第二章:愉快な仲間

あとの祭り

 昨日のどんちゃん騒ぎが嘘のように今日のギルドは静かだ。

 広場に行ってみると、酒で酔いつぶれた大人たちがだらしなく寝ていた。


「うわっ、酒臭っ!」


 俺は思わず鼻をつまみながらそう言う。

 とりあえず俺は酔いつぶれている父さんを揺すり起こす。

 父さんは「うげぇ…」とだらしない声を上げた。


「父さん」

「ユウ…?もう朝か…。うぐっ!?気持ち悪っ…」

「まっ!?ここで吐くのだけはやめてくれ!?」


 今にもリバースしそうな父さんを見て俺はあわてる。

 とりあえずあれだ!

 バケツを持ってくることにした。


「おえぇ~」


 見苦しいところを見せてしまって失礼。

 そして、なんとかバケツを持ってくることは間に合ったようだ。

 父さんも吐くことができてスッキリした顔をしている。


「父さん、その中は自分で捨ててくれよな」

「わかってるよ、ありがとな」


 酒がまだ抜けていないのか、父さんはおぼつかない足取りでたぶんトイレに向かった。

 さて、俺は俺で今日は用事がある。

 ノクシュとブージーと約束があるのだ。

 この2人とは定期的に集まる。

 隣町の行きつけのカフェにて待ち合わせだ。


「ユウ、おはよう」


 とエルが俺に挨拶をする。


「エル、おはよう。なにしてんだ?」

「サクラと一緒にお片づけを。ユウも?」

「いや、俺は今日ちょっと用事があってな。隣町に行くんだ」

「そうなの。サクラがユウを見かけたら片づけを手伝うように伝えてって言われたから声をかけたのだけれど…、用事があるのなら仕方ないね。サクラに、そう伝えておく」

「ああ、ありがと。ついでだけどお詫びにサクラの好物のイチゴタルト買ってくるって伝えておいてくれ。もちろん、エルにも買ってくるからさ」

「イチゴ…タルト…?」

「食べたことないのか?昨日食べた…ケーキみたいなもんだ」


 と俺が言うとエルはぱぁっと顔を明るくした。


「うん、わかった。いってらっしゃい」


 エルはトテトテと小走りをしながらサクラのもとへ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る