第10話 身支度
「はぁー、うまかったー」
ジンは、【牛の乳亭】でご飯を食べ、しっかりとお金を払い、残りの残金は1000レギットになった。
食べ始めは夕方で、食べ終わった頃には、暗くなっていた。しかし、人は意外に多く、未だに屋台で食べ物を食べる様子も見える。
『……服』
「服?」
手の上に乗っていた
「何かおかしなところあった?」
『……ち、違う…わ、私の服が…その…ほ、ほしい』
なぜモジモジするのだろうか。草なのに、仕草が人間のようなことをする。
それにこんな苗木の体に合う服なんてあるのだろうか。
「合う服なんてないと思うよ?」
苗木の服なんて見たことがない。それにどこを隠すというのだ。小さいはずなので余計にたかそうである。
見たことないので、そんなことを言ったら、さらにモジモジを始めた。
『…あるもん』
草なのになんとも可愛い答え。そんな怒ったような、恥ずかしそうな声で、言われたら、仕方ないだろう。
「しょうがない、行くか」
こうなるしかなかろう。
『うん!』
その言葉に対して大きく反応し、ジンは元気にはしゃいで、大好きなものを見つけた子供のようにも見えた。
周りはまだ活気に溢れている。なので、店も大抵やっている。苗木に合った服なんて見たことないので服屋の特注品になるだろうと思い、お金足りるかななど思いながら服屋に足を運んだ。
♢
『これにする』
そう答えたのは早かった。
服屋に足をを運ぶと、手の先に乗り、あっちっとばかりに引っ張る。その方向に進むと、唐突に『これにする』と言った。その選んだ服は、明らかに人間用。大きさは10歳ぐらいのだろうか。小さい服を選んだ。布地は特に変わったことはなく、白いワンピースの服だ。
「そんなのきれないでしょ?」
『…む……これがいい』
「そ、そうか」
この子が選んだ服を手にすると、なぜか、手の上でウンウンとばかりに草を揺らしている。値札を見ると300レギット。うんこれは安い。
そんなに痛い出費じゃないので、買ってやろう。
「買ってやるよ、ただし、体で払えよ」
『!!……わ、わわわかった』
またモジモジ始めた。何がいけないのだろう。また血抜きをしてくれと言っただけなのに。
「すいません、これ買います」
「はーい、毎度!」
服を買い、欲しいものはないので、宿に向かった。
♢
「はぁー、疲れた」
宿に戻り、追加料金の300レギットを払い、部屋に帰ってきた。
風呂に入りたくなってきた。なので、明日近くの川に行って、水浴びしに行こう。
『……着替える…見ちゃダメ』
「あ、そう、着替える、ね」
どうやって着替えるんだよって言いたかったが、まぁ楽しそうならいいか。
身につけていた草のポーチを腰から外し、草は枯れ、荷物をかたずけた。
そして、ベットに潜り、寝る体勢になった。
『…どう、かな』
「…えっ」
そこには、ロングの黒髪、清楚なワンピース、白い肌。
美少女と言える女の子が立っていた。
「か、可愛い」
『……そ』
可愛すぎて、可愛いしか出ないほど、そこには存在した。
女の子は、ゆっくりとした足取りで、ジンが入っているベットの中に潜ってきた。
「君ってあの黒い草だよね」
『……ん』
やはり、あの黒い草らしい。それにしては、変わりすぎている。人型なところとか主に人型なところとか。
「そんな姿になれたなら、もっと早くなってよ、そしたら服が無駄な出費なんて思わなかったし」
無駄な出費だと思ったじゃないか。明日には1000レギットぐらい稼がないといけない。
『だって…だっってぇぇ……ヒック、……街でぇヒック、……裸になんか……ヒック、…なりたくないんだもん…ヒック、』
「ごめん!わかったから泣くなって!ね?泣かないでよ」
そんなに強く言ったつもりはないが、女の子だった草は女の子らしい感情があるらしく、街中で人化したら恥ずかしかったらしい。それを指摘されて泣いてしまった。
悪いことをした。
「ごめん、悪かった。そうだよな、外で裸とか。ごめん」
『……ん…代わりに明日沢山奢って』
「わかった」
明日お詫びで奢ることになった。なのでさらにお金を稼ぐ必要ができた。
明日頑張らないとな。
『……今日やるの?……脱ぐ?』
「…は?」
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