落下速度

落下秒数

えぇっと、、、高さはムサシだっけな？

おおっ、出てきた。

17.444008643493秒。このスカイツリーから飛び降りて地面と接触する時間。

まぁこの最上階でも600mだからもっと短いかもしれない。

君が怖いことを言ったけど僕も気になったから調べたんだけど、、、。

君は僕のスマホを覗き込んで頬を膨らませた。

え？48kgじゃないの？42kg？誤差の範囲だよ。育ち盛りのJKだろ？

ん？17秒で充分？何が？

え？電話？発信者は、、、君？いいから出ろって？分かったよ。

同時にどこかで爆発音が鳴り響く。丁度反対側の場所だ。

電話なんてしてる場合じゃない。でも切りはしなかった。

君が爆発音のする方へ向かう。平日、学校をサボって東京に来ただけあって人が少ない。

君は、、、爆発で空いた窓から、、、飛び降りた。

寸前、僕を見て動かした口の形はじゃあね、だった。

窓から生で見下ろす押上げは君が大きく写った。

スマホを耳に当てる。君と繋がっていたい。

君の声は風切り音で聞き取り辛かった。

言葉は恨み文句だった。

僕の彼女と言うことで女子から虐められて、それに気付いてくれない僕も恨んでいた。

途中で言うことが変わった。

追い掛けて飛び降りて欲しいとも言われた。

17秒って長いねとも言った。

そして、、、風切り音が最高潮になったとき、君は言ったんだ。

好きだと。

不快な音がスマホから流れる。

手からスマホが滑り落ちた。

浅草の町へ落ちていく。飛び降りようと思ったら一歩踏み出せばできた。

でも足は出ない。動かない。

周りの人に掴まれて僕は窓から離れさせられた。君といたい。少しでも近くにいたい。

掴む手を振り離し、窓へ走る。だが、勢いが付きすぎたみたいだ。

そのまま窓の外へ落ちる。

心が軽くなった。落下すると抵抗で下からの風が強くなる。その風に嫌なものを取り払われるような気がした。

涙が空へ浮かぶ。17秒は長かった。

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少女は泣いていた。男の死体に突っ伏して泣いていた。