第6話

美麗が光一の腕を掴む 



美麗の吐息が漏れた


二人は 自然に唇を離す



『ありがとう 私って意地張りだから プライドが高そうに見えるけど どこにでもいる普通の女の子よ

ファーストキスって思ったより ドキドキするものなのね 胸が破裂するかと思った』


「僕もですよ 憧れの美麗さんですから 焼肉焼いていいですか」


『もう一度キスして お願い』


二人のシルエットがもう一度ひとつになる 光一は美麗を抱きしめた 美麗も光一の腰に手を回す


長いキスだった 


キスが終わると 光一は生ビールを勢い良く飲んだ


美麗のリップの香りが 口元をかすめる


やがて二人で焼肉を焼きながら 小さい頃の話から話が弾んだ


 

『私って子役も含めると20年以上 芸能界にいるわよ 光一はどうして役者を選んだの?』


「夢です 本当は有名になりかったのかな 女の子にもてたかったし 理由が不純ですね」


『光一は 普通にしてても女の子できたわよ 格好良すぎると かえって声がかけらないものよ』


「そうですか 恋愛は運命ですよね 何かそんな気がします」


『私には 時めく出逢いが無かったの 24歳でファーストキスしたのよ おかしいわよね」


「意外でした 芸能界って厳しいんですね」


『考えによってわね でも同じ事務所どうしだから マスコミも案外騒がないわよ 大事にしてね』


「はい ありがとうございます 明日のラブシーン 頑張りましょうね」


『光一 これ私のアドレス 登録して しばらくは こういう形で交際しましょうね』


「はい」



二人の愛が始まった





その翌日のラブシーンが始まった


監督の遠藤も人間だ 正直焦っていた


だが この世に生れし最高の男と女のラブシーンを撮れることに喜びも感じていた


本番が始まった 


友香役の美麗と朗役の光一が 結婚を約束するシーンだった


さすがに関係者達も 息を飲む 世紀の一瞬がスタートする 「5、4、3、2、1」カン



「友香さん 君と拓也君の為に 俺の人生を捧げる 結婚しよう」


『朗さん・・・ 私っていけない女かも・・・』


「天国の真人さんも きっと喜んでくれてるはずさ 生涯大事にするよ」


『ありがとう うう』



朗が友香を抱きしめる


月の灯りをバックに 二人の唇が重なった


まさに芸術だった



思わず 監督の遠藤も関係者も涙するほどの演技だった



「カ~~ット!」


「おつかれさまです」


「良し 今日の撮影はここまで 二人とも最高の演技だったぞ」



そして番組宣伝効果もあったのだろうか マスコミも〔雨のち晴れ〕の話題を大々的に報道した


初回の放送で 何と視聴率を35%を超えた


この数字は 異例中の異例だ



毎回つづく このドラマで大きな社会現象まで起こった


それは クリスマスイブに愛を告白したいという 男女が急増したからだ



〔雨のち晴れ〕の最終回も感動と涙で締めくくられ 浅野光一の名前は 国際的にも有名になった








12月24日の土曜日のイブ


事務所関係者で凜尚苑で盛大にパーティーが行われた


光一も美麗も仲良く参加した



この日 初めて東京に粉雪が舞った



ーーー つづく ーーー

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