第一章:新しい朝

ギルド

 俺は目が覚める。

 長い夢を見たような気がする。

 それにまるで現実味のある夢だった。

 目が覚めてすぐ、体が震えているのと俺の体が汗でびっしょりになっていることがわかった。


「なんだ、夢か…。よかった…」


 朝日を見れてこんなにうれしいと思えるなんて自分でも変だと思ってしまう。

 ほっと息を吐く。

 しばらくするとコンコンと俺の部屋の扉をノックする音が。


「ユウ?起きてる?」


 起こしに来たのだろうか、俺の幼馴染であるサクラ・コノエの声が聞こえた。


「ああ、ちょうど起きた」

「そう、早く仕度して!新入りの歓迎パーティやるから今日は早めにギルドに集合なのよ?じゃあね、母さんに怒られても知らないから~♪」


 とサクラの言ったことに俺はバッと飛び起きる。

 そうだ、そうだった!

 夢にうなされてる場合じゃなかった!

 早くしないとギルドマスターに…母さんに殺される!

 それに恐怖し、俺は急いで着替えなりなんなりをした。

 サクラはそんなの知りませんとでもいうように先にギルドの方へ行ってしまった。

 俺も急がないと!








「やーいバカ、遅れてやんの」

「はぁ!?」


 急いできて、早々に嫌味を言ってくるやつが。

 その正体はセイラ・クロエ。

 こいつも俺の幼馴染。

 名前も見た目女の子のようだが、こいつは男だ。

 可愛い見た目をしているが、口や性格はたぶん物凄く悪い。


「セイラ、バカは余計だろ」


 とセイラの首根っこをつかむのは俺たちにとっての父さん的存在兼ギルド副長のラビ・ヴィンセントさん。


「オヤジ!セイラって呼ぶなって何回も言ってるだろ?!」


 なんとなく察しているとは思うが、俺たちには血のつながりはない。

 俺やセイラ、サクラは赤ん坊の頃実の親に捨てられた過去を持つ。

 同じ年に偶然3人も赤ん坊をこの『雪花の白兎』というギルドの人たちが見つけ、そして育ててくれた。

 そして、捨てられた子はギルドのみんなで名前を付けることになっている。

 それでセイラはみんなに女の子に間違えられて、女の子のような名前を付けられてしまったのだ。

 それ以来、セイラはセイラと呼ばれるのをすごく嫌がる。

 苗字のクロエと呼べと言ってくるのだ。

 俺からしたらどっちも女の子みたいな名前だと思うんだが…。

 むしろセイラの方がかっこいいと思う。

 価値観の違いだろうな、こういうのって。


「ユウちゃん」


 と俺を呼ぶ声が。

 俺たちのギルドマスター、バニー・フルールさんだ。

 俺たちは彼女を母さんと呼んでいる。


「ユウちゃん、あなた寝坊したでしょ?」

「はい、すみません…」

「まあ、反省してるし今日はとくにお咎めなしよ。私、ちょっと用事が入っちゃてね…新入りの子迎えに行くはずだったんだけど時間通りにいけるかどうかわかんないのよ。だから、かわりにその子を迎えに行ってほしいの。今手が空いてるのユウちゃんだけだし」


 俺は周りを見てみる。

 サクラは料理、セイラは掃除、父さんは力仕事…そのほかみんな忙しそうだ。


「わかった。その子の特徴とかって?」

「見た目ですぐわかると思うわ。銀髪に桃色の目をした女の子なんだけど、自分の故郷から出たことない子だから優しく接してあげてね。『雪花の白兎』の団員だっていったら安心すると思うから。じゃあ、よろしくね」

「おう」


 母さんはそう言ってギルドを出て行く。

 さて、俺も行くか。


「おいユウ、またサボりかよ」


 とセイラが茶々を入れる。


「ちげぇよ!新入り迎えに行くんだよ!」

「はっ!どうだかな!…いてっ!?なにすんだよ、このくそオヤジ!」


 と父さんがセイラの頭に拳骨をくらわす。

 それを見て俺は少しスッキリする。


「セイラ…昔はあんなにかわいかったのに…。どうしてこう曲がった子になっちゃったんだ…」


 と涙目になる父さん。

 そういえば父さんに小さい頃、一番懐いていたのはセイラだったなと思い出す。

 そう思うと俺は父さんに同情した。



「ユウ、新入り向かいに行くんだろ?行っておいで」

「ああ、行ってくる」

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