セイラを探して2

「これ…見ちゃったこと秘密にしておいた方がいいよな」


 なんとも言えない気持ちになる。

 セイラはきっと、誰にも…特に俺には知られたくなかったことなんだろうな。

 きっとあらかじめ、父さんや母さんには口止めしてあったんだろう。

 体質のことをかわいそうだって思われるの、あいつは人一倍嫌うだろうし。

 ほかの場所を探すとするか。

 部屋にいないとなると…あとは鍛錬場とかか?

 向かってみるが、そこにもセイラはいない。

 出るかわからないが、携帯型通話魔道具テレフォンを使うか。

 セイラの項目を押して、かけてみたが…やっぱりでない。

 あっ、そういえば、セイラの部屋にたくさんの本に紛れて通話魔道具が置かれていたっけ…?

 これじゃあなんのための携帯魔道具かわかんなくなるじゃないか…。

 思い出せ、思い出せ…。

 ほかにセイラの行きそうな場所ってどこだ?

 俺は頭をフル回転させ、セイラの行きそうな場所の心当たりを思い出す。

 そして手当たり次第にその場所に行ってみた。

 やっぱりそこにもいない。

 …残るは最後。

 まさかとは思うが、行くだけ行ってみよう。

 そしてそこにいなかったらまたギルドへ戻ればいい。


 俺の行った場所…そこはセイラが赤ん坊のころに捨てられていた場所だ。

 セイラはこの町で一番星が近いと言われている神聖な木、『聖星の木』の下に捨てられていたそうだ。

 度が過ぎたいたずらさえしなければ、木登りもしてもいいというフレンドリーな木でもある。

 俺はその木に近づく。

 木を見上げると…木の枝の上で寝ているセイラがいた。

 …ほんと、黙ってればきれいな顔してるんだよな。

 実はだが…俺はマジで5歳までセイラのことを女の子だと思っていた時期がある。

 そのことを父さんに相談したら、セイラは男だぞと言われすごいショックを受けたという記憶がある。

 本当に、今思うと恥ずかしすぎて死にそうになってくる。

 この町では男にナンパされるということはないセイラだが…ほかの町に行くと、ナンパのオンパレード。

 そのたびにセイラはぶちギレて、ナンパした相手をボッコボコにしてたっけな…。


「おーい、セイラ…じゃないクロエ!」


 俺はセイラの名前を呼びかける。

 すると、まだ寝ぼけた顔をしているがセイラは目を開ける。


「んあ?ふぁ~あ」


 あくびをしながらセイラは俺のことを見た。

 俺を見たとたん、ゲッ!?とでも言いたそうな顔をする。


「んだよ、くそユウ。何しに来た」


 やっぱり相変わらずの悪態をついてきた。


「母さんがクロエが見当たらないからって言って心配してたから探しに来たんだよ!」

「へいへい、ご苦労なこって」


 そう言ってセイラはソッポを向く。

 そしてまたひと眠りしようとする。


「あと!」


 俺は大声でそう叫ぶ。

 すると寝ようとしていたセイラはびくっとして俺の方を向く。


「あっ、悪い…。あと、俺はクロエに謝りに来たんだ!さっきは…言い過ぎた。ゴメン!」


 俺はそういってセイラに頭を下げる。

 一瞬セイラはきょとんする。

 だけど、思い出したかのように…。


「ああ、あれか。べつに気にしてねえよ。友達いねえのホントだしな」


 と、セイラはどこか寂し気にそう言った。

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