第77話 湿地帯と移動手段


「なんで入れないんだ!」


「そうです!僕達は攻略者・・・ですよ?」


「そう言われましても·····ただ今、マスターは取り込み中ですので·····マスターの許可無しには·····」


ギルドの受付でレンとユダが騒いでいた

どうやら、ダンジョンに入る許可を取りに来たようだ


「ここのギルドマスターなら、気絶してるぞ」


「ジン!さっきまで地下に居たみたいだが、それとギルドマスターの気絶は関係あるのか?」


「さっきまで、模擬戦をしてた」


「どういうことだ!?」


「説明は、場所を変えてからにしよう」


レン達が受付で騒いでいたこともあり、ギルドに戻ってきていた冒険者達がこちらを見ている

あまり悪目立ちしたくないので、場所を変えて話すことにした


「あ、そう言えば、レン達もダンジョンに入っても問題ないよな?」


「はい!ジン様のお知り合いの様ですし、ご一緒に入られるなら問題ありません」


念のため、受付嬢に確認を取ったが、一緒に入れば大丈夫らしい


「だそうだが、今日は宿を取ろうと思うんだが、いいか?」


「もうすぐ日が暮れるからな·····ダンジョンは明日にした方が良さそうだな」


「それじゃ、とりあえず宿を探すか」



俺たちはダンジョンの近場で宿を取って、

ウエストに着いてからの出来事をレン達に話した



「なるほどな·····」


「ギルド内の空気の悪さはそう言う事でしたか·····」


「まぁ、俺達には関係ないことだ、ギルドマスターのアストロには少しイラついたが、ダンジョンに入る許可は手に入ったしな」


「今回のダンジョン攻略は4人で行くってこと?」


「リオちゃん、ごめんな、折角の2人旅なのに邪魔しちゃって」


「じゃ、邪魔だなんて·····別にそんな事思ってないし·····」


レンがリオを茶化すように言うと、リオは顔を真っ赤にして俯いてしまった


「4人の方が攻略は早そうだし、いいだろ

明日は早朝からダンジョンに入るから、朝にダンジョン前に集合でいいか?」


「あぁ、そうしよう!俺たちはこれから飯にするけど、ジン達も一緒に来るか?」


「俺たちは、着替えたら向かうから先に行っててくれ」


「わかった!それじゃ、俺達も着替えてくるか」


レンとユダは自分たちの部屋に戻って行った

俺とリオは相変わらず、同じ部屋だ



「そろそろシロが腹空かしてるだろうからな、先にシロの飯にしよう」


「そうだね」


リオと一緒にシロがいる異空間に向かった



『クゥーン·····』


「ほら、飯だ」


異空間では、シロが腹を空かせて待っていた

俺はアイテムボックスから1週間分はある食料を取り出して、無造作に山積みにした


「また、ダンジョンだから、ゆっくり食べるんだよ」


『グルゥ』


リオが声をかけると、言葉を理解しているのか、シロが喉を鳴らして返事をした


俺たちはシロを残して、レン達と合流した

その晩は、レン達と情報共有をして、早めに布団に入った




「これが、西のダンジョンだね·····」


「相変わらずのデカさですね·····」


次の日の早朝、俺たちはダンジョンの前に来ていた

リオとユダが塔を見上げて呟いている

塔の周りを確認すると、南のダンジョンの入口になっていた祭壇があった

祭壇には宝玉を入れる窪みがある


「2人共ーそろそろ行くぞー」


レンが塔を見上げてる2人に声を掛けた


「それじゃ、中に入るか·····」


俺は、全員が魔法陣の上に乗ってることを確認して、赤い宝玉を祭壇に填めた

魔法陣が白く光り始めて、視界が白くなっていく·····



◆西のダンジョン 第1層·····湿地帯


転移してきた途端、俺たちは雨に晒された

空から小雨が降っている

周りを見渡すと、所々に木や草が生えている

足元はぬかるんでいて、そこらじゅうに大きな水たまりが出来ていた


「湿地帯ですね·····マップはどうなっていますか?」


「マップには、扉も祭壇も表示されていないな·····ジン、どうする?」


「とりあえず、適当に進んでも仕方ないからな·····空から見渡してみるか?」


「それなら、僕が見てきますよ!」


ユダが魔力強化<火>を使って、雨の降る空に向かって飛んで行った


「なぁ·····もしかして、北のダンジョンで今回みたいに、空から確認したりしたか?」


ユダがすぐに飛んで行ったので、気になって聞いてみた


「進む方向が分からなくなった時にやったな、もしかして、ジンもやったのか?」


「あぁ·····考えることは同じってことだな」




「レン様!向こうに、大きな湖があるようです!」


俺とレンが話していると、ユダが地上に帰ってきて、褒めてほしそうに、レンに報告した

ユダは相変わらずのようだ


「湖?水たまりじゃねぇのか?」


「かなり大きいので、湖かと·····」


「他に行くところもねぇしな·····とりあえず向かってみるか!ジン達もそれでいいか?」


「あぁ、問題ないぞ」


俺たちは、ユダが見つけた湖に向かうことにした


「歩いていくのか?」


俺がユダが言う湖の方向へ歩き始めると、レンが聞いてきた


「俺の魔導二輪は2人乗りだからな、4人は無理だぞ?」


「これなら、4人乗れるけどな」


そう言って、レンがアイテムボックスから魔導船を取り出した


「魔導船だよね?水たまりはあるけど、ここは陸だよ?」


「まぁ見てなって」


リオが当たり前のことを聞くと、レンが自信有りげに魔導船に乗り込んだ

レンが魔導船に魔力を込めて、魔導船のスイッチを操作し始めた


『ガコンッ!』

何かが動く音がして、魔導船の下から大きめの車輪・・が出てきた


「もしかして、魔導船で陸を走れるのか?」


「そうだ!ティム社長が考えてくれてな、こいつのおかげで移動が楽になったんだ!魔導二輪のタイヤを真似たらしいが、再現するのに苦労したそうだ!」


「再現出来るのが凄いけどな·····」


「それもそうだな·····まぁ、とりあえず乗ってくれ!こいつならぬかるんでいる地面でも進めるからな!ユダが見つけた建物に移動しようぜ!」


レンに言われて、俺たちは魔導船に乗り込んだ

魔導船は意外と速く、タイヤは魔導二輪をモデルにしただけあって、サスペンションのようなものが取り付けられていたので、移動中の衝撃はそこまでなかった


リオは「振動で寝れない·····」とか愚痴っていたが·····

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