第5話

撮影は 順調に続いた



光一は 台本と原作の両方を寝る暇も惜しまず読み 夜な夜なマンションに帰ると演技の練習をする


まさに役者としての最高の演技をする為に 顔作りや声の出し方まで研究していた


やがて疲れがくると ベットに横になり朝を迎える



玄関のドアの鍵が開く


マネージャーの恵梨香が光一を起こしに来た



『時間よ 光一君 また怒られるわよ 早く起きて!!』


「う~ん 今 シャワー浴びてくる すぐ準備するよ」


『遅刻はご法度よ まだ光一は新人みたいなものなんだからね』


「わかってる あ~ 」


シャワーを浴び 赤坂のテレビ局に向かう


スタジオに入ると ピーンとした一種独特の雰囲気と陽気な雰囲気が入り混じる


光一は 挨拶をすると楽屋に向かった


ちょうど同じ頃 五十嵐美麗も現れた



『光一君 おはよう 今日撮影終わったら食事いっしょにどお? 話したいことがあるんだけど』


「あ 美麗さん おはようございます いいですね で どうしましょ?」


『山田の車で 恵梨香も連れて4人で凜尚苑へ行きましょう 同じ事務所だし マスコミも騒がないわ』


「はい そういえば食事初めてですね 嬉しいです じゃあ今日もよろしくお願いします」



この日の撮影は 友香役を演じる美麗の撮影の方が多かった


美麗の演技には斬れがある まさに女優として生まれてきたかのような華麗な演技に 皆 感動だった


おかげで撮影も いつもより早めに終了した


恵梨香は すでに車を事務所に戻し 光一の帰りを待っていた 光一がラフな格好で現れる


美麗も撮影用の化粧を落とすと楽屋から現れ 山田に荷物を渡す


同じ事務所のメンバーが4人揃った でもこれは異例のことでもある


山田の車に 4人が乗った 助手席には恵梨香が座った


残暑が厳しい



凜尚苑に着くと 美麗は部屋を案内する係りに ふたつの個室を用意をするように告げた


山田と恵梨香は別の部屋に


美麗と光一が 奥の座敷の個室部屋に移動する


美麗が振り返ると 山田と恵梨香に険しい顔で語りかけた


『今夜のことは秘密よ 今回の作品で大事なことを私 光一に確認するだけだから 二人は仲良くして  食事でもしてて』


山田と恵梨香が強面な顔で頷く



二組に別れ別々の部屋に入った



『光一 歯磨いて来て 歯ブラシセットくらい持ってるでしょ 今すぐに 食事はその後よ』


「歯ですか? わかりました トイレ行ってきます」


光一は 首を傾げるとそのまま トイレへ向かい 歯を念入りに磨いた


座敷の個室部屋に戻ると 大きなビールジョッキで すでに美麗は生ビールを飲んでいた



『光一 この時期の生って美味しいわね 早く飲みたいでしょ』


「そうですね 喉がカラカラです」


『今から私の言うこと馬鹿にしないで聞いてね 実は 私 異性とキスしたことないの まじよ』


「え!? でも明日ラブシーンの撮影ありますよ」


『だから ここで私のファーストキスをもらって 演技じゃなくて 男として』


「って 意味が・・・」


『私 好きな人にしかからだを触れさせたくないの 私のこと嫌い?』


「大事な商品だと聞かせれています」


『それは事務所の戯言よ 私は心の通う女なの 3年前に光一とここですれ違った時から 好きなのかも

 しれない 私の目を見て 嘘じゃないって言ってるでしょ』


「わかりました 美麗さんと俺は これからつきあうんですね」


『そういうこと 今回の撮影も光一だからOKしたのよ  ね キスしよう 心臓が破裂しそう』



光一は 焦った


まさか あの憧れの大女優 五十嵐美麗の突然の愛の告白に・・・嫌とわ言えなかった


光一が美麗の肩をそっと抱く 二人の唇が重なった


美麗の肩が小刻みに震えている



ふたつのシルエットがひとつになる



美麗の遅咲きのファーストキスが 光一に奪われた



眩い光りの中 美麗の香水の匂いが部屋に香る



ーーー つづく ーーー




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