第7話 うつ病

僕は過呼吸を継続して起こすようになり、その頻度は高くなっていった。

仕事中の場合は気付いてくれる人がいるが、深刻だったのは通勤での運転中に過呼吸の症状が出てしまうことだ。その時は車を端に停めて落ち着くのを待つのだが、症状が表れている時に体が硬直してしまうことがある。

そうなってしまうとハンドルから手が離せなくなったり、掴んだタオルが手から離れなくなったりと日常生活に支障が出るまでに悪化していった。


会社のみんなに迷惑をかけている罪悪感が僕を更に追い詰め、客観的に見ても仕事を続ける事が困難であるのは明白であった。

仕事中も会社から帰る時も詩織に頼っていたのだが、僕は詩織よりも、同僚や上司に申し訳ないと思っていた。詩織には甘え切っていた。


詩織は僕のために、いつもより1時間早く会社に行き、自分の仕事をこなし、僕が通勤時に具合が悪くなった時にいつでも迎えに行けるよう準備を整え、仕事中に具合が悪くなったときは、僕の仕事の段取りを手伝ってくれた。

帰りも、僕が駐車場から車を出すまで見守って、僕より先に帰ることはなかった。


詩織は僕が必ず良くなると信じ、その時まで自分がフォローすると覚悟を決めているように感じられた。


そんな状態が続いたある日、僕は会社の社長に呼ばれた。


「高木、お前一度病院に行ってこい。」


あぁ、ついに戦力外通告だ…。


「おまえと青山が付き合っているのは皆知っているが、このままでは二人とも具合が悪くなる。もし病院でなんらかの心の病気だと診断されたなら、思い切って休め。俺はお前を認めているし、信じているから」


…… 辞めさせるつもりだ。僕が病気だからこれ以上いても何の役にも立たないから。迷惑なだけだからな。



そして後日病院に行き診断を受けた。診断名は【うつ病】だった。


僕の頭の中に健二がよぎった。

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