0-14.試し打ちとスキルポイント
ツッコミもそこそこに、息を落ち着けて立ち上がる。喉がからからなので、川に頭を突っ込んで喉を鳴らして水を飲んだ。ふぅ。
”角射出”の試し撃ちの為の的を探して周囲へ視線を巡らす内に一箇所目に留まった。ベースのしている岩壁に生える大木の下から、左の奥へ壁伝いに進んだ辺りで岸が終わっていて、そこに一本の太い木が川に突き刺さっている。見る限り流木か何かのようで、岩壁にもたれ掛かっている。
的にするのにうってつけな朽木だ。キミに決めた!
岩壁に横たわる朽木まで10メートル程の所で立ち止まっていざ、という所ではっとする。今更ながらやり方がわから無い。
――どうやればいいん?
《腕を上げ射出口を目標へ向ける。スキル欄から選択するか、”
――ほうほう、腕を上げてー、目標を定めてー……こんなとこかな?念じる……”
わざわざスキル欄を出すのもめんどうなので、念じてみると、がしゃり。実際に音が鳴った訳では無いのだが、前腕の奥でそう感じた気がする。それと同時に円形の窪みの有った場所に穴が空いた。やっぱりここが射出口になるのか。
――んんっ、なんか変な感じ。腕がちょっと重くなったような……。で、えっと、”
ばしゅっ、とそれらしい空気音が周囲に響くと同時に、射出口から杭のような物が飛びたし朽木に突き刺さった。
――おお!ほんとに出た!これは凄いぞ……。
《”
初めての事象への感動も
▽[
どうやら発射する弾を角以外にも出来る出来るらしい。任意ってのはどこまでの範囲なんだろうね。
スキルチェックも程々に、朽木に近づいて刺さった”角”を見てみる。これは見た事有るぞ、一角兎の角だ。これが弾だとすると、後四発しか撃て無いのかしら?
《否定。弾になる物質をサンプルとして体内に取り込んでおく事で、相応量の魔力に拠って生産される。》
――サンプルの弾さえ喰らっておけば、魔力が続く限り球切れし無いって事?
《肯定。また、弾を装填する際、込める魔力量を調整する事で弾のサイズを変化させる事が出来る。》
――サイズ変更?してどうすんの?
《弾が小さくなれば連射速度が上がり消費魔力も減る。その逆も然り。》
なるほど。ちなみに、後で聞いた話に拠ると、今のままだと、標準サイズの弾でも次弾を装填するのに30秒程かかるそうだ。レベルが上がれば早くなるとの事。”射出”のレベルを上げつつ、色んな物を発射出来るようにしておくべきだろうな。
――ん?待てよ?弾って事は、無機物、やんな?
《肯定。》
頭に浮かぶ”弾”のイメージと言えば、矢や石礫、ゴム弾、そして銃などの弾丸。そしてそれらを使うためには喰う必要があると言う。つまり――。
――喰えるのか!石や木が!
思い起こせば、”喰魔”の説明欄にも生物・非生物問わず、の旨が書かれていた。肉だけでなく骨も難なく喰らえた時点で思い至るべきだった事だ。この顎と牙にかかれば、喰らえ無いモノなど無いのだろう。今後は目につく物を一通り口に放り込むべきだろうか。
思わず躊躇したが、物は試しだと足元に無数に落ちている砂利を一粒摘んで口内にも放り込む。このまま飲み込めそうだが、取り敢えず咀嚼する。ごりごりと、およそ食事時に発生するような音では無いが、問題無く飲み込む事が出来た。味を感じ無いというのはこういう面においても便利だったのか。そのままひとつかみ程食べてみたが、特にシステムメッセージは出無い。これだけでは特に意味を成さ無いのだろう。ついでに朽木に噛み付いて毟ってみる。顎と牙のお陰か、軽い抵抗のみで剥ぎ取る事が出来た。これでも特に何も起こら無いので、”射出”を得るまでは取り敢えず目新しいものは口に入れると言う事で決着しておく。
その後、もう何度か”角射出”を試し、刺さった角を引き抜いて口に放り込んでからベースまで戻った。
木陰に腰を下ろし、保留していたスキルポイントを割り振るためにメニューからスキル欄を表示させる。
スキルポイントが使えるスキルは現在は4つ、使えるスキルポイントは全部で120だ。
▽[NIS] Lv1/熟練値:33%
▽[メニュー] Lv1/熟練値:19%
▽[自動回復] Lv1/熟練値:16%
▽[角射出] Lv1/熟練値:5%
ナビィによると、そもそもスキルにはLV3+MAXの物と、LV5+MAXの物があって、それぞれのレベル間で必要なポイント数が決まっているそうだ。LV5+MAXは10→100→1.000→10.000→100.000、LV3+MAXは10→1.000→100.000必要になる。どちらもMAXにするためには10万ポイント必要だそうだ。一体どれだけ戦えば貯まるんだ……?インフレしてると思います。まぢむり。。。リスカしょ。。。
まぁ、最初はどれも10ポイントでいい様なので、四つとも上げようと思う。選択状態のスキル名を、もう一度タップするとレベルアップするか、とダイアログがポップした。”はい”と選択すると、どうぅんと重低音がどこからか響いた。こういうのってもっと爽快感の有る効果音なんじゃ無いか?と思ったが、生前好んでプレイしていたオープンワールド系のアクションゲームにはよく有る感じだ、と思い直した。
重低な効果音が鳴ると同時に選択していた”NIS”スキルはLV2になった。間も無くナビィによるシステムメッセージが響く。
《”NIS”スキルがLV2へレベルアップ。》
《レベルアップに伴い、禁則事項が30%緩和。》
《個体名”ナビィ”にアバターを実装。》
《ミニマップの表示範囲が50mに拡張。ミニマップの拡大縮小が実装。》
《カレンダー機能の実装。》
《その他ナビゲーション機能が向上。》
おお、何だか多いぞ。色々と言われたが、取り敢えず一番気になるのはナビィのアバターだ。アバターって事は、ナビィが人型になるのか?
《個体名”ナビィ”に視覚可能な光型ボディを与える?》
光型ボディと言うのが何なのかわから無いけど、人恋しさを紛らわせる為にも目に見える形になってくれるというのは願っても無い事だ。
《要請を受諾。アバター付与を実行。》
言うと同時に目の前で何かが眩く発光した。うおっまぶしっ。発光して暫く、徐々に収まってくる。目が眩むほどの光は一旦収まり、回復した視界にはぽわりと優しい光の塊が浮かんでいた。
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