第16話「地理系の話でウェイ!」
「そいぢゃぁ、ちゃけばこれから地理系の授業すっけどぉ」
小麦色に焼けた肌の金髪昇天盛りガール。まだ若い新米教師のロベリパ先生が独特の口調で現れる。
今日も化粧がアゲアゲ系である。こう見えてエルフ族って所が実に歌舞いていらっしゃる。
「みんな今日もついてこれる系~?」
『ウェイ! オールでもいけるっしょー』
「ウェイ! ノリ良い系のクラスとかマジで超ラブいんだけど」
この口調は最近、中央都市の一部で若い女学生の間で流行っている口調らしいので、ギャル語みたいなものだろう。
「じゃあ教科書系の83ページらへんを開く系でいってみるべし」
そんなこんなで、三時間目は地理だ。この国の大まかな地名からスタート。
「レムリアースの七大領系の話ぃ? みんな
『ウェイ!』
「ウェイ! マヂ良い返事じゃね? マジそそるんだけど。じゃあテン上げ爆盛り系のミリアちんからいってみようか」
そんなこんなで、昨日予習したばかりのエーフィン・グランデンとメレーネン・タオシェンについて答えた。
「マジ神ってね? ミリっちに5点満点中10点上げたい気分で次行くナリ」
きちんと帰り道にバッチリ予習しておいたから完璧だった。
「じゃあ、そんなメレーネン・タオシェン代表ともいえる
マルルと呼ばれた少女が立ち上がり、教科書をチラチラと見ながら答える。
銀髪の輝かしいふんわりヘアー。もみあげが縦ロールになってたりと優雅で綺麗系。
蒼い瞳に白い肌の小柄なスレンダーガールだ。
彼女はマルーシェル・コーラルメイズ。
実は魚以外にもいくつもの種族がいて、例えば
他にも
後は
彼女はその中でも殊更特殊な
体の柔軟性と水中適正が高いといった特徴を持つ。
彼女はその中でも特殊で、先祖帰りとも言える、それら貝部を硬化、肥大化させることで鎧にして身にまとうといった特殊な特技を持っていたりもする。
これは種族的にもレアな能力らしく、鎧の中心に輝く
ちょっと前に見せてもらったんだけど、なんか魔法少女っぽいというか……某聖なる闘士の聖なる衣っぽくて変身シーンも含めてとても格好よかった。ちょっぴりうらやましい能力だ。どうせ転生でチートできるならああいうスキルとか欲しかった。
「……北方領国?」
「そこで
「……ウェイ」
そんな彼女は無口系ガール。基本的には余り喋らず、喋る時はポソポソと小声で小さく喋る。
ちなみに、28歳。
え!? って思うでしょ?
実は彼女の種族はとても長命なのだ。なので見た目も精神年齢も10歳だ。
エルフ族との関係が深いのでは? とされており、平均寿命は300歳まで行き、その分成長は遅く、30歳で成人……というかやっと12歳くらいになる。
ちなみに今着ているのは制服なのでみんなと同じ服を着ている訳だけど、普段着はフリフリ系のドレスを好むらしい。色は黒とかダークなカラーが好きなのだとか。とても似合いそうだよね。
「……シュネーアン・グリューシァ。北方の領域にある広大な大地だね。草原と山、そしてそびえ立つ高い山岳地帯、その果てには閉ざされた氷の国があるよ。低温地域に住む海獣人や一部
「
「……ウェイ」
「ウェイ! まぁ、アリよりのアリじゃね? じゃあ次は……このクラスの神脳扱いされちゃってる系のシアっちにテン上げ爆盛りでお願いチェケラッチョ」
シアが指名され、教科書も持たずに立ち上がる。
「うむ。ではなかった。ウェイっ。なのじゃ。次は順番的に地底領国かや?」
「そっち系の話でヨロ」
「ウェイっ。なのじゃ」
そして教科書を一瞥もせずにスラスラとその文を口にした。
「地底領国シュヴァイツェン・ヘイヴはアレじゃな。西方領国から中央首都を貫く大山脈の中にある。ようは地底にある特殊な領国じゃな。主に
「マジで歩く雑学辞典じゃね? バイブスガチ上がりなんだけど。まだいける系?」
「うむ、いけるぞい? じゃなかった。ウェイっ。かつては絶対敵対種。亜人族であるゴブリンどももここに住んでいたようじゃが、10年前の戦争で敵対人種は完全駆逐されたため、未だに誰も住まない無人のスペースが沢山残されているらしいのぅ。基本的に暗闇の中のわずかな明かりで生活しているため、よほどの変人でも無い限り他種族は住まないようじゃ。が、ドワーフの鍛冶錬金技術に憧れ、それを学ぶために修行として住み込みで働く人族もいるとか。物好きもいるものじゃな。全体人口から見ても、総人口自体が少ない領じゃ」
「べぇ。マジべぇわ。シアっちには百点あげたい所存」
「うむ、これくらいは余裕じゃよ。ウェイ」
「ウェ~イ。じゃあ続きはシアっちと仲の良いララちーで行ってみよっか」
「うぇ、ウェイ。山岳領国ケルブレン・ヴァーグは、主に地底領国の上にある山脈や、その近辺の高地に住む種族の領土です。山岳付近の
「あざまし。じゃあとりま、次はティエラッティーノいってみんべ? 南方の奴ヨロ」
「ウェイ! 南方領国はフルブラム・シュタイネンやな。火山と熱帯雨林に囲まれとったりする、海辺の方まで行くと一部諸島系の領がメレーネン・タオシェンと被っとって、どっちの領にしようか揉めとるんやったかな。まぁ一言で言えば常夏の領国やな。山岳付近の
「オケ。アリよりのアリよりの……アリ!」
「ウェイ!」
「三大名所のひとつ『温泉街』があるのもP高いよね。ココも忘れんように」
『ウェイ!』
「んだば、次は……さっき出てきた
「アレレ~? 次も何も七大領終わっちゃったヨ~?」
「せやな。じゃけん続きのフロリスの森とかオナシャス」
「ウェイ! ダヨー」
こうして指名されたのは、白い長髪に蒼や黄色、赤の花が飾られている特徴的な少女。所々、赤、青、紫、黄色、緑の葉っぱも見受けられる特徴的な髪。この花とか葉っぱは体の一部らしく、もぎ取れはするが痛いらしい。もぎ取っても数ヶ月で生えてくるし、枯れないうちであれば回復魔法でくっつけなおすことも可能なんだとか。透き通るような白い肌に神秘的な金の瞳。身長はララちゃんと同じくらいで痩せ型のスレンダーガール。
彼女はフェイラン・ロータスブラッド。通称フェイ。
で、その中でも樹よりも花寄りの種族が、
ちなみに、当然彼女も今は制服なので衣服はみんなと一緒だけど、普段着は東方系の民族衣装を好むらしい。似合いそうだよね。
年は48歳。けど当然、見た目も精神年齢も10歳だ。平均寿命が500歳の超長命種族なので、成長が遅くて50歳で成人、というか、やっと10歳から12歳前後の姿となる。
「エーフィングランデンに存在する森ダヨー。大陸の西方とレムリアース国家を遮る、西方の蛮族民どもから進行を防いでくれちゃっている森ネー。それがフロリスの森ダヨー。通称、迷いの森ヨー。森の住人達の案内が無ければ現地民でさえ迷って森の肥やしになっちゃう恐ろしい所なのダヨー。中央に巨大な樹、千年王樹ユグドラシルがそびえ立つ事でも有名ダネー。エルフや
「フェイたんありがたみ。さすが出身地、よくワカッティングナウ。んだばラスはレイアっち。さっき軽めに出てた系のデスクリムゾン方面の話とかおなしゃす」
「ウェイ。ですわ」
机を立ち上がり、綺麗に背筋を伸ばして教科書を読むレイアちゃん。
銀の長い髪が相変わらず美しい。花びらのように白い肌。綺麗で艶やかな唇。
けど、やっぱりその目は閉ざされている。
教科書も専用の盲人用のものを用いている。
本当に見えないのか、それとも……いざという時に固定概念だなぁ、ってなるのか。目を開いたときに真の力を解放するのか、未だに謎のままだ。
「生命を嫌うこの世の地獄。死の砂海。そこには古代魔法文明はおろか、神々の時代の遺跡さえも残されていると噂される。されど生きて戻ってこれた者は少ない。猛毒に塗れた地域、極わずかな特殊な生命以外は好んで住もうとしない砂だけの海。そこへ至るための街でもあり、普通の町では馴染まなかった悪党たちの吹き溜まりである、実質八番目の領……それが、通称、禁区領デスクリムゾンですわ」
「ん、ソクサリ安定系の場所だから。絶対行かない方が良い。これガチな」
『ウェイ』
「
「盗賊ギルドや暗殺ギルドが名産。国が黙認している悪党どものパラダイスですわ」
「けどぜってぇ他の領には基本アリエンティな超
「素人にはお勧めできませんわ」
「てか、内部の連中、他領行ったら即ポリ系の話になるようなんばっかりらしいからガチブル話な」
「もちろん、許可あり仕事以外で他の領なんかに行ったら捕まってしまいますもの。賢い民なら、誰もそんな粗相いたしませんわ」
「許可ありでお仕事とかガチやばみ。まぁ、あっこは一種の流刑地な。ん、ありりんレイアっち」
「ウェイ! ですわ」
「いぇあ。んだば、次はわちき達の住んでるこのエーフィングランデンを細かくやってく系の話から……」
唐突にお腹を押さえだす先生。
「……行きたい系の話しなんだけど、やばば。ちょ、マ、ありえんてぃ」
「どうしたんですか? 先生」
「ちゃけば、
『ガチで!?』
『マ? マ?』
『べぇ、っべぇ』
「リアルガチ。あとはマヂよろたん」
『ウェイ』
走るように先生はトイレへと向かった。
この学校と街は地下水路があるから普通の水洗トイレがあるんだよね。
そんなこんなで、こうしてしばしの自習時間を過ごすのであった。
デスクリムゾン批判をした瞬間、便意に襲われた先生……これは果たして偶然なのだろうか。
……まぁ、偶然案件だったらしい。という噂である。
――っていうかさ、これマジ何語? 何言ってんのかマジ訳わかめ……。
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