? ジュリ教は皆さんのような有能な方を必要としております。そこでこの教会からも『スペシャル』を選出して欲しいとの事なんですよ」
ヨハネス神父様はそう言ってにこやかにお話をしますのよ。
でも、その「スペシャル」っていったい何なのでしょう?
私も初めて聞きますわね。
「ヨハネス神父様、その『スペシャル』とは何ですの?」
私は気になってヨハネス神父様に尋ねますの。
するとヨハネス神父様はニコリとほほ笑んでお話を始めますわ。
「ジェリーンさん、私はジュリ様の教えを皆さんに浸透させ、その教えのすばらしさを広めたいと思っています。ジュリ教では『特別:スペシャル』と呼ばれる有能な人材を中心に様々な活動を活発化させているのです。そしてその『スペシャル』に選ばれる事はジュリ教信者にとって至高であり、女神ジュリ様に一歩近づける存在となれるのです」
ヨハネス神父様は恍惚とした表情でお話をいたしますわ。
ジュリ教を浸透させそして広める。
それはヨハネス神父様のお望み、そして私の望みでもありますわ。
しかしそんなヨハネス神父様のお話の腰を折るようにユミル司祭が話し出しますの。
「ヨハネス神父、その、『スペシャル』の事、考え直してもらえるように私からもう一度本殿にお願いしてみましょうかしら?」
「何を言うのですユミル司祭様! 『スペシャル』をこの神殿より選出できるとは願っても無い事では無いですか?」
「しかし、『スペシャル』には確実にヨハネス神父が選ばれるでしょう? そうすればヨハネス神父はこの教会からいなくなってしまいますわ。そんなの、私耐えられない!」
なっ!?
それは一体どういう事ですの!!!?
「ユミル司祭様、私が『スペシャル』に選ばれるという確証はありませんよ。すべてはジュリ様のお心次第。しかしジュリ様への信仰を深め選ばれるとなればそれはそれれで素晴らしい事では無いですか? もし私が『スペシャル』に選ばれ、皆さんも選ばれればずっと一緒に居られますよ?」
『ずっと一緒に居られますよ‥‥‥ ますよ‥‥‥ ますよ‥‥‥』
ああっ!
なんて素敵な響きなのでしょうかしら!!
「スペシャル」
そうですわ、私にぴったりの響き。
そしてヨハネス神父様と一緒にスペシャルになってずっと一緒に‥‥‥
い、いいですわぁ!
明るい未来が見えてきましたわぁ!!
「ヨハネス神父様、その『スペシャル』になるにはどうしたらよろしいのですの!?」
私はいてもたってもいられなくなり、ヨハネス神父様に教えを乞うのですわ。
するとヨハネス神父様はにっこりと笑顔で説明くださるの。
「ジェリーンさん、『スペシャル』になるには半年後の選定の義で自分の得意分野のお披露目をするのです。そこで教団にとって、そしてジュリ様の信仰の強さによって選定されるのです。それはお料理でもお花でもそして魔術でも何でもあれです。ジュリ様を信仰なされてその徳を精進させればきっと『スペシャル』に成れますよ」
魔術でもいいと言う事ですのね!?
だとしたら私もその『スペシャル』となってヨハネス神父様と一緒に‥‥‥
がたっ!
がたがたっ!
私が新たな未来設計を妄想しているといきなり他の女共が椅子から立ち上がりますの
「ヨハネス神父と一緒に居られるなら、不肖この私ユミルも『スペシャル』を目指しますわ!」
「ヨハネス神父様についてどこまでもお料理を召し上がっていただくには私も『スペシャル』に!」
「ふふっ、私の魔術だって捨てたものでは無いわぁ、そう、魔術でも良いのですわねぇだったら‥‥‥」
「なんだか分からないけど『スペシャル』ってのになればヨハネス神父様の子供作れるの?れるの??」
「ふふっ、ヨハネス神父様のお世話は私の役目です。その『スペシャル』とやらにもきっとなって見せますわ! ヨハネス様とご一緒する為に!!」
何を思い違いしてるか知りませんけど、「スペシャル」になってヨハネス神父様と一緒になるのはこの私、ジェリーンですわ!
私たち六人はお互いに目線の火花を散らせながら「スペシャル」になる為に行動を開始するのですわ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます