0-15.準備
《プロセスは正常に終了。個体名”ナビィ”は光型ボディ得た。》
光型ボディってこういう……。
《何か?》
――いえ、別に……。えっと、ナビィさん、でいいんですよね?
《肯定。》
――ナビィがそこに居るって事は、もうボクの頭の中には居無いんです?
《否定。このボディはあくまで外部インターフェイスにすぎ無い。私と言うシステムは常に貴方と共に有る。》
――お、おう。
な、なんだかむず痒い台詞だ。童貞のこの身にはどきりとする。システムに何ときめいてんだコノヤロウ。
照れ臭さを隠すように、残りのスキルもレベル2に上げる為にタップしていく。
▽[メニュー] Lv2…図鑑機能が実装。その他機能の精度が上昇。
▽[自動回復] Lv2…HPとMPが毎分5%ずつ回復する。
▽[角射出] Lv2…角を発射する。ダメージを物理攻撃力(STR)+15%。
これで残りSPは80ポイントだ。最低でも後20ポイント無いとレベルアップ出来無いのでここまでだな。
特筆すべきは”図鑑”機能だ。少し触ってみたが、モンスター図鑑や、アイテム図鑑、既出のチュートリアル等の如何にもゲームらしい機能だった。情報を追加していく方式らしいので、自分が見聞きした事しか記入され無いが、読み返す時には便利だろう。モンスター図鑑には一角兎や例の狼魔獣が乗っていて、基本的には見知った情報しか無いが、狼魔獣の正式な名前が記載されていた。これは嬉しい誤算だ。茶狼は”
スキルのレベル上げは終わったが、何と無くそのままスキル欄を眺めていると、ふと”射出”スキルが目につく。手に入れて間も無いのに初期熟練値が4%になっていた。未だ一時間も経ってい無いのに4%は異常だ。4%?
――そう言えば、”角射出”を四回撃ったな……。
つまり一回撃てば1%加算されるって事か?初期熟練値の過程経験値では微々たる物だって聞いたが、例外が有るのだろうか。いまいちよくわから無いが、これは使える。今は使えるスキルが多いに越した事は無いので歓迎だ。
――えっと、リロードに60秒かかるって事は、単純計算で100分でアンロック出来るのかね。
一発撃つ度にMPを4%使って、自動回復で毎分5%回復するなら、単純に1時間40分撃ち続ければ良い計算だ。……よな?前世では計算があまり得意ではなかったのでいまいち自信が持て無いけれど、やれば早い。駄目で元々だ。やってみよう。
結果として、大成功だった。50%を超えた辺りから上がりが鈍くなって、何だかんだ三時間位かかったけど、大成功だ。
アンロックした”射出”は、射出速度をLV1で+5%、ダメージを+5%するという物だ。ダメージは実感無いが、射出速度は良い。レベルを上げればもっと連射速度が上がるだろう。5%早くなるって事は、57秒くらいになるのかな?微々たる物だが、無いよりはマシだろう。
そうこうしている内に時刻は18時を周ってしまい、本格的に陽も暮れ始めている。視界調整が使えるようになるまでは、夜の森なんて暗すぎて活動出来た物じゃ無い。別に眠くも無いのだが、今日の活動は終わりにした方がいいだろう。
ベースの大木の下で身体を伏せた状態で五時間位ぼうっとしていたが、月明かりは有っても暗すぎる。暗闇に漂うナビィを眺めつつ、諦めて眠りについた。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
ボクは今、レベルアップの為に森の中を散策していた。
スキルのレベルアップをした日から、現在は50時間程経っている。日中はずっと森で狩りをしていたが、件の狼魔獣には出会してい無い。
昨日の昼頃には大抵のスキルがアンロックしたので、午後は新スキルの確認や検証を行いつつ森を散策していたお陰か、今までで一番多く獲物を狩る事が出来た。昨日の日中だけで、一角兎が五体、”
これはレベルアップ来たか?と思ったけれど、全部食べてもレベルアップはしなかった。もう少しなのか、まだまだなのか……。二回目のレベルアップでそんなに大きく違うなんて事も無いだろうから、今日中にはレベルアップする心づもりだ。
そう言えば、と昨日の最後の獲物を狩る頃には、あれだけキツかった殺しや食事に対する罪悪感や忌避感は随分と薄れていたのを思い出す。所詮人間、慣れる生き物何だなぁと実感したものだ。
今日も今日とて、11時現在に至るまでに一角兎が一体、太鼠が三体、禍々しい形相のカラスっぽい魔獣で”
そろそろお昼時なので、一旦ベースへ戻って”食事”とスキルのレベルアップをしたいと思う。別に、お昼だからと家に帰る必要も無い身なのだが、人間の頃の習慣か、落ち着かなくなるので休憩がてら戻っているのだ。
一時間程かけてベースに戻ってきたボクは、早速”食事”に取り掛かる。ベースに戻るまでの時間も、マッピングのお陰で散策に向かう度早くなっている気がする。
最早定位置になっている大樹の根本に座り込んで、汚物処理をした獲物を取り出す。食べ慣れた一角兎を頭から齧り付き、モノノ五分ほどで食べ終えた。慣れだよ、慣れ。
とその時、ぽぉうんと甲高い効果音が響いた。
《レベルアップ。あなたはレベル3になった。》
や、やった!やっぱり昨日は経験値が少し足りなかっただけのようだ。その後もシステムメッセージがばばばっと流れる事を期待してわくわくしていたが、これ以上は何も無いようだ。いや、良いんだけどね?でも、ちょっと寂しい気がし無いでも無い。ちょっとね?
気を取り直して、ステータスとスキルのチェックをしよう。レベルが上がったって事はSPも大幅に手に入っているという事だし、ついでにスキルレベルも上げてしまおう。
レベル:3
HP:1200(+100) MP:700(+100)
スタミナ:600(+50) SP:206(+26/+100)
満腹度:-- 状態:異常なし
物理攻撃力(STR):300(+100) 魔法攻撃力(MAT):300(+100)
物理防御力(VIT):150(+50) 魔法防御力(MDE):150(+50)
素早さ(AGI):150(+50) 命中力(DEX):150(+50)
賢さ(INT):300(+100) 精神力(MND):150(+50)
運(LUK):300(+100) クリティカル(CRI):150(+50)
属性:赤/青/黄/土/緑/白/黒/紫
耐性:物理耐性 Lv1/精神汚染耐性 Lv1/苦痛耐性 Lv1/ストレス耐性 Lv1/--
称号:白竜/異世界に生まれ落ちた者/喰らう者/瀕する者/悟る者/--
うんうん、やっぱり上げ幅は50~100固定のようだ。
スキルポイントも200越えているし、アンロックしたスキルを満遍なくLV2に出来るな。早速やるべ、とぽんぽんとタップしていく。うむ、レベルが上がるのは気持ちがいいぞい。
SP:206→76
▼パーソナル スキル
-----コア-----
[赤の加護] [緑の加護] [青の加護] [白の加護]
[黄の加護] [黒の加護] [土の加護] [紫の加護]
[喰魔] [
-----ノーマル-----
[NIS] Lv2/熟練値:5%
[メニュー] Lv2/熟練値:7%
[自動回復] Lv2/熟練値:15%
[
[マーカー] Lv2/熟練値:0% …MPを消費してマーカーを設置する。自らの半径15メートル以内に入ると、壁越しでも白い輪郭が目視出来る様になる。マーカー設置数最大50。位置情報の確認可能範囲は同マップ内に限られる。
[鑑定] Lv2/熟練値:0% …MPを消費して更に精度(中)の情報を得る事が出来る。
[視界調節] Lv2/熟練値:0% …視界の機能拡張。LV1で光量を、LV2で広角を調節出来る。
[回避] Lv2/熟練値:0% …回避時”素早さ(AGI)”+10%。
[射出] Lv2/熟練値:0% …任意の弾を腕の射出口から射出可能になる。射出速度を+10%、ダメージを+10%。
new[跳躍] ロック中/初期熟練値:20% …ジャンプ力+45%。
new[気配察知] ロック中/初期熟練値:25% …対象の気配を無意識下に察知出来るようになる。気配察知の精度+45%。
-----レジスト-----
[精神汚染耐性] Lv2/熟練値:0% …精神汚染を20%軽減する。
[物理耐性] Lv2/熟練値:0% …物理ダメージを20%軽減する。
[苦痛耐性] Lv2/熟練値:0% …苦痛を20%軽減する。
[ストレス耐性] Lv2/熟練値:0% …ストレスを20%軽減する。
▼オブジェクティブ スキル
[角射出] Lv2/熟練値:25%
[殴打] Lv2/熟練値:2%
[爪撃] Lv2/熟練値:0% …爪に拠るダメージを物理攻撃力(STR)+15%。
[尾撃] Lv2/熟練値:0% …尾に拠るダメージを物理攻撃力(STR)+15%。
[威嚇] ロック中/初期熟練値:63%
new[牙撃] ロック中/初期熟練値:28% …牙に拠るダメージを加算する。
むふふ、壮観だな。熟練度が0%になっているのは、レベルを上げた弊害のようなものらしい。ちかた無いね。
三つの新入手スキルは、昨日の戦闘や”食事”で手に入れた物だ。出来る事が増えて行くのは単純に嬉しい。
――さぁて、これでお膳立ては整った。本格的に行動を開始や。
鑑定がアンロックした後に分かった事が有る。鑑定を手に入れたのだから当然、出会う魔獣にはその都度鑑定していた訳だが、その結果、基本的にここの魔獣はボクよりも随分とレベルが高い事がわかったのだ。あの、当たればワンパンな一角兎ですら、平均15もレベルを持っているのだ。そのくせ、ステータスは数十から百前後しか無い。さっき倒した
アルヴィエール邪悪……長いので、今は便宜上”カラス魔獣”と呼ぶが、カラス魔獣は見るからにあの狼魔獣達よりずっと素早かった。狼以上の素早さで縦横無尽に飛び回りくちばしや爪を駆使して襲い来るカラス魔獣になんとか勝てたのは、相手の防御力の低さと、僕自身のレベルアップに拠るステータス上昇が理由だろうと結論付けた。そして、更にレベルアップしたボクのステータスとスキルなら、奴らに勝てる。その自信が持てたのだ。あの日から今日までの連勝も自自信を後押しする。
正直、まだ怖い。怖いからこそやるのだ。まだまだこの辺りでレベリングしてからならもっと余裕で勝てるのかもしれ無い。でも、それだって実際はどうかなんてわから無い。わから無いならわから無いなりに、この恐怖心を抱えて、この恐怖心ごと、奴らを越えて行きたいのだ。
だから、やるのだ。
森へ入って、未マッピング外周に沿って”探査”を使い、マップの端に映る光点を探していく。ナビィ曰く、一度遭遇した個体であれば、マッピング済みのマップ上から個体名を、個体名が無ければ種族名を確認出来るのだそうだ。この特性を活かして奴らを探す。
二時間程たった頃、マップ端に一つ、オレンジの光点が映る。光点の詳細には見知った名前が表示されていた。
――みぃつけたぁ……。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
直に陽も落ちる夕暮れ時の深い森の中、生い茂る木々の隙間から暮れの光が漏れ入ってくる。
浴びれば眩むほど橙が疎らに闇を裂いている最中、茶色の毛皮を纏った一匹の狼が組み敷いた別の獣に牙を突き立て、その生命を奪う。横たわる獣は大木の様な胴回り、全長5~6メートル程も有りそうな大蛇の魔獣。強敵で有ったが、持ち前のコンビネーションで徐々に体力を削り、何時間もかけようやく打ち倒す事が出来たのだ。
後ろの方では大蛇の尾を抑えていた仲間の狼が、鼻息荒く誇らしげに見つめていた。更に後ろの小高い所では、額に一本の、独特に曲がった角を伸ばした灰色の狼が見下ろしていた。彼がその角から強い電撃を放ち、大蛇に初撃を与えていなければ、茶色の狼二匹では格上の大蛇に打ち勝つ事は出来なかっただろう。それでも敢えて大蛇に立ち向かったのは、年若く優秀で、群れの中でも期待されていた二匹の成長を促す為であった。故に群れの主である灰色の狼――
そんな彼の役目もどうやら無事に終えた様なので、後の始末は年若い彼らに任せて自分は群れに戻ろう、と振り返る。背後では見事与えられた試練に打ち勝った年若い二匹が、内心湧き立つ空気が伝わってくる。狩場で気を抜くなど、腕っ節は強くともまだまだ子供だな、と浮ついた心を諌めようと振り返る。
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