第76話 模擬戦と魔剣グラム


『コンコンコン』

「ジン様!準備が出来ましたので、闘技場の方へお越しください!」


話を聞き終わったところで、闘技場の準備が終わったようだ


「安心しろ·····俄然やる気が出てきた」


俺は、案内してくれた職員に一言呟いて、闘技場へ向かった



闘技場は地面が砂地で、周りには観客席があった

どこで話を聞いてきたのか、観客がちらほらといる

闘技場の中央には、レフェリーを担当する職員とギルドマスターのアストロが立っていた


「逃げずに来ましたか·····」


「逃げる必要があるのか?それより、模擬戦のルールは決まったのか?」


「一々、気に触りますね·····ルールはどちらかが、戦闘不能になるまででどうですか?」


「一応聞いておくが、降参は戦闘不能に含まれるのか?」


「含まれませんね·····今更、怖気付きましたか?」


「いや、そのルールで大丈夫だ」


ルールが決まったので、所定地まで、移動する

アストロがこちらを向いて、剣を構えた

俺は何も構えず、向き合う


「ジン様·····始めますが、武器はよろしいですか?」


職員が態々確認してきた


「大丈夫だ、必要ない」


アストロの眉毛がピクピク動いている


「わかりました·····それでは、始めます!·······はじめっ!」


レフェリーの合図と同時に、アストロが斬りこんできた

俺は、剣の軌道を見ながらギリギリのところで避ける

確かにAランクまで上がっただけのことはある

スピードがあり、剣筋にブレがない

アストロは休むことなく、何度も斬りかかってくるが、俺は全ての剣戟を寸前のところで、避け続けた


「すばしっこいですね!」


「剣だけじゃないんだろ?」


アストロは剣を降るのを止めて、距離を取った


「知っていましたか·····」


「本気で来ないと負けるぞ?」


「僕が負けるわけないでしょ·····僕の攻撃を少し避けれたぐらいで、調子に乗らないで下さい!そんなに見たいなら、見せてあげますよ!」


そう言うと、アストロの剣に水が集まり始めた

水が剣を覆うと、徐々に固まり・・・始めた

剣を覆った水は完全に氷になっている


「え·····うそ·····」


リオが闘技場の端で驚いている

リオが作れなかった氷を作り出したのだから、リオが驚くのも無理もない

だが、これが自力・・で作れていれば俺も驚いたんだが·····


「どうですか?綺麗でしょ·····」


アストロは自分が作り上げた、氷の剣を掲げてうっとりしている


「それがその魔剣の力か?」


「そうです!僕の魔剣の能力は、触れるものを凍らせる能力です!僕の水魔法と合わされば、こんなに美しいものまで作れてしまうのです!」


アストロが手に持っている剣は魔剣だ

魔剣は水を凍らせて、一回り程でかくなっている


【グラム】魔剣

【特殊能力】絶対零度


「魔剣の能力と得意な水魔法の合わせ技ってことか·····」


「さぁ!ここからが本番ですよ!」


アストロが魔剣グラムを振り回すと、氷の破片がこっちにむかって、飛んできた

俺は、横へ飛んで回避すると、俺がいた場所に氷の杭が突き刺さった

突き刺さった地面が、少し凍っているようだ


「いつまで逃げるつもりですか?どんどん行きますよ!」


アストロが氷の杭を飛ばしてくる

俺が回避していくと·····


「くっ!壁か·····」


俺は壁際に追い込まれた

左右には先に飛ばされた氷の杭で埋め尽くされている


「もう、逃げ場はありませんよっ!」


俺に向かって氷の杭が何本も飛んできた


『キンッ!キン、キンッ!』

「なっ·····」


「避けれないなら、弾き飛ばせばいいだけだ」


「僕の氷を弾いただと!?その剣はどこから出したんだ!」


俺は、血刀を作って氷の杭を弾いた


「態々教えるつもりは無いな·····それに、氷なんだから、溶かすこともできるだろ」


俺は小さめの炎流で地面に刺さっている、氷の杭を溶かして見せた


「溶かしただと·····この氷は魔剣並の強度を持っているんだぞ·····」


「あと、遠距離で戦えるは自分だけだと思うなよ?」


俺は光風の斬撃をアストロに向けて飛ばした

『ドンっ!』

斬撃はアストロの髪の毛を何本か斬り裂いて、後ろの壁を粉砕した


「なっ·····な、な·····」


アストロが尻もちを着いて、後ずさりながら、こちらを指さして震えている


「そ、その剣も魔剣なんですか?」


「魔剣みたいなもんだな·····さてと、戦闘不能迄だったよな、どこまでやれば戦闘不能になるんだ?」


俺は近付きながら、アストロに確認した


「こ、降参です!ぼ、僕の負けです!塔の許可も出します!」


「降参は戦闘不能に含まないって言っただろ?」


俺は血刀を高く上げて、アストロの頭に振り下ろした


「ひっ!」


血刀は頭に当たる寸前のところで止めた

アストロは威圧を発動すると、白目を向いて意志を失った


「ここまでだな·····俺の勝ちでいいか?」


一切動かない、レフェリーに確認する


「·····は、はいっ!勝者はジン様です!」


「「「おぉーっ!」」」

「あいつ、すげー!」

「アストロに勝ちやがったぞ!」


俺の戦いを見て、固まっていた数人の観客達が騒ぎ始めた

職員が数名、闘技場に入ってきて、アストロを担いで連れていった


「それじゃ、ダンジョンには勝手に入らせてもらうぞ?」


「はい!問題ありません!」


確認をした俺は、ギルドのホールへと向かった



「なんで入れないんだ!」


「そうです!僕達は攻略者・・・ですよ?」


「そう言われましても·····ただ今、マスターは取り込み中ですので·····マスターの許可無しには·····」


ギルドの受付の方で何か騒いでるみたいだ

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