救出成功
俺は強化魔法の力を使い、全力で人攫いを追いかける。
「お前らあああ~‼‼‼待てええええ~‼‼‼‼」
俺がそう叫びながら人攫いたちを追いかけると、人攫いは「ゲゲッ!?」と口に出して驚いている。
「あああああ、兄貴!どうしやしょう!?」
「うううううううう、うろたえてんじゃねえって言ってんだろ!」
いややっぱ、あんたが一番うろたえてるだろとまたツッコミたい気持ちになったがそれは置いといて!
「ぎえ~!?兄貴!『駿足靴』がオーバーヒートしやした!」
「ななななな、なんだって!?」
二人組が急にあたふたし始める。
走るスピードもさっきより遅くなっている。
『駿足靴』から煙が出てる。
雑な改造が祟ったのだろう、オーバーヒートを起こしていた。
この調子ならいける!
「ひぃー!あいつドンドン近づいてきますぜ!?」
子分が兄貴分の人攫いにそう言う。
完全に動きが遅くなってる。
もう『駿足靴』が壊れて使えなくなってしまったのだろう。
「さあ、もう追いついたわけだが…。まだ抵抗する気か?」
俺は人攫いの真後ろを走りながらそう言った。
「くっそ!こいつ、魔導士か!」
兄貴分の人攫いはそう言って魔道具を取り出す。
これも…雑に改造してあるものだろう。
「お前らが攫った子を返してもらおうか。俺らの仲間をさらったこと、後悔させてやる」
俺は魔法『
赤い光を帯びた縄状の魔力物体が人攫いを拘束する。
人攫い二人組は「ぎゃっ!」と言ってその場に倒れた。
「…っと!それよりも袋の中にいる子の容態は!?」
『紅光拘束』は魔力が少ない人にはほどくのはなかなか難しい。
しばらくは放っておいても平気なはずだ。
俺は急いで大袋の中にいる人の容態を確かめる。
袋の中を俺は覗く。
すると中には目を回した女の子がいた。
母さんの言う通り、その女の子の容姿は銀髪にピンク色の瞳を持った子だった。
しばらくすると、その女の子の意識が戻る。
その子は俺を見るなり少しおびえる。
「あなたも人攫いの仲間なの…?」
女の子の体はプルプルと震えていた。
「違う。俺は人攫いなんかじゃない。この紋章に見覚えはないか?」
そう言って俺は腕章の紋章を見せる。
「あ、『雪花の白兎』の団員さん…?」
「そうだ。人攫いはこの通り、俺が拘束した。あとは通報するだけだ」
「助けてくれて…ありがとう」
銀髪の少女はにこりと笑って俺に礼を言った。
だけどそのあと、少女の方から「ぐぅ~」という音が聞こえる。
少女が顔を真っ赤にしている限り、彼女の腹の虫の音なのだろう。
「これ、さっき市場でもらったんだ。食べるか?」
俺は先程八百屋でもらったリンゴを少女に渡す。
すると少女は嬉しそうにそれをもらう。
「何から何まで…ありがとう」
「いいんだよ。市場のおばさんが新入りの子にどうぞってくれたやつだからな。お礼はおばさんに言ってくれ」
少女はこくりとうなずく。
「ところであんた名前は?俺はユウ・アカツキだ」
俺がそう言うと少女はリンゴを食べながらだがこういった。
「私、エルミラ・アンジェラ」
名乗った後、「エルって呼んで」と恥ずかしそうに言う。
「私、自分の故郷から出るの初めてで…。お城の近くで待ってたらこんな目に遭って…」
とエルはまた少し体をプルプル震えさせる。
初めて故郷を出て誘拐されたんだ、無理はない。
でもわかってほしい。
この王国はそんな人だけじゃないってことを。
「怖い思いをさせて…悪かったな」
俺がそう言うとエルはきょとんとする。
「どうしてあなたが謝るの?あなたは悪いことしてないわ」
「この国はこんな非道なやつらであふれてるわけじゃない。優しい人たちの方が多いんだ。それだけはわかってほしくて」
「それは十分わかっているわ。バニーさん、とってもいい人だったもの。あの人が住んでいるところなら私も安心。あの人に育てられたあなたもこんなにも優しい。だから大丈夫」
またエルは俺にそう微笑みかける。
その笑みをみて俺は、なんて強い少女なんだと思った。
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