ある天幕で

 私は私が解からないままここに来た。


 目の前では彼女が眠っている。


 顔を見るのは初めてで、ああ、化け物じゃなかったんだって知った。


 悲しみと憎しみと、よく分からない感情と。


 消えたと思ったものが、実は止まっていただけだったのは、そう、びっくりした。


 びっくりし過ぎて、麻痺してしまった。


 今が夜で良かった。


 ここには私と彼女しかいない、訳ではないが、私の顔を見る事ができる場所からは、月光が差し込んでる。


 もし昼のギラギラとした太陽の下だったなら。

 確実に刃を彼女の心臓に突き立てていただろう。

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