第5話 感染3日目

「病院に行った方がいいんじゃない?」

「それが幸太郎が降りてくる前に音声認識で病院にも救急にも電話をかけてみたんだけどどこもつながらないの。それどころか親戚に電話かけてみたらどの人も母さんたちと同じ症状なのよ。」

この時になると母も苛立ちながら話すようになってきた。この二日間で起こった話を母から聞いているとかなり多くの人がこの症状になっているのかもしれないと思った。だが実際は幸太郎の想像をはるかに超える全人類の99%がこの症状を発症した。この時には既にすべての社会機能は麻痺しているのである。

母と話した後、幸太郎は隣近所の家を何件か訪れてみた。最初はどの家もインターホンを鳴らしても出てきてくれなかったが、斜向かいの家の中年の夫妻が出てきてくれた。話を聞くと幸太郎の両親と同じ症状であるらしかった。夫妻は電話で知り合い数人に連絡を取ってみたが皆同じだと言う。夫妻はなんとか他の人ともコミュニケーションを取りたいと思っているが目が見えない以上迂闊に外に出れないし、情報を発信する媒体もすべて機能していないのでどうにもならないと言う。この話を聞いてかなりの人に症状が出ていることを確信した。

そう思った瞬間彼の背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

「優子、、」彼は恋人に連絡を取るためにすぐに自分の部屋に戻った。

幸太郎は焦って震える手で電話をかける。

が、コール音だけでいくら待ってもつながらない。

何度かけてもつながらない。

読めないかもしれないがメッセージを送ってみてすぐに優子の部屋に行こうと支度を始めたその時、幸太郎の端末が鳴る。

彼女からのメッセージであった。

そこには

とりあえず自分は大丈夫であるということ、今日のところはとりあえず家にいて外出は控えた方がいいということが書いてあった。(幸太郎から来た文章は読めないが書いて送ることは音声認識ソフトでできるようだ。)心配だからすぐに行きたかったが、幸太郎は両親のことを見てあげててほしいということがメッセージの最後にあった。幸太郎は優子が自分の部屋の戸締りはきちんとできていると言うので、しぶしぶ納得した。優子の所在がしれて急に安心できたのか、急に眠気が来た。このまま眠ってはもう二度と起きれないんじゃないかと思うくらい強烈な眠気だった。

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