5【クリスマス】

 




「ちょっと、聞いてんの? クリスマスなんか嫌いだって言ってんの。


 なんでって、恋人いないからよ。


 だって、クリスマス=デート&プレゼントって決まってんじゃん。


 そんなことあるの。だから、クリスマスのいい思い出なんてなーい。


 嘘じゃないって。毎年、ショートケーキ買って、一人で食べてんだもん。


 ホントって。ふところがリッチな時は、KF℃のチキン買うぐらい。


 冗談じゃないって。だって、しょうがないじゃん、恋人いないんだから。


 え? 友だちはいるだろって? みんな、デートに決まってんじゃん。私ぐらいだよ、恋人いないの。おーい、鈴木。私と付き合う?


 え? 何? 彼女が来たから切るって? ったく。チンチクリンのお前に恋人がいんのに、なんで、才色兼備の私に恋人いないのよ。


 えっ? 才色兼備の彼女が来たから、切るって? 嫌味な奴だな。つまり、こういうことか? 僕の彼女も才色兼備だが、僕という恋人がいるよと。


 えー? クドいから切るって? 何、恋人が来たから切るんじゃないの?


 何? 嘘も方便だ? タコ。じゃ、お前も恋人いないんじゃん。


 何ー? 電車に乗るから切るって? ったく、それも嘘だろ?


 えー? 優先席の近くだから切るって? だから、それも嘘だろっ――」


 ツーツー……


「チッ! ホントに切ってやんの。あったま来た。……しゃぁない、電車降りた頃、また電話すっか。……ああ、寒みぃ。酔いざめか? ヒック!」





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