第2話 訓練?開始1

 翌朝(お泊りセットを持っていくように言われていた)、ラムが「クルーザー借りたからダイビングしに行こう」と言った。(水着も持っていくように言われていた)それは大変楽しそうだ。「でもライセンス無いけど出来るの?子どもの頃喘息だったから無理って言われてたけど?」と私が尋ねる。「吸うのは空気だから大丈夫!ライセンスなくても、インストラクターが一緒に潜ればいいんだよ」とラム氏が答え、私は胸が踊った。「"バディ"って言って、2人1組で潜るんだ」(なんだかイヤな予感がするな…)「彼ね、インストラクターのようなもんだから!」(とてもイヤな予感!)「ラニに教わって」(予感的中、イヤだあ‼︎)


 (新入生イビリかよ⁈)このサークルの参加者は、私の他は男性のみだった。さらに私が一番歳下。(実はリカはオカマ。正しくは性同一性障害。ええ根性してるから私はオカマと呼んでいる)このサークル、しかも何だか"やたら頑丈そうなヤロー"ばかり。彼らが、にやにや笑って私を見ている。(コトバ通じない。ヤバい。どーしよ?私はジャパニーズオンリーだ‼︎)って思ってる私を見てるだけだ。ところで、この頃の私の負けん気は"無駄"に強かった。

 「よ、よろしくお願いします…」彼が私を じろりと一瞥。(やめて見ないで怖いから!)「何にも知らないです。申し訳ないです!」こうなったら、日本語で押し通すしかない。「おいで」(と言ったと思った)

 彼はクルーザーに乗る際に、手を貸してくれた(!)。「知らないなら仕方ない」(と言ったと思った)「ポイントに着くまでに機材の説明するから」(上記と同様)

私(158cm 40Kg前後20歳)と、185cm弱80Kg弱位の 何処の国の人とも知れぬ 怖い顔の彼(たぶん20代後半)。大変に不釣り合いなバディだった。

 『エアが切れた』『寒い』『(2人)一緒に』他大事なサインを教えてもらい、機材の簡単な説明をしてもらい、いざエントリー(ダイビング開始)。




 料理長が言った。「なるほどな。どおりでおまえが俺達の手信号を知ってるはずだ。あいつが教えたのか」料理長、さすが私の彼氏の先輩。「うん。その後で民間のライセンスとりに行ったんだけど、彼に教わったサインには違うサインもあって、あーやっぱり特殊な職業の人だったんだなぁって思ったよ」「そうか」

私の彼氏は先輩や専門家の意見を聞く。料理長と2人きりで居ても"焼きもち"やく事はないので助かる。

 「それより、おまえの友達。おまえの見舞いに来た時に見かけたが…ありゃ男だったのか!」料理長の呆れたような驚いたような様子に、私は大笑いする。「日本人男性ってあんまりゴツくないから」「それにしても、あんな美人がなぁ!」彼は首を振り振りそう言った。「私もしばらくは女だって思ってたよ。出会った瞬間から意気投合しちゃってて、向こうもね、言いそびれたっていうか言っていたつもりだったって」"それ"に気づいた時のエピソードを話すと、料理長が大笑いした。




 人生初のスクーバダイビングは、首根っこを掴まれたような格好でだが、大変感動的な体験だった。子どもの頃から憧れていたのに、喘息では出来ないと親(正確な情報を知らなかったんだな)から言われていて、諦めていたからだ。そのうえ、バディは怖いのは顔と雰囲気だけで、とても紳士的に私に接していた。(さすが欧米人!)

 タンクのエアに余裕を残し、私とバディは皆より早く浮上した。そしてフネに戻る際。タンクとフィン、ウエイトは先に上がったバディに渡し済みだが、(あれっ?上がれない?)浮力に体が慣れた、ステップがダイビング用ではない、ウェットスーツが体に合ってない。焦るほど脚が上がらない。焦っている私の後から、他の人達も浮上してきた。「おーい!後がつかえてるんだよー、はやく上がれよー寒いんだよー!」わざわざプレッシャーかけてくれる "頑丈そうなヤロー"ども。

 見かねたバディが私のスーツの余った腰のあたりを、むんずと片手で(!)掴んで ぽいと投げた。もちろんフネの甲板に、びたんと叩きつけられる。それを見た船長(を任された人)が「(沖に出てると)甲板にトビウオかなんか乗っかってるもんだけど、とんだ外道が乗っかったもんだ!」大笑い。(アタシゃ外道かぁ⁈日本人は失礼千万なヤローどもしかおらんのかい、このヘンな集まりはー!)

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