第5話 異変
3月23日
健二の月命日までの間、千里と7カ月になる
娘と過ごす為に、僕は健二の家に行けるだけ足を運んだ。
少しでも淋しく辛い時間をなくさないといけない。僕にできることはこれしかないのだから。
毎日のルーティーンだった詩織とのやりとりは、千里とその娘と過ごす時間に変わった。
そんな僕に、詩織はいつもと変わらず接してくれていた。
僕には詩織がいるけど、千里には誰もいない。
だから僕が支えないといけない。そんな僕を詩織はわかってくれているんだ。
僕は千里のことを1番に考えなくてはいけない。
こうして、詩織とのやりとりも会う時間も僕はないがしろにしていった。
千里まで健二のようになってしまったら…
健二のように死のうとしてしまったら…
僕は千里のことが心配で、だから健二の家に時間のある限り行っていた。
そんなある日、詩織は僕に
「レンのしてる事に何の意味があるの?」
と言ってきた。
……は? 何の意味?!
「健二の家族との関係を知らない詩織には分からないよ!おまえには優しさがないのかよ!」
信じられなかった。何でそんなことが言えるのか。詩織の相手をする時間が減ったから怒っているのか?そんな自分本位な人間だったのか?僕のことを理解していると思っていた詩織が、そんな薄情な人間だったとは……もういい。
そうして相変わらず会社と健二の家を行き来していた僕だが、なぜか仕事でミスを連発するようになっていった。
得意先訪問のダブルブッキングをし、提出すべき資料は忘れるという、いつもの僕では信じられないミスを犯した。その大きなミスをカバーしていこうとすればするほど、またさらにミスを繰り返すようになり、僕の仕事に対する自信は奪われていった。
いったいどうしてしまったんだろう?
これ以上、他人に迷惑を掛けないようにしなくてはいけない。
そういえば最近、寝る時間が足りてなかったかもしれない。いつから寝不足なんだろう。まあいいや!とりあえず今日は早く寝よう。
普段の僕は、24時前に寝ることはなかったが、この日は22時前にベッドに横になった。
しかしこの日に限って午前1時を過ぎ、2時を過ぎても眠れなかった。結局、5時前くらいだっただろうか。ずっと眠れずにいた。
次の日も、その次の日もそうだった。
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