第78話 湖とカエル


湿地帯をしばらく進むと、マップに湖が表示された


「リオ、起きろよ、もうすぐ湖に着くぞ」


「んー·····ぅん·····おきた」


リオは寝れないとか言いながら、魔導船の振動が気持ちよかったのか、いつの間にか寝息を立てていた

俺が揺すって起こすと、リオが伸びをしながら返事をした


「2人を見ていると、ダンジョンの緊張感が無くなりますね·····」


「そうか?いつもこんな感じだぞ?」


「そうですか·····」


何故か、ユダに呆れられた


俺たちは、魔導船を湖の畔に止めて、外に出た

外はまだ、雨が降り続いている


「霧でなんにも見えないね·····」


湖には、濃い霧が掛かっていて湖の殆どが見えない


「ジン、マップ見たか?」


後から降りてきたレンが聞いてきた


「あぁ、あれが目的地で間違いないな」


「目的地ってことは、祭壇を見つけたの?」


「今は霧で見えないが、この湖に島があるんだが、その島に、祭壇があるみたいだな」


マップには湖の真ん中に島があり、その島に祭壇のマーカーが表示されている

ちなみに、帰還用の祭壇は湖の畔にあるのを、マップで確認済みだ


「それにしても、ジンが瘴気を吸収出来るのは本当だったんだな!」


「やっと信じたか?」


瘴気や魔素の話は、昨晩のうちに全て説明したが、流石にすぐには信じてもらえなかった

ここまで、魔物が現れていないことでやっと信じてもらえようだ


「それは俺にも出来るのか?」


「昨日も話ただろ?この力にはリスクがあるかもしれないんだ、止めとけ」


「そういや、核がどうこう言ってたなー、口で説明されてもよくわかんねぇんだよなぁ」


「じゃあ、見せてやるから·····」


そう言って、俺は瘴気の吸収を抑える

すると、湖の近くに瘴気が集まり始めた

瘴気は徐々に形を固めていく·····


「あれは、カエルみてぇだな·····」


「デカいけどな·····リオ、バリアで閉じ込めといてくれ」


「わかった!」


説明の邪魔になるので、リオに足止めをさせておいた

カエルはバリアに向かって体当たりをしている


鑑定すると·····



【ミアズマフロッグ】Lv.60 / Bランク

【スキル】ー


「カエルで間違いないみたいだな、こいつが、この階層の魔物だ」


「ジンが瘴気を吸収するのをやめたから、瘴気が集まってこいつが出てきたってことか?」


「そういう事だ、今までは、こいつらを作るのに必要な瘴気を、俺が吸収していたから、出てこなかったんだ」


「ん?でも、ジンにも瘴気を吸収できる限度があるんじゃないのか?」


「もちろんだ、だから、俺は瘴気を吸収したら、魔力と組み合わせて、魔素を作るようにしている」


吸収した瘴気を魔素にして、空気中に散布している

魔力は瘴気を吸収するときに、空気中の魔力も一緒に取り込むので自然と回復速度が上がる

つまり、俺がいれば、半永久的に空気清浄機のように、瘴気の浄化をさせることができる

何だか、説明してて悲しくなってきた·····


「どうした?」


俺が黙っていると、レンが聞いてきた


「いや、なんでもない·····

魔素は扱いが難しいが、魔素と魔力は見た目だけでもこれだけ違う」


そう言って、左手に魔力だけで作った火球と、右手に魔力と魔素5:5で作った火球を作り出した


「その黒と赤の混ざった火球が、魔素を使った火球ってことか?」


「そうだ、南のダンジョンの守護者の話だと、魔素を使うと属性が変わらるらしい

リオ、バリアを解除してくれ!」


「はーい」


「まずは·····魔力の火球だと·····」


俺はミアズマフロッグに魔力の火球をぶつけた

カエルは燃えたが、湖の水ですぐに消火してしまった

カエルは、こっちを睨みつけて頬袋を膨らませている


「で、次は魔素が含まれた火球だ」


魔素が含まれた火球をミアズマフロッグにぶつけると、先程と同じように体を燃やしていく

ミアズマフロッグはすぐに、湖の中に入ったが、黒い炎は水の中でも燃え続けて、ミアズマフロッグを消滅させた


「あの黒い炎が、魔素ってことか·····やっぱり使ってみてぇな·····」


レンが諦めきれないように、こっちを見てきた


「安全が確保出来てからにしろ」


「そうですよ!ジンさんと行動を共にすれば、レン様がリスクを犯す必要は無いのですから!」


「それ、どう言う意味·····?」


「いえ·····そういうつもりではなかったのですが·····」


リオが少し怒りながら言うと、ユダが、分が悪そうにたじろいだ


「いや、気にするな

俺がこの体になったのは偶然だしな、使えるうちは有効活用したほうがいいだろ!

説明はこんなもんだ、とりあえず、湖の島に向かうぞ」


「軽率なことを言って、すみません·····

僕が、魔導船を移動させますね!みなさんはそちらで待っててください!」



「レン·····魔素を使うには、体の中に瘴気の核を作る必要がある·····この核は日本に帰った時にどうなるかわからないぞ·····」


「それも、そうだな·····」


俺はレンにだけ、聞こえるように忠告した

実際、日本に帰った時に、この瘴気の核は無くなるのかは、分からない

この世界で取り除く方法があるなら、無くしてから日本に帰る方がいいだろう·····



「みなさん、乗ってください!島に向かいますよ!」


俺とレンが話してるうちに、魔導船の移動が完了したようだ

俺たちは魔導船に乗って、湖の島に向かった

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