第23話 武道家黒澤明 ③面白くなければ映画ではない
武道家(サムライ)とはいえ、黒澤明という男は決して、日本の公務員のような面白みのない人間ではなかった。
下町に育ち、紙芝居を見て、寄席で落語や漫談を聴き、大道芸人、見せ物小屋、浪曲・講談、そして無声映画を娯楽として育った黒澤は、人生の面白みや悲哀、人情の機微を知る「粋な男」であり、同時にまた、武道で鍛えた「体育会系・バンカラの気風」を持っていた。
彼の映画とは、どんなシリアスなテーマを持つ暗いムードの内容であっても、どこかに黒澤らしい「こだわり」を見せている。それはまた、静的でありながらダイナミック、攻撃的でありながら慎重な画面から醸しだされる「粋」であった。
だから彼の映画は、醜い社会の現実やどろどろとした人間の真実を描きながら、一流のアクションやサスペンス、楽しい娯楽映画となり、あるいは、透明な芸術的感性にあふれている。
いろいろな隠し味を持つ黒澤映画を楽しむには、「静的な躍動感」という面白みについても知っておくべきだろう。
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