第4話 感染3日目
「落ち着いて聞いてね、、、」震える母の声
「幸太郎は寝込んでたから知らなかったと思うけど、ここ二日間くらい目の調子が悪かったの。それで今日起きたら父さんも母さんも目が見えなくなっていたの」
「それとね耳もおかしいの。よく聞こえないとかそういうわけじゃないの。母さんには幸太郎の声も父さんの声も男の人の声じゃなくて知らない女の人の声に聞こえるの」
これを聞いた時、幸太郎はすぐには理解できなかった。
すると今まで黙っていた父が話し始めた。
「父さんの耳もおかしいんだ。母さんの声が知らない男の人の声に聞こえるんだ。ただ母さんの聞こえ方と違うのは幸太郎の声は父さんには知らない男の人の声に聞こえるんだ。」
幸太郎は何が何だかわからなかった。
「僕の声は父さんには知らない男の人の声に聞こえて、母さんには知らない女の人の声に聞こえる、、、」
「父さんにとっては母さんの声が知らない男の人の声のように聞こえて
母さんにとっては父さんお声が知らない女の人の声に聞こえる、、、、、」
半ば放心状態でつぶやきながらソファーに倒れこむように腰を下ろした。
二人の話によると今朝目覚めた時に二人は何も見えないことに気がつきお互いの名前を呼びあったそうだ。ところがお互いを呼び合う声は聞いたこともない他人の声であり尚且つ性別が同性なのだ。お互いが第一声を聞いた時は家に見ず知らずの者が侵入したと思ったらしい。
父にとっては男性の声で「あなたどこ?」と聞こえるのに
母にとっては女性の声で「かおりどこにいるんだ?」と聞こえている。
二人は目の見えない状態でいろんなことを言葉だけで確認し合ったらしい。
それでようやくお互いを認識し合い状況を把握したそうだ。
もし自分が両親のような状況になっていたと想像したらパニックに陥っていたと思う。幸太郎は言葉だけで確認し合えた二人の関係を見て心強く感じた。
二人だけで一緒にこれまで歩んで来ることで共有してきた感情、思い出、お互いだけが知る秘密、その総和がお互いを認識し合う絆となった。
「テレビ付けっ放しだね、、、」
「そうなの他の人の声はどう聞こえるのかなと思ってテレビつけてみたけど、どこもやってないの」
テレビ画面はどのチャンネルも砂嵐の状態で合った。
砂嵐の映像とその時のザラザラする音は3人の気持ちをさらに嫌な気分にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます