第8話 Questo e’ un giocattolo(これはおもちゃです)2

 疲労困憊してジャグジーに入ってると、リカとサンクも入ってきた。(本来は水着着用することになっていたが、着ていたのはこの3人のみ。他の連中は私の前でも平気で素ッ裸で入っていた。女だってわかった後も。サンクだけは気を遣ってくれていた。リカはパレオも着用)「私 自衛隊にも海兵隊にも、どこかのレジョン(フランス語で部隊)にも入った覚えないんだけどー!楽しくゲームしたいだけなのにー」リカがゲラゲラ笑った。「怖くてやめたいって言えないんだよー」サンクまで笑いだした。「持ち前の負けん気はどないしてん!」私は両肘を見せた。受け身を取り損ねた時の打ち身が青くなってる。「でもラニのやつ、手加減してると思うぞ?…どうする?やめるか?」サンクが打ち身をちらりと見てからきいた。(やっぱ医者なんだねえ)

 「それはわかってる、多分出力10分の1位にしてくれてるって。それに、私の相手は業務外だって事も。だから、やる!…でもさ100分の1でも良くない?」サンクが「あーホント変な女!」「女失格やん!」とリカ。

その後2人が散々無責任な事を言って私をからかった。「部屋に入ったの君だけ」とか「密着してた、やらしいわ」とか。リカがあまりに「女失格ぅ」と言うので「うるさいわ!ラニは車から降りる時ドア開けてくれるし手もかしてくれるもん」と言い返した。「それはそうせなならん車と服やったからじゃ!」(ランボルギーニ カウンタック。ラムの車を、私が金庫破りをして勝手に鍵を持ち出し、ラニに運転してもらった。ラムが私に、金庫を開けられたら自由に車を使って良いと言い、私はまんまとかけに勝ったわけ)


 次の週末までに、とラニから宿題をもらった。自分なりに作戦を考えろというのだ。怒られるのが怖くて、無い脳みそを振り絞り考えた。人間その気になれば色々出来るもんだと思った。(怖くてやめられないし!)それから次のゲームまで、ラニか柔道出来る人達に投げてもらい受け身の練習。ラニに見てもらい射撃の練習。夜はラニの部屋で、アドバイスを受け装備を作る週末になった。

 装備を作りながら、ラニに前々からきいてみたいと思っていた事を(恐る恐る、言葉がわかる範囲で。手を休めて辞書を取り出そうとすれば怒られる)尋ねてみた。まあ想像はつく、返事しないか「黙って手を動かしなさい!」だった。ただ、ひとつだけ「どこの国の人?」と尋いた時にはパスポートを一瞬見せてくれた。予想してたが、フランス…決定打。「…今年、29歳のはずだよね?」生年月日を読みとっていた。「でもそれよりも若く見える…」彼はそれには答えず、「僕が昨日教えた事、言いなさい!」あーハイハイ。「ムービメント、テンポ、セント」(sento、イタリア語で感じる)「Buono」(あら珍しい、よろしいと言ってくれた!)


 さて、ゲーム前夜。ラニが拳銃を2丁渡してくれた。持てるなら予備を持つのは鉄則だし、何か不具合があった場合君は自分で対処できないから と言って、調整済み装填済みのものだ。(…なんて優しい!)思い返せば、これがこの人に惚れた瞬間だったかもしれない。だが、次の瞬間「本当はきちんと扱えるようになってから持ってもらいたい」(と言うような事を言った)「ペルケー⁈クエスト、ジォカットロ!(なんでだよ⁈これ おもちゃだよ!)」約束も、怖いのも忘れ叫んだ。




 料理長が吹き出した。「たしかに、オモチャ持って怒られたくないよなぁ!それにしても、そんな事で男に惚れるか、おまえはホントに変だ」「そんなに変かな?普段との落差に惚れる女は多いもん」



 [この時点でラニは自分の事を何も話していない。パスポートをちらっと見せてくれただけ。後は噂しか知らなかった。

 浅黒い肌に彫りの深い顔立ち(とっても怖い…)、185cm弱(私プラス25cm)の長身の筋肉質だがゴツくはなく、均整がとれてすらりとしている。77、8Kgはありそうだった(ダイビングのウェイトから)。ラムとの仕事の時はイタリアブランドのスーツ姿だったが、シシリアンマフィアのボスの用心棒か殺し屋にしか見えない。(似合っててカッコいいんだけどー)地中海沿岸の色々な人種が混じっているような姿。

週末は仕事休み(ラムがおねーさんの所に行くから)のはずで、皆とは"アウトドアレジャー"に行く、という形になっていたようだ。本編中にも書いたが、飲んでても皆のなかには入らず、一杯位でさっさと寝に行ってしまう。雑魚寝もせず、外泊の時は誰も知らないうちに入浴も済ませて何処かに消えていた。後で知ったが皆の様子を離れて観察していたらしい。]


・番外編

 男所帯の中の毛色の変わった者たち、私とリカ(性同一性障害)サンク(同性愛者)。リカがサンクに振られた後、時々3人で集まるようになった。サンクが正直に、"男性として"男性が恋愛対象であるとリカに伝えたからだ。そして3人共"細マッチョの筋肉"をこよなく愛するという共通の趣味があった。

 私のクロッキー帳を見て、リカが「ちょっと これ誰⁈」と目の色変えたり(顔は描くなとラムに言われていた。写真禁止だったし)。サンクの職場の写真を見て、私が興奮したり(礼服の集合写真、たまらん)。ある時はサンクが、「楽しそうなビデオを手に入れた!」とホクホクして持ってきた事も。某大学の体育祭のビデオだった。見ながら「どうしてここの大学に行かなかったの?」と尋くと、とても切なそうな顔をした。「この大学ね、寮生活なんだよ。それに外出もままならないんだ…。理性を保つ自信がないよ…」

 尋いて悪かったと思った。こちらまで切なくなった。(どうして、バレたら身の破滅の所に就職したんだろう?)こっそり、その職場の人達 イヤだろうなとも思った。(さらにイヤな事にこの人医者だよ…)

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