第3話街中で草
街の検問まできた。村から4時間ぐらいかかっただろうか。馬車が通ったであろう草が禿げた道を辿ったらそこそこ大きい街に来た。
検問には、行列ができている。これだと、入るのに、1時間ぐらいかかるだろうか。
「長いなぁ」
1番後ろに並んでいるが、前の人達から、視線を感じる。まぁ、なんせ、
「おいおい、草がいるぞ」「こりゃ、馬鹿者がするやつだな」「相当これ作んのに時間かかるぞ?」
そんな3つの声が聞こえた。
草、舐めんな。
「草のことをバカにしないでくれる?」
ジンは、物心ついた頃から、草とともに生きている。この草魔法がなければ、死んでいるかもしれない。草は命の恩人だ。
「あぁん?なんだテメェ?バカにした?それはお前だろ田舎者が!!」
そんなチンピラのような3人組のリーダーらしきものが声を上げた。
周りは、「ジャックに当たるとは運ねえな」など、「ありゃ、終わったな」など声が聞こえる。そもそも「ジャック」ってなんだ?わからないジンだった。
「兄貴!このガキ怖くて声も出せねぇだってよ!一発殴ってBランク、ジャック力見せてやってくだせ!」
「そうだな、俺はとっても機嫌を悪くしたもんなぁ、ちょっくら一発殴らせろ!オラァァ!」
ジャックって言うリーダーらしき男が殴りかかってきた。Bランク?なんだ?それ強いのか?
ジンは腰にベルトにしておいたトレントの腕を取り出し、その木の棒の魔力を練った。
長く。そして、広く。そして。硬く。
魔力を練るとその形になる。そして、魔力は地面にこれをぶっ刺すと勝手に、地の魔力を吸い取る本当に楽ちん武器だ。今練り上げた形は盾だ。
木から作られた盾は、一直線の棒を長く広く硬くしたら、左右上下に伸びてひし形になった
それを構えて、
ドン、
リーダーの男が殴りかかった。木に向かって思いっきり殴ってみてほしい。結果は、
「いっっってえぇぇぇぇぇ!!!!!」
そりゃそうだ。だって木だもん。草だもん。
「「おい!舐めんな!!ジャックの仇!!」」
なんと、声が完全に被ってる。2人とも拳を振りかぶって、
ドン!、
殴ってきた。完全にシンクロした動きで、ジンも少し、後ろによろけそうになった。
「「いっっっっっっってぇぇぇぇぇ!!!!!!」」
ほら、2回も叫ぶから、周りが見てくるじゃん。俺、荒事嫌いなんだよな。
また、「あれ、ジャックだよな?」「なんだ?あの盾みたいなやつ、さっき持ってたか?」
なんて聞こえる。注目もあまり、よろしくない。
殴りかかってきた、3人の手首は青くなり始めている。相当強い力で、殴ってきてたのか。
「なら、Bランクはそんなに強くないのかな」
そんな声は風に乗って消えた。
♢
「次!」
「あ、はい」
検問までやっときた。途中で殴ってきた男3人組は、手首が青くなり、痛すぎてか、失神していた。本当にそんなで、冒険者なんてやってられるのか?
「身分証は?」
「……え?」
「身分証の提示を求めてる」
「……え?」
「身分証は?」
「……ない、かな」
そもそも、村すら、いや、家すら、いや、牛小屋から出たことない人にそんなことを求められても困る。そんなもんないに決まってんじゃん。
「田舎もんか?」
「えっと、そうかな」
「なら、今から、お金を払って街に入るか、後ろで控えてる、案内人に冒険者ギルドか、商業ギルドに入るかどっちかだな」
「あ、えっと、冒険者ギルドかな」
「よし、ケン!こいつ2番だ!連れて行ってくれ!」
検問の人がそう言うと、後ろで何か書いていた人が立ち上がり、近寄ってきた。
テンパりすぎて、冒険者ギルドなんて言ったことは内緒だ。
まず、無一文だし。
「よし、小僧、冒険者ギルド行くぞー」
「は、はい」
とっても、子供受けしそうな顔の男性だ。言葉は、ちょっとトゲっとしてるが、とっても優しい声だ。
おお、歩くの早い!
♢
「ほら、ついたぞ、じゃあな」
「はい!ありがとうございました!」
ギルドは真ん中あたりかな。1回で覚えられそうな一直線だった。
頑張って覚えよ。
「あっと、坊主、敬語は止した方がええぜ、じゃあな」
「は、わかった」
さて、入ろうかな。
ドアを開けて、中に入った。
そこには、酒場カウンターとギルドカウンターがあった。元々、大きな建物だなって、思ってたけど、思った以上に大きかった。奥行きが。
「おい、どけ、邪魔だ」「ごめんね、うちのリーダーが、これでも根は優しいから許してね」
ドアを入った側で突っ立っていたら、後ろから入ってきた男女2人組に声をかけられた。
これは、俺が悪い。
「すいま、悪い、すまん」
敬語は使わないようにしないと。それで、登録しないとっと。
登録所は奥の一角にあった。そこに行くまで、強面の男、色気ドバドバの女性、たくさんいる。
「勇気いるなぁ」
腹をくくって、向かった。
やっと来れた。いや、本当に、視線が怖いのなんの、全ては服に行く。なんか、恥ずかしい。
「登録したいんだけど」
「はい、わかりました、職業は偵察職でよろしいですか?」
「……え?」
「ですから、擬態服を着てるので、偵察志望かと」
「あ、えっと、その、じゃあ、……魔法職で」
草魔法なんだから魔法職、だと思う。
「わかりました、この水晶に、血を一滴垂らして、くれますか?」
そんな言葉とともに、小さなナイフを渡してきた。
それを受け取り、親指の端っこを少し切って、血を一滴垂らした。
「ありがとうございます、それでは、【ミニヒール】」
「おお、魔法か」
この受付嬢は魔法職らしい。最下位聖魔法の【ミニヒール】を使ってくれた。これは、切り傷、かすり傷ぐらいしか、治さないけど、それで十分だ。
「それでは、ジンさんですね、それで魔法は…草魔法?」
「はいそうです」
血を水晶に垂らしたら、カードを押し当てていた。そこにどんどん字が写されていった。
「魔法の詳細は……草生えて草?……え、それだけ!?どんな魔法ですか!?それにこんな魔法は、知りません!ちょっとマスター呼んできます!」
「は、はい?」
なんだよ、「草生えて草」って、まぁ確かに、魔力を使って、草生えろー!って思うとニョキニョキ生えてくるんだけど、確かに、「こんながいい」って思うとそれに大体沿ったものが生えてくるからな。だけど、もっと説明あってもいいと思うんだけど。
「おし、そこの君かな、珍魔法の子ってやつは」
なんてバリトンボイスなスキンヘッドの男がきた。でも意外と、声と体型がとても似合ってる。
多分これがマスターって人だろう。
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