エルと会話2

「なぁ、エル」

「うん?なに?」

「エルってここに来る前はどんなことしてたんだ?」


 と俺が聞くとエルは黙り込んでしまう。

 …しまった、まだ聞いちゃまずかったか?


「いや、言いたくなかったら言わなくていいんだ」


 俺はあわてて黙り込んだエルにそう言う。


「あっ、別に言いたくないとかそう言うわけじゃないわ。どこから話そうか迷ってただけ」

「な、なんだ…。そうなのか…」


 俺はホッと胸をなでおろす。

 

「私、ここに来る前はおばあちゃんと一緒に大昔の人のお墓を守っていたの」

「大昔の人のお墓?ご先祖様か何かか?家族はおばあちゃんだけ?」

「そうよ、と言っても私とおばあちゃんの血は繋がってないの。捨てられてたらしいわ、私。お墓の中に誰が入ってるのかは私にはあまりわからない。すべてを教えてもらう前におばあちゃんが死んでしまって…」


 とちょっとエルは暗い顔をする。


「あっ…。わからないことがわからないままでモヤモヤしてしまっているだけで、寂しいとかそういうのはないわ。だってここのギルドのみんな、とても優しいもの。だから私はぜんぜん寂しくない」


 とエルは明るい顔をする。


「そっか…。それじゃあ、母さんと…バニーさんとの出会いってどんな感じだったんだ?」

「おばあちゃんが死んでしまって2か月後くらいだったかしら…。私は私のできる限りのことをしようと思って家の中にある本、資料をとにかく読み漁っていたの。そして、その時だったわ。バニーさんが私の家に尋ねてきたのは。任務か何かでたまたま私の家の近くに用があったらしいの」

「エルの家ってだいたいどの辺にあるんだ?」

「魔女の森の奥深くにあるところ、ダスピルクエットよ。そこに私たちが守っていたお墓があるの」


 ダスピルクエット、その名前を聞いて俺は一瞬だが悪寒がした。

 なぜかその名前に対して怒りを忘れてはならない、そう思えたのだ。


「ユウ?どうしたの?」

「あっ、いや何でもない。それにしても魔女の森に棲んでいたのか?あそこは危険な場所だろ?」

「うん、なぜか私の住んでいたところ魔獣とかが寄ってこなかったの。理由は…なんとなくだけど、やっぱりあのお墓なのかなって私は思っているわ」

「死んでもなお、強力な魔力があってそれが魔獣を寄せ付けないのかもしれないな。よほど強力な魔力の持ち主だったんだな。…すごいな」

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