第50話「世界の敵(前編)」
「と言う訳で。今まで様々な動植物について教えてきたが、今年からはいよいよ魔獣などの危険生物について教えていく事となる。まずは一番有名で危険な所から開始する。準備はいいな?」
『はい!』
六限目。戦闘訓練の時間。
豊満なバストがプルンと勢いよく上下に弾む。
眼福眼福。実に刺激的である。
本日は座学。
稀にこういった感じで、戦闘訓練の代わりに動植物についてのサバイバル知識などを学ぶ時間になる事があるのだ。
そんな時はなんというか、戦闘訓練というよりもレンジャー講習に近い時間になる。
ちなみに、このレムリアースには前世地球にあったような動植物は一切存在しない。
レタスやキャベツ、苺にメロン、人参にほうれん草と言った野菜や果物はもちろん、兎に猫、犬に狐、熊に猪、豚に牛といった普通の動物なんかは一切存在しないようなのだ。
代わりに、どこか似たようなちょっと違った別の物は存在する。
例えば
形は若干似ているものも稀にあるが、やっぱり香りや味は見た目とちょっと違う。味もどこか何かに似てはいるのだけれど、濃厚でなんというか、とにかく美味い。
嫌な雑味やエグ味は一切無く、好みの別れる独特の匂いみたいなものも少ない。
苦味もほとんど無いものが多い。
果実という程ではないが甘みや酸味があったり、野菜特有の嫌な味がほとんど無かったりするのだ。
そう、美味さだけが際立っているというか……。
どれも、もし普通のレタスやトマトと同じ値段でデパートで売ってたりしたものなら爆売れ間違い無しって感じな異次元良質の野菜達だ。
他にも、安納芋よりもトロットロで絡みつくようなクリーミーさが特徴の、臭みの無い芋っぽい食感の黄色い中身を持つ赤い皮の根菜、
甘みも香りも上品な青、紫、水色の丸い苺、
動物なら、
そう、どれも前世の地球の動物や植物の面影が無いわけではないけれど、どこか違う生物だったり植物なのだ。
ちなみに、よく異世界の料理は不味いみたいな作品が前世の地球ではわりとあったように思えるけど、このレムリアースの食材は素材の味だけで前世の世界よりも遥かに上質で全然勝っている。
もはやグルメとしての質はこちらの世界の方が上なのでは? と思えるほど。
まぁ、前世では所詮底辺の負け組み終わり。大したもん喰ってないから実際にはわからんのだけどね。
ちなみにそんな優れた料理文化なんだけど。
実は数十年前に現れた、とある異世界人の手によってもたらされたらしい。
その人物は、素材の流通やら技術の進化に多大な貢献をもたらしたらしく、その結果、料理の文化レベルが一気に跳ね上がったらしい。
いわゆる現代技術を使ったチート無双みたいな事をしたんだろうな。
おかげでおいしい料理が食べられて大変満足です。感謝感謝。
それはともかくとして、こんな異世界国家レムリアースなのだけど、この世界にはペガサスとかユニコーン、グリフォンとかヒポグリフみたいな前世世界のファンタジーにありがちなよくある幻獣も存在しない。
四つの蒼紫の歪んだ眼を持つ、牛のような角を持ち、逆毛立つ全身真っ黒な毛に覆われた巨大な狼。
龍の尾に鷲の翼を持つ額に一本角を生やした白銀の獅子。
立派な鹿の角を持つ白い鳥の翼を持つ獅子。
どれも、現世の地球の伝承には無かった魔獣ばかりだ。
なんでまったく関わりの無い異世界に行ったのに、そういった作品に出てくる魔獣や幻獣は地球の伝承にあった怪物と同じ姿と名前をしていたんだろうって。
そこら辺、よくある異世界ものとはなんか違うんだよね。この世界。
まったく見た事も聞いた事もない動植物や魔獣ばかりなんだ。
まぁ、なぜかドラゴンはいるみたいだけどね。
もちろんドラゴンという名前で呼ばれたりなんかはしていないんだけど。
現地の忘れられかけた民族語とかで巨大な空飛ぶ蜥蜴、みたいな意味で名づけられたりしているみたいだ。
それはともかくとして……。
さて、となると今度は、じゃあなんで兎族や猫族みたいな感じで、獣人には前世地球の動物と同じ面影が残っているんだ? って話になるよな。
結論から言おう。
実は存在するのだ。なぜか、前世地球の動物が。
あれ? さっきいないって言ったよね? って思う事だろう。
だがその矛盾は成立しうるのだ。
実際にこのレムリアースに現世地球の動物はいない。それは間違いない。
じゃあどこにいるのか。
答えは精霊だ。
精霊魔法を使用した際に現れる精霊。
精霊魔法の源たる精霊だ。
その精霊の中には、地水火風光闇などの自然精霊の他に、命を司る精霊というものが存在する。
その命を司る精霊の中に、
そして、その
彼らは一部獣人部族からは、原初の獣達と呼ばれ崇められているという。
魔法学者の推測によれば、今いる獣や魔獣の大元になった進化前の
さて、大分話がそれたが。
まぁ、今日はそういった動植物の勉強から、一歩進んで魔獣など、人に強い害を与えうる生物。魔獣について学ぶ事になった、という訳だ。
そんな訳で、我らがナフベル先生は教壇にて、真面目な顔をして、開口一番こうおっしゃった。
「では、今日は
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