虚の空間にて

 謎の少年の力によって俺は不思議な空間の中にいる。


「ここは『虚の空間』」

「『虚の空間』…?」

「なにもかもあやふやな空間さ。なんだってできる。どこにだって行ける」


 それじゃあ、今すぐ戻って奴を倒さなければ!

 そう思い、俺は戻ろうとする。

 …が、少年はまた俺を止める。


「キミ、また戻ろうとしたね?ハハッ、この光景何回も見たよ。わかってるよね?今のキミではあいつにかなわないって」


 少年のその言葉に俺はまた何も言えなくなった。

 少年の言ったことは事実だ。

 ローレ・ディ・ダスピルクエット、この世界最悪の魔女。

 おとぎ話だけの存在だと思っていた。

 それが復活するなんて思ってもみなかった。

 そんなやつと俺は…いや俺たちは戦っていたのだが手も足も出なかった。

 あれはもう、戦いにすらなってないだろう。

 俺の仲間は一方的に嬲り殺されていったのだ。

 仲間に対する無念の思いもあるが、今はこの少年のことだ。

 突如として現れたこの少年、俺のことを知っている風だったが、いったい何者なのか。

 物凄い魔力を持っているからただ者ではないということはわかる。


「ところであんたは何者なんだ?俺のこと知ってるような言い方だったが…?」

「ぼくはロキ。ロキ・ウィムフィックル」


 名前は案外すんなりと教えてくれた。

 だが、俺とどういう関係なのか、知りたいのはそれだ。


「名前はわかった。けど俺が聞きたいのはあんたは、俺とどういう関係なのかだ」

ローレあいつを倒すことを志している者同士かな。現段階で教えられることと言えば。…さあ、楽しいおしゃべりの時間はこれで終わり。ここで終わりだ」


 ロキはにっこりとそう言う。

 まだ聞きたいことがたくさんあるのにここで終わりってどういうことだ?


「次にキミが目を覚ますときにはすべてが元に戻ってる。この空間のことを忘れる。でも忘れないで、さっきのことはまた繰り返し起きる。それを防ぐにはアカツキの民であるキミの力が必要だ。強くなれ、今よりもさらに」


 ロキはまたわけのわからないことを言う。

 言いたいことも言えぬまま、ロキは俺の背中を強く押す。


「じゃあね、『次の巡』へ行っておいで、ユウ・アカツキ!」



 俺はなにか強い力によって引き寄せられる。

 ロキのもとへ戻ろうとしたが、引き寄せられる力によってそれはふさがれた。

 俺は、まばゆい光に体を包み込まれた。

 そのあとのことは覚えていない。


 

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