魔女の森

 『魔女の森』。

 森…とは言っているがある意味一種の国のようなものだ。

 川もあるし、谷も、山もある。

 森と一言で片づけるのは困難なほどの広大な場所。

 そして、危険も多い。

 魔物が住み着いているからだ。

 だが、国々を行くにはこの魔女の森を通らなければいけない。

 …まあそれは俺たち一般市民がという場合だ。

 王族貴族がほかの国へ行くには魔導飛空船と呼ばれる乗り物に乗っていく。

 森の入り口付近へだいぶ近づいた。

 すると大きな袋を担いでいる怪しげな男性二人組が前に。

 何か話しているようだ。

 魔道具『コソコソバナシキコエルンダー』を使ってどんな内容なのか聞いてみることにする。

 …にしてもこの魔道具の名前、安直すぎるんだよなぁ。

 もし人攫いじゃなかったら後で謝ろう、プライベートな話かもしれないし。

 しばらく様子を見てみることにする。


「兄貴、いいもん見つけられてよかったっすね!」

「ああ、そうだな!これで俺らしばらくは食い物に困らねぇ!」



 うーん、怪しいけど…。

 これだけで人攫いで決めつけるのはよくない。

 もう少し、様子をうかがう。

 うん?なんかあの袋、動いてるような気が…。


「おい、睡眠薬の効果切れかかってんじゃねえか?」

「やっぱり安もんじゃダメっすね」

「お前!安もん使ったのか!人攫いの仕事するときはちゃんとしたの使えっていつも言ってんだろ?!逃げられでもしたらどうすんだよ!」

「ひー!す、すんません~!」

「今回のは珍しいもんだからな!銀髪にピンク色の瞳を持った人種なんて早々いねぇ!絶対に逃がすわけにはいかねえんだよ!」


 …ってことは、あの袋の中に入ってるのは新入りか!

 ぐずぐずしちゃいられない、早く助けに行かないと!

 俺は急いで二人組のいるところまで走る。


「おいおまえら!人攫いだな!」


 俺の存在に気付いて二人組は「ひっ!」と小さな悲鳴を上げる。


「やばいっすよ兄貴!見つかっちゃいましたぜ!?」

「うううう、うろたえんな!」


 兄貴分のお前が一番うろたえてるじゃんというツッコミをしたいがそれはさておき…!


「急いで森の中まで向かうぞ!仲間の魔導車くるまを使えばこっちのもんだ!」

「はい!兄貴!」


 二人組は走って魔女の森の中へ行こうとする。

 俺も走っているがなかなか追いつかない。

 あの二人には魔力がそんなに感じられない。

 きっと魔道具『駿足靴ソニックシューズ』を大幅に改造したものを使っているのかもしれない。

 生身じゃ追い付かないなら…!


身体強化魔法フィジカルブースト…モード・フット!」


 グンッ!と俺の足が軽くなるのを感じる。

 改造魔道具は威力こそ高くなるがその分、持久力はそれほどない。

 だからきっと追いつくはずだ!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る