第12話 笑顔が消えた日

決して焦っているわけではない。

むしろ充実感があり社長をはじめ、職場の仲間達は僕の回復を待っていてくれた。

喜んでいてくれる。それなのに……


詩織は僕にいつも「もっとゆっくり」「飛ばし過ぎ」とそればかり。時には「なんで自分をもっと大切にしないの?!」と感情的になる事もあった。そんな詩織の態度に僕はずっとイライラさせられていた。

そんな時、詩織と同僚の井上が言い争っているのを目にしたが、僕は仕事に集中することにしてそれを無視した。その日の帰りに井上に言い争いの内容を聞いた。

井上は「忙しくなってきて人手が必要だからレンの力が欲しい」と詩織に言ったが、「レンに負担をかけないようにレン以外のメンバーで頑張ってよ!そのためなら私も手伝うから。だからレンにはそのことを言わないで!」と口止めしていたらしいのだ。

それを聞いた途端、僕の中で何かが切れてしまった……


その夜僕は詩織に電話をした。

「今日、会社で井上と何を言い合ってたの?せっかくみんなが僕を必要としてくれているのに、なんで邪魔するようなことするのかな!!」

すると詩織は「いつも言ってるよね!レンは気づいていないだけで無理しすぎなの!みんなもレンに頼りきりだった頃から変わってきてるのに、どうしてレンが無理をしてみんなに楽をさせるの?おかしくない?」

僕はついに言ってしまった。

「余計なお世話なんだよ!僕の仕事の邪魔をするな!」

詩織は「もういい!知らない、もう」と言うと一方的に電話は切れた。


次の日から詩織は僕の仕事について一切の口出しをしなくなった。

そしてその日から詩織の笑顔を見ることはなくなったのだった。


一か月後。

詩織は社長に僕の仕事量を減らすように要求した。

社長から要求を断られた詩織は【退職願】を出した。

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