第4話 前例のない魔法で草

「おし、そこの君かな、珍魔法の子ってやつは」


なんてバリトンボイスなスキンヘッドの男がきた。でも意外と、声と体型がとても似合ってる。

多分これがマスターって人だろう。


「えっと、多分、そうかな?」


「自分ですらわからないのかよ、そんでどんな魔法だ?」


わからないって、こちとら、あの、おじさんからもらっていた小さな情報しかないし、あいにく、10歳の頃から情報は一切ない。あのおじさん、よく草について、世界について教えてくれてたな。


「まぁ、こんな感じかな【生長】」


「おいおい!魔力練りすぎだ!!!!!爆発すんぞ!!!!!なんだよその魔力量は!!??」


そんな事はないと思うけど。魔力ってみんなこんな感じじゃないのかな?でもどんだけ今まで【生成】を使ってきたと思うんだ、こんなそこらじゃ爆発はしない。

この魔法は弱点ってか、地面からしか生えない。もしくは、土を持ち歩くしかない。あいにく今土なんて持っていないので、身につけている草を【成長】させた。

その草は、どんどん葉を増やし、淡いピンク色の花を咲かせ、一部は成長限界を超え、一部は枯れ、多くなった葉をちぎって元の葉の量に変え、見えないようにした。


「こんな感じかなこの魔法」


マスターって男のツルツルな頭が、ありえないほどの汗をかいている。

そして、目は接点が若干あっていない。


「……ここを爆発する気か!!!!!!!」


いや、する気は無いけど、なんか、ごめんなさい。

周りに、酒を飲んでいる冒険者方も、みんなこっちを見ていた。

ある者は、目を見開き、またある者は、体が震えていた。








「お主、爆破する気は無いんだな?本当にないんだな?」


今、ギルドマスターの部屋に来ている。

どんな魔法だって言ってきたから、言っても「草生えて草」って詳細は書いてありますって言っても、何もわからないだろうから、実際に見てあげたのに、この仕打ち。


「無いですよ?ただ、どんな魔法だって言ったから見せただけです」


「本当に本当か?」


「さっきからそう言ってる」


いや、バリトンボイスのダンディなのに、なんか、子供っぽいって言うか、なんか、ね。


「まぁ、アレ嘘発見器使っても何も反応しないって事だから、本当か。でもお前、なんでそんな魔力あるんだ?」


「……何が?」


魔力?あるのは知ってるけど、そんなにあるかな?まだ、1割も使ってないけどな。

検問前で1回目、ギルドで2回目、そんなそこらで、魔力がきれるわけないだろうに。


「 何がって、さっきの魔力量、フレイム並みだぞ!?それを何がって、そんなの国がほっとくわけがない!」


「いや、そう言われても、ねぇ、家から出た事なかったし」


なんせ、親があれだ。常識なんてクソくらい。生きるのに精一杯だ。ってか、フレイムってどんなだ?


「そうか、田舎もんだもんな、どこ出身だ?」


「……わかんない」


あのおじさんがもう少し長生きしてれば、知っていたのかな。でも父が殺したし、死んだ奴は語らない。


「わからないってなんでだ?親に、教わらなかったのか?」


「……話したくない」


「そうか、まぁいい。個人情報だしな、そんで冒険者になりたいんだっけな、冒険者カード発行代で500レギットだ」


言わなくて済んだ。まぁどんなに聞き出そうとしても知らないから、言えないけどな。

それよりも、お金。今無一文だ。これは、諦めるしかないのか。


「お金ない」


「……は?それ、本気か?なんでお金ないのにここまで来れた?それに、その草の下、裸だろ?」


「親が、その、あれだから」


あれ=殺人鬼。息子を家畜扱い野郎。


「そうか、病気か、災難だな仕方ない後払いで許してやる、代わりに今日中に、浄化草を20本採取してきてくれ、そしたら、ちょうど500レギットとお釣りで200レギットだ」


「あ、うんわかった、どんな草だ?」


なんか、勘違いしているが、これは言い直すのも、大変そうなので、そう言うことにしておこう。


「これなんだけどな、最近浄化ポーションが足りなくてな、取ってきて欲しいんだ」


見せてきたのは、水色の花。そこらで、栽培できそうな花だった。浄化ポーションは、井戸水の洗浄や、酒場や、宿で使うらしい。


「わかった、取ってくる」


「おう、暗くなると外で野宿になるからな」


「わかった」


そう言って、ギルドマスターの部屋を出て、すぐに、ギルドの模擬戦練習場に来た。

ギルドマスターの部屋の窓から、模擬戦練習場が見えていたので、そこに来た。

まぁ、理由は、土だ。

練習場は、地面が土でできていた。なので、


「浄化草だっけ【生成】」


見た目をイメージして、草を生成し始めた。


地面から、黄緑色の葉が二枚。どんどん伸びて、蕾ができ、花が咲いた。


「よし、完璧!」


さっき見た浄化草そのまんまだった。なんとかかった時間は、10秒ほど。簡単に量産ができる。


「まだ、1か」


何度も繰り返し、作りつずければ、2、3、4と、同時に【生成】できるようになるんだろうけど、まだ、初めてだ。失敗しないよりマシだろう。


そんなことがあって、100品出来上がった。最後の方は、2本同時生成とかできるようになった。

そして、かかった時間は、15分ぐらいで終わってしまった。


「まぁ、こんだけあればいいだろ」


練習場を後にした。


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