第56話 コダパウア王国の塔のある町


「よし!いくか!目指すはコダパウア王国のサウスって町だ!」


「おー!」


魔力を込めると、水の抵抗を受けずに魔道二輪が加速していく

一瞬で陸地が見えなくなった


「ねぇ!早過ぎない!?落ちたりしない!?」


リオが、俺に強く掴まりながら叫んだ


「魔力で操作出来るから大丈夫だ!」


俺達はエンジン音を鳴らしながらひたすら進んだ





「やっとか·····」


やっと、陸地が見えてきた

マップと太陽の位置を確認しながら走っていたが、中々陸地が見えなかったので、内心焦っていた

夕日で海と大地が赤く染っている


「はぁー!限界だ!」


上陸した俺は、手足を広げて砂地に寝転んだ

瘴気があれば、尋常じゃない早さで魔力が回復するはずなのに、海の上だと魔力の回復が追いつかなかった

海上は瘴気が薄いのかもしれない


「リオ、今日は異空間で休もう·····何突っ立ってんだ?··········」


リオに声をかけると、上陸した大陸を見ていた

俺は立ち上がって、リオが見ている方向を見渡して固まった


「砂浜かと思ったら、砂漠なのか·····」


「やっぱり、これって砂漠だよね·····」


目の前は見渡す限り、砂漠地帯が広がっていた

マップで確認しても、見える範囲には砂しかない

コダパウア王国は砂漠の国なのかもしれない

俺とリオは、北のダンジョン3層目の砂漠を思い出しながらため息をついた


「とりあえず、異空間に行くか」


「そうだね·····」


リオにゲートを開いてもらい、砂漠と海を照らしながら沈む夕日を見ながら、異空間に向かった

俺達は風呂を済ませて、簡単に食事をした後、直ぐに意識を手放した




「体調はどう?」


「あぁ、問題ない、魔力も魔道二輪を動かす分は回復できたしな」


一晩ぐっすり寝た俺達は、コダパウア王国の砂漠地帯に向かうために準備をしていた



「それじゃ、行くか!」


「また砂漠かぁ·····」


リオが行きたくなさそうに、ゲートを開く

俺はリオを、無理やり押してゲート通った


「寒っ!」


「何だこの寒さ·····」


砂漠なのに、寒い

暑いと思いながら砂漠に来たので、余計に寒く感じる


「そう言えば、砂漠は、放射冷却で夜から朝方にかけて冷え込むんだったな·····」


「ホウシャレイキャク?なにそれ?」


「また今度教えてやるよ·····それより、涼しい間にサウスまで移動するぞ」


俺はアイテムボックスから魔道二輪を取り出し、魔力を補充していると、日が登ってきた


「確か、サウスは南東だったな、さすがに見えないよな·····」


マップで南東を確認したが、まだ表示される距離じゃなかった

俺達は魔道二輪でサウスに向かうことにしたが·····



「砂が·····リオ、バリアを頼む」


少し進んだところで、魔道二輪を停めた

砂漠の砂が巻上がる中を、魔道二輪で進むと、目も開けていられない

既に、口の中は砂だらけだ

リオにバリアを貼ってもらい、再度サウスへ向かった

魔道二輪を使う時は、バリアは必須かもしれない



しばらく、魔道二輪を走らせていると、遠くの方にかなり高い塔がうっすらと見えてきた


「あれってダンジョンじゃないか?」


「え?ほんとだ·····南のダンジョンみつけちゃったね」


「とりあえず、ダンジョンに向かって進んでみるか」



「町だ·····北のダンジョンと同じで、町の中心に塔があるみたいだ·····」


ダンジョンがマップに表示される距離まで来ると、ダンジョンの周りに町があることが分かった


「それっておかしくない?南のダンジョンはこの前出てきたはずだよね?」


俺達が、北のダンジョンを攻略した時に地揺れがあったと言っていたので、その時に塔が現れたと思っていたが·····


「とにかく行ってみるか·····」


俺達は塔がある町に向かった




「これって·····」


「ほぼ、壊滅状態だな·····」


塔がある町に着いた俺達は、町を見て固まった

家は崩壊し、町を囲んでいたであろう壁は崩れていた

大規模な地震の後のような、悲惨な光景だった


「こんな時に旅人さんか?」


俺達は立ち尽くしていると、おばあさんに話しかけられた、この町の人だろうか


「ここの町の人ですか?」


「あぁ、そうじゃ·····この状態を町と呼んでええんじゃったらな·····」


「なんでこんなことに?」


「あのバカでかい塔が見えるじゃろ·····あれが地面からはえてきての·····」


俺達がダンジョンを攻略した事で、町を崩壊させてしまったらしい

怪我をした人もいるかもしれない


「塔が地面から出てきて町が壊滅したんですね·····怪我人とかは出ませんでしたか?」


俺は申し訳ない気持ちになりながらも、質問をした


「ん?違うぞ、あの塔が出来たことで、国が金を出して町を建て替えておるんじゃ」


「「へ?」」


「ここは『サウス』と言う町での、砂漠の中にある小さな町じゃったが、あの塔が出来たことで、国が観光地として盛り上げる事になっての、なんでも、ダンジョンとか言う珍しい塔らしいわい」


「そ、そうなんだ·····」

「そうなんですね·····」


「まだ建物は建設途中じゃから、ここに来ても何にもないぞ、向こうに町人のテントがあるから用事があるなら来るとええ」


そう言って、おばあさんはテントの方に歩いていった


「俺達が原因で街が崩壊したんじゃなくてよかったな·····」


「ほんとだね·····」


俺達はしばらく、建て直しのために壊された町を見ていた

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