わわわ、恥っずかしいであるな

そう分かった瞬間ゾワッと下腹部の辺りが冷えた。

 頭ばっかりぐるぐるして目眩がした。

 目の前はチカチカして、変な汗が噴き出した。

 バシャッ!

 ――あ、ソルベ落としちゃった。

 慌てて逃げ出そうともがくけど一方の腕は胴をがっしりと抱きしめて、もう一方の手はソルベと一緒に私の手首を掴んでた。

 溶けたソルベが私の腕を伝う。


 や、やだ!


 スパン!!

 無意識の内に必殺ビンタが炸裂。


 ……ちょっと舌噛んだ。


 息がしづらい。

 呼吸が、難しいの。

 早まる鼓動に呼応して頭がどんどん熱くなった。

 体はガタガタ震えて目を見開いた。

 唾液がたらりと、垂れた。

 焔は叩かれた頰を撫でながら

「弱虫」

と言った。

 ……そんな顔で見ないで。

「弱虫」

「うるさい!! うるさいうるさい……、……初めてなのに」

 急に悲しくなってむせた。

 目の前で薄く笑ってる彼が許せなかった。

「何したと思う」

「何したの」

「故郷の重りを浬帆に植え付けた」

「は?」

「夜毎、故郷に空っぽの水が張る。そうすると重りを持ってない人は異世界まで浮いていっちゃうのさ。だから俺の重りを浬帆に、代わりに植え付けた」

「え……そしたらどうなるの? 家には帰れないの!?」

「帰れないよ。俺がいつの日か異世界に行ってやるのさ」

「そ、そんなのって!」

「遠くに来たかったんだろ?」

 ……!

 彼の瞳はもう何もかも見透かしていた。

 怖い。

「来たいって言ったり帰りたいって言ったり、やっぱり異世界の連中は不思議な奴らばっかだな」

「……」

 何も言えない。

「そうだ。ケベット爺さんの所に案内してやるよ。ほら、ついてきて」

 また手首を掴む。

 でも今度は振り払った。

「どうした?」

「勝手についてくから、良い」

「……何、まだ気にしてんの? ファーストキス」

 スパン!!

 今度は逆の頰をひっぱたいてやった。

「いって。辛辣」

「当たり前でしょ! それより食べないの? ソルベ。溶けちゃうよ!?」

「ん、俺前歯どっちも虫歯だから」

 もうすっかり小さくなったソルベを大きく開けた口に――まるでサーカスのピエロが剣を呑むように――丁寧に突っ込んで、バクッと噛んだ。

「だから噛み砕く」

「イミフ」

 動悸は、速い。

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