第58話 1層攻略


『ギィイイイ!!』


ミアズマリザードが叫びながら走ってきた


「トカゲって弱い属性とかあるのか?」


俺は血刀を長めに作り直し、火属性を能力付与エンチャントして突っ込んでくるトカゲを真っ二つにした


『ギィ·····』


ミアズマリザードは燃えながら、小さく鳴いて霧になって消えた


「このダンジョンでも魔物は魔法で倒せるみたいだな」


「倒せるのはいいけど、最近デカいのばかりだね·····」


「瘴気を吸収しとけば出てこないけどな」


一々倒すのも面倒なので、瘴気は吸収することにした

俺達はその後も、渓谷をひたすら、川沿いに進んだ




「道がないよ?」


しばらく歩いたところで、川幅が広がり、歩ける場所が無くなってしまった

水深も身長以上に深くなっており、川の中を歩いてくのも無理そうだ


「仕方ないな、これでいくか·····」


アイテムボックスから魔道二輪をとりだし、水上タイプに変形させる


「魔道二輪は便利だねー」


「この渓谷の幅なら魔導船でも大丈夫そうだが、どこかで狭くなってるかもしれないしな、魔道二輪を改造しといて正解だったな」


俺達はそんなことを話しながら、先に進んだ

進んでいくと、渓谷は狭くなり、水かさが上がり、水流がどんどん激しくなっていった


「ここからは魔力強化<風>で行くか·····」


魔道二輪でも進めなくはないが、これ以上水流が激しくなるならホバリングして進んだ方が良さそうだ



「魔力がキツくなって来たら言えよ、おぶってやるからな」


「え·····じゃあ·····」


「キツくなってきたらだ!これも魔力量を上げる修行みたいなもんだからな」


「そんなぁ·····ジンくんは魔力が無尽蔵だけどさぁ·····」


リオがブツブツ言いながら、後ろから付いてくる




1時間ほど川を登っいくと、マップに広い半円形の場所が表示された


「この先に開けた場所があるな·····1度そこに向かってみるか」


「地面あるかなー?」


リオは意外と魔力に余裕があるみたいだ



『ゴォォォォォ·····』

近づくにつれて、音が聞こえてきた


「向かってる方向から、凄い音がしてるな」


「何の音だろ·····」


「もうすぐ見えるはずだが·····」


遠くの方に音の原因が見えてきた

水が、すごい高さから落ちてきている

頂上が見えない崖の上から、水が落ちてきて、巨大な滝を作っていた

滝は崖の上から、水のカーテンの様に落ちてきている


近くまで来ると、改めて大きさが凄い·····

昔、テレビで観た、ビクトリアの滝の様だ

滝は地面に池を作り、その池から溢れるように、川に流れていっている

池の周りに地面があったので、とりあえず、魔力強化<風>を解除した


「キレイね·····」


「あぁ、絶景だ」


「でも、ここは行き止まりみたいだよ?」


リオが周りを見渡しながら、言っている


「いや、マップでは滝の向こうに道があるみたいだ」


「え?あの滝をくぐるってこと?」


滝は外から見ればキレイだが、近づけば恐怖しかない

あの高さからの水圧は、一体どれほどなのかわからないが、地面を掘り、巨大な池を作りあげるぐらいの力はあるのだろう·····

そこを生身で通ろうと思う人はいないだろう


空間制御エリアコントロールでトンネル状にバリアを作ってくれ」


「そこを通るって事ね·····でも、10mが限界だからちょっとずつね·····」


リオが手を前に出して、トンネルを作り出す

滝の方向に10mのトンネルが出来上がった

俺達はトンネルの中を歩いて滝に向かう

リオが移動すると、トンネルが滝に向かって伸びていく

そのまま、トンネルが滝にぶつかった


「あっ!·····ダメ·····長く持たないかも·····」


リオはトンネルを維持するだけで精一杯の様だ


「ちょっと堪えてろ!」


俺はバリアの外に出て、今作れる最大の血刀を作り出す

血刀に風属性を能力付与エンチャントして滝に向かって思いっきり振りかぶる

剣先から風の刃が飛んでいき、滝にぶつかる


『ズッバァーン!!!』

滝が弾けとんだ

周りに水しぶきが飛び散っている

滝の向こうに洞窟が見えた


「リオ!掴まれ!」


滝が無くなっているのは一瞬だけだ、このタイミングで一気に通り抜ける

俺はリオを抱えて縮地で洞窟に駆け込む

後ろを振り返ると、水が落ちてきて広場が見えなくなった


「何とか通れたな·····」


「ジンくん、めちゃくちゃだよ·····」


俺もリオも全身ずぶ濡れだ

光球を飛ばして明かりを作る

辺りを見渡すと洞窟はかなり広くなっていた


「無茶してここに入ったってことは、あるんだよね?」


「勿論だ、次の階層への祭壇はこの奥だ」


そう言って、奥を光球で照らすと、大きな扉と帰還用の祭壇が現れた


俺は扉の前まで行って、扉に手を掛ける


「もう行くの?」


「ここにいても何も無いしな」


「ジンくんが瘴気を吸収してれば、魔物も出てこないもんね!」


リオが俺の近くに寄ってきた

俺は扉に力を入れて、扉を開ける

扉の先は薄暗い円形の部屋で、奥に祭壇があるのが見えた


「俺は瘴気を吸収しないぞ?折角戦えるのに、勿体ないだろ?」


中に入りながら、そう言うと、リオが横を歩きながらこっちを睨んでいる


「戦わない方が楽じゃない!なんで態々戦うの!?」


「ここの魔物は、かなり経験値がいいからな、北のダンジョンでもかなりレベルが上がっただろ?レベルが上がれば、全体的に身体能力とかが上がるからな」


「それでも、戦わない方が安全だよ?」


「レベルを上げれる時に上げとけば、危なくなった時に助かる可能性が上がるじゃないか

だから、ここで戦ってレベルを上げるんだよ」


「そっか!そうだね!·····あれ?でも、ここで戦うことは危険じゃないの?何か上手く、言いくるめられた気がするんだけど·····」


「グチグチ言ってる暇はないぞ、ここが真ん中辺りだ」


そう言うと、入ってきた扉が閉まった

部屋を見渡すと、至る所に瘴気が集まってトカゲの形を作っている


「今回は数で来るみたいだな·····」


「大きいのが良かったの?」


「1度見てみたかった気もするな、とりあえず、今回は炎流でいくか」


そう言って巨大な火球を2つ作った

すると、リオが自分たちを包むようにバリアのドームを、作り出す

周りでは数えきれない程のミアズマリザードが『ギィギィ』鳴いている


「一気に片付けるぞ!」


俺は火球の周りに竜巻を作り出してぶつける

炎の竜巻がゴォォと音を立ててトカゲたちを焼き尽くしていく

後には大量の魔石が転がっていた


「相変わらず、チートすぎるよ·····前より火力上がってない?」


「多分、魔素操作のせいだな、魔力よりも魔素の方が燃費が悪いが、火力が上がるみたいだからな」



俺は水魔法で全体を冷ましてから、祭壇へ向かった

リオはせっせと魔石を集めている


祭壇の本を手に取り、中身を確認したが、このダンジョンも1ページ目以外は真っ白なページが続いているだけだった



「ジンくんも、拾うの手伝ってよー」


全ての魔石を拾ったリオが、こっちに向かいながら文句を言っている


「俺は魔石なんてほっといてもいいって言ったのに、リオが勝手に拾ってるんだろ?」


「そうだけとさー、手伝ってくれてもいいと思うんだよなー」


「拾い終わったんなら、次の層に行くぞ」


俺は話を切り上げて、本に魔力を込める

すると、目の前の壁が白く光ってゲートが現れた


「行くぞ、次はどんな場所だろうな!」


「ねぇー、私の話聞いてるー?」


俺がゲートに入ると、リオが文句を言いながら付いてきた

俺達は2層に向かった

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