意外な反応

「おーなんだなんだ?新人ひとりじめか?いいご身分だな」


 しばらくエルと話していると、セイラがあくびをしながら嫌味を言ってきた。

 エルはセイラに驚いて俺の後ろに隠れる。


「おいセイ…クロエ、エルが怖がってんだろ?」

「ふん、そんなビビりでこのギルドの団員が務まるのかよ?」

「そんな言い方はないだろ?」

「ユ、ユウ…私が怖がって後ろに隠れたのがいけないの。く、クロエさん、怖がったりしてごめんなさい」


 とエルは俺の後ろから出てきて、セイラに対してペコリと謝った。

 そんなエルをみてセイラはなんともばつの悪そうな顔をする。

 こんな反応取られたのが初めてなのか、どう対処すればいいのか分からないようだ。


「ご紹介遅れました。私、エルミラ・アンジェラっていいます。今日からお世話になります。よろしく」


 とエルはまたペコリと一礼する。


「あ、ああ…」


 俺も含め、ギルド団員たちはセイラのこんな反応見るのが初めてだったので心の中でいいぞ、もっとやれと思った。

 そしてセイラはというと、ふんっと踵を返してたぶん、自分の部屋へと戻っていく。

 セイラがいなくなったのを確認し、ギルド団員たちは一斉にエルのところへ集まる。

 

「エル、すごいな!」


 とエルにそう言ったのは父さんに次いで古株のコリーニョ・パーカーさん。


「えっ?なにが…?」


 とエルは少し困惑する。


「あのセイラをあそこまで黙らせるなんて…。こりゃ将来大物になるぞぉ~」


 とコリーニョさんは一筋の涙を浮かべる。

 そう言えばコリーニョさんが一番セイラによるとばっちり受けてたような…。

 まああれは彼もセイラにセクハラまがいなことしてたから仕方ないっちゃないが…。

 ちなみにコリーニョさんがやったセクハラまがいなこととは酒で酔った勢いでセイラに女装を無理やりさせた。

 セイラはそのことをずっと根に持っている。


「おばあちゃんに言われたの。お世話になる人にはちゃんと挨拶をしなさいって」


 とエルは恥ずかしそうに言う。

 その言葉に対しギルド中が「いい子だ…」、「ええ子や…」とつぶやく。


「ユウ、私セイラとも話してみたいから行ってくるわね」

「お、おお…。そうか、頑張れよ」


 俺がそう言うとエルは「うん!」と恥ずかしい半分嬉しさ半分といった顔でセイラのもとへ向かう。

 エルは内気なようで意外と勇気があるのだなと俺は思った。


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