第4話

秋の新ドラマのキャスティングが各局決まった



その中でも 浅野光一と五十嵐美麗の共演が実現したことが 多くのマスコミに報道され話題を呼んだ


しかも〔雨のち晴れ〕は 今 とても売れてる小説でもある


作者の 白河神司の衝撃の恋愛小説で まさに涙無くして語れない作品だ



ストーリーは 友香(美麗役)が大学を卒業後 交際していた真人の子を宿すが 真人は 


その事実を知った夜に 交通事故で亡くなる

トラックを運転していて 事故を起こした 朗(光一役)が友香の為に 必死に罪を償おうと努力する

友香はやがて 私生児を生む だが朗の優しさと愛情にだんだん恋心を抱いていく

やがて二人の愛が実り 子供拓也の為に 二人は結婚するのだが 友香が乳癌で亡くなる

まだ2歳の拓也を抱きしめ 友香の為に新しい朗の人生が始まる

友香と朗の悲しいラブストリーだ



この日 クランインした日に光一は美麗に挨拶に向かった



「失礼します 浅野です 撮影よろしくお願いします これつまらないものですが差し入れです」


『ありがとう 同じ事務所でも会話なんてなかったもんね でもよく主役になれたね 頑張ったんだね』


「これも回りの皆さんのおかげです 特に美麗さんには 勉強させていただきました」


『勉強なんて 光一君の努力よ それに君 意外と素直じゃない いいことよ』


「ありがとうございます では 失礼します」


『ちょっと待って お茶していきなさいよ あと1時間あるわ』


「はい すごい余裕ですね 僕なんて緊張しっぱなしで」


『ウーロン茶でいいかしら はいどうぞ』


「いただきます」


『どお? 売れてきた感想は?』


「正直 自由に行動できなくて ショックですね まるで鎖に繋がれているようです」


『私もよ 恋のひとつもできないわ 仕事が恋人なんて ふふ 頭が狂ってるわよ』


「美麗さんは 16歳からですもんね この世界」


『そう もう8年よ 恋も知らないのに 恋を演じるの それっておかしくない? ははは』


「僕も彼女なんていないまま 芸能界に入りました 恋には憧れますよ」


『マネージャーの恵梨香と仲いいじゃない それだけでも羨ましいわ』


「恵梨香さんには よくしてもらってます 何かいいお姉さんって感じだけど」


『それだけでも羨ましいわ 私は孤独よ まさに籠の中の小鳥だわ』


「芸能界って怖い世界ですよね 売れなきゃ終わりだし・・・」


『でも光一君には 未来を感じるわ パッションかな』


「あ もうこんな時間ですね じゃあ僕行きます 頑張ります よろしくお願いします」



いよいよクランクインをした


朗役を演じる光一の日常生活の撮影からだった


たった5分間の演技に すかさず遠藤から罵声を浴びる



「バカヤロー!! 光一 お前あの本 何回読んだ?」


「2回です」


「朗の心掴んでね~な 朗ってのわな 純粋で素朴な人間なんだよ もっと荷物を大事に 心を掴め!」


「はい」


「もう一度だ 本番!!」


「5、4、3、2、1 」 カン





この日のクランクインで早速 遠藤の容赦ない演技指導が続く


光一の目が キラキラ輝きだす


回りのスタッフが 息を飲みながら 光一の演技に集中する



ライトの光りだけが 煌々と唸るように照らしだす



ーーー つづく ーーー




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