第57話 サウスと南のダンジョン


「テントの方に行ってみるか、ギルドも取り壊してるみたいだし」


「そうね」


俺達は気を取り直して、ダンジョン攻略の申請のために、テントに向かった


テントは薄い生地で作られた、白い無地のものだった

大きさはまちまちで、囲むように建てられていて、真ん中には、火を興した大きなの跡の様なものがあった

夜は冷えるので、コレで暖を取っているのかもしれない

住人達がテントの中からチラチラとこちらを見ている

俺達は、とりあえず1番大きなテントに向かった



「なぁ、これって普通に開けてもいいものなのか?」


「どうだろうね·····声をかけて開けるとか?」


俺達はテントの前でどうするか迷っていた

テントの入口は捲れば入れるが、知らない人のテントに入っていいものなのか分からない


「おやおや、先程の旅人さんたちじゃないかい、私のテントに何か用かな?」


後ろから声をかけられて、振り向くとここに来る前に出会ったおばあさんが立っていた


「ここはおばあさんのテントだったのか、俺達は冒険者なんだが、あのダンジョンに挑むために冒険者ギルドに用があるんだ」


「私はこの町の町長兼、冒険者ギルドのギルドマスターだよ」


「「え!?」」


俺達は驚愕した

目の前に立つおばあさんは腰が曲がって杖をついている、体が小刻みに震えてるようにも見える·····

町長ならまだしも、ギルドマスターには見えなかった

今まで出会ってきたギルドマスターは筋骨隆々で、歳の割に若く見える人達だったから余計にだ


「昔はピチピチの冒険者じゃったんじゃ」


俺が考えていることを読まれたのか、おばあさんに言われた


「知っておるじゃろうが、あのダンジョンは北のダンジョンを攻略した者しか入ることは出来んよ

ギルドからの報告じゃと、まだ攻略者は2人しかおらんらしいからの、その2人が来るまではあの塔には誰も入れん」


「それなら問題ない、俺達がその2人の攻略者だ」


「何を馬鹿なことを言っておる、北のダンジョンが攻略されたのは2日前じゃぞ?ノースからサウスまでどれほど距離があると思っておる、老いぼれババアだと思って適当なことを言うでないぞ!」


おばあさんが杖を振り上げて怒ってしまった

確かに普通の冒険者ならこの距離を2日で来ることは出来ないだろう·····

ギルドはどうやって情報共有してるのか気になるが、それよりも信じてもらうのが先だ


「俺達がその攻略者で間違いないんだが·····どうすれば信じてくれるんだ?」


「ふん!どうせ言っても意味は無いじゃろうが、攻略者は緑の宝玉を持っているらしいからの、それを攻略者の証として確認することになっておる

お前達の様な若造が攻略者だとは思えんがな!」


「これの事だな」


俺はアイテムボックスから出した宝玉を袋から出して見せた


「なっ!本当に攻略者·····じゃと!?」


おばあさんが心臓が止まるんじゃないかと言うほど驚いている


「どうすれば2日でここまでこれるんじゃ?

海を渡るだけでも、10日はかかる距離じゃぞ!?

まさか、偽物の宝玉か?」


「すまないが、それは教えることは出来ない

これは正真正銘本物だ」


この距離を2日で来れるのは俺たちぐらいだ

いや·····もう2人、レン達なら魔導船で来れるか·····

まぁ、態々教える必要も無いだろう


「移動方法は教えてくれんか·····まぁええじゃろ

宝玉が偽物かどうかは、塔に行けばわかるからの、付いて来るとええ」


おばあさんが塔に向かって歩き始めたので、俺達はあとを付いて行くことにした


おばあさんは瓦礫だらけの町を、軽い足取りで進んでいく

見た感じ80歳ぐらいのおばあさんの動きとは思えない




「この塔もすごいデカいね·····」


俺達は塔の真下に来た、リオが塔を見上げている


「ほれ、そこに祭壇があるから、宝玉を乗せてみるとええ」


おばあさんが言う方を見ると、北のダンジョンで何回も見た祭壇があった

この祭壇には、本が置かれていない代わりに、宝玉が収まりそうな窪みがあった


「入れてみるか·····」


俺は宝玉を祭壇の窪みに填めた

すると·····祭壇の周りが白く光り始めた

足元には魔法陣の様な模様が描かれている


「この感じは·····ダンジョンから出る時と同じか

リオ!ダンジョンの中に転移するみたいだ、こっちに来い」


「え!?もう行くの?」


リオが慌ててこっちに走ってきて、俺の手を取った

視界が白一色に染まる·····


「な、なんじゃと·····本物の宝玉じゃったのか·····ということはあの2人が本当に攻略者·····」


おばあさんがワナワナと地面にへたり込みながら呟いた




視界がハッキリしてくる·····

目の前には川があった


「ダンジョンの中に来たみたいだな····瘴気が満ちている」


俺の体に瘴気がどんどん吸収されていく

同時に魔力が回復していくのが分かる


「今度はどんなとこなんだろ·····森みたいだけど·····」


「ここは渓谷みたいだな」


マップを見ると細長い道が続いている

周りは直角の崖がそびえていて、頂上が見えない

たぶん頂上は存在しないのだろう


「それじゃすぐに攻略出来ちゃうね!1本道なら歩いて進むだけだし」


「いや·····この渓谷は途中でかなり分岐しているみたいだ」


マップで確認すると、まるで木の枝のように幾重にも分岐していることがわかった


「とりあえず初めの分岐まで行ってみるか」


「長くなりそうだね·····」


俺達は渓谷を川沿いに上流へと歩いていった



しばらく歩くと、初めの分岐にきた

分岐も崖になっていて頂上が見えなかった

北のダンジョンの攻略法は使えないようだ


「上から確認することも出来ないか·····」


「どっちに進むの?」


マップで確認してみたが、マップの表示範囲を超える程の広大なダンジョンだ

目的地を見つけることは出来そうにない


「仕方ないな·····とりあえず、適当に進んで、マップに祭壇が表示されるまで行って見るしかなさそうだ」


マップで見た感じだと、細かく分岐はしているが、合流している道もあるので、後から修正が効くはずだ


「それじゃ、右に行ってみよ!」


リオが決めた右に行くことにした


「次も右ー」

「左!」

「左に行ってみよ」

「右かなー?」


「祭壇はまだー?」


ここまでリオが決めた道に進んできたが、ずっと川を登るだけで何も無かった


「祭壇は表示されていないな·····というより、ここまで瘴気の魔物が出てきていないな」


ここまで、かなり歩いてきたが、魔物は一切現れていない


「ジンくんが瘴気を吸収しちゃってるから、魔物の分が無いんじゃない?」


「そんなわけないだろ·····」


そんなわけがあるはずがない·····そう思いながらも、無意識に吸収している瘴気を意識的に吸収しないようにしてみた

すると·····少し離れたところに瘴気が集まり始めた


「俺は空気清浄機かなにかか·····?」


俺は愚痴を言いながら、血刀を構えた

瘴気が集まり、形を作っていく·····

現れた魔物は4足歩行で胴長で尻尾が太く長い


「あれはトカゲか?かなりデカイが·····」


鑑定してみると


【ミアズマリザード】Lv.50 / ランクB

【スキル】ー

【補足】瘴気の塊


大きさは10m近くある

今までトカゲ系の魔物は出てきたが、3m程の魔物だっが、ここまで大きくなると、パッと見、恐竜だ


『ギィイイイ!!』


ミアズマリザードが叫びながら走ってきた

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