第21話 複合魔法


異空間で目を覚ました俺達は、また洞窟に戻ってきていた


「とりあえず、今後は空間制御エリアコントロールで何が出来るか色々試してみてくれ」


空間制御エリアコントロールについては、リオの発想に任せることにした

俺のイメージだけで固めてしまうのは、勿体ない気がしたからだ


「いつでも街に戻れることだし、とにかく奥に進んでみるか」


ゲートのおかげでいつでも街に戻れる

しかも、いつでもベットで寝ることも出来る


『異空間に風呂を作るのもいいかもな·····』



「!?」


呑気に、今後のことを考えているとマップに、かなりの量の魔物の反応があった


「リオ、魔物だ!今回はかなり多いぞ!」


マップで確認すると、ファングウルフの群れのようだ

通常は3〜5匹の群れで行動するはずなのに、こっちに向かっているファングウルフは·····


「ファングウルフが24匹だ!俺が引きつけるからリオは魔法でサポートしてくれ!」


そう言って、群れに一気に突っ込む

ファングウルフは俺達に気づいているようで、近づいてきた俺に向かって噛み付いてきた


俺は血刀を2本手に持ち、闇魔法で影を立体化させて、光魔法でも刀を作り出す

合計6本の刀で、ファングウルフ各1匹ずつに斬りかかる


「同時に扱うの難いな·····」


刀1本1本は全て俺の思うように動かせるが、数が増えれば扱いにくくなってくる、今回は1対1ではなく、1対複数だから余計にだ·····



10匹倒したところで、標的を俺からリオに変えたファングウルフが刀の隙間を通り抜けていく


「リオ!そっちに1匹行ったぞ!」


リオに注意を促すと


『ッズガーン!!』


後ろで物凄い光と音がした

暗闇で、いきなり光を見たことで一時的に視力を失い、凄い音で耳鳴りが酷い·····


俺は視力と聴力が回復するまで、動かずに辺りを警戒する

視力は光を直視したわけではないので、微かに周りが見えている

こっちを向いていた、ファングウルフ達は突然、視力と聴力を失って混乱してるのか走り回って、壁に激突して、気絶して動かなくなっている

リオはマップ上で確認しているが、動かずじっとしている



「リオ!大丈夫か?」


「·····」


ある程度回復したところで、リオが無事か確認する

リオを見ると、一点を見つめて動かない


目を開けたまま、気絶しているようだ·····


「リオ!起きろ!」


リオを揺すって無理やり起こす


「ん·····あれ?·····」


「お前がやったのか?一体何をしたんだ?」


「私·····夢中で·····ファングウルフが·····風魔法を·····魔法がぶつかって」


リオは混乱してるのか、言葉がまとまっていない


「順番に何をしたか教えてくれるか?」


「えっと·····ファングウルフが向かってきたから·····夢中で風魔法の竜巻と土魔法の玉を····ファングウルフに飛ばしたら·····魔法同士がぶつかっちゃって·····すごい光と音が·····」


そこまで聞いところで、リオに向かっていたファングウルフを確認すると


「丸焦げだな·····地面まで真っ黒だ·····もしかして爆発系の魔法か?」



試しに風魔法と土魔法をぶつけてみる


竜巻と土の玉がぶつかり、土の玉が細かくなって竜巻の中で回り始めた

しかし、そのまま地面に落ちて何も起こらなかった


「んー何も起こらないな·····他になにかしなかったか?」


この世界に爆発魔法なんてない、あればとっくに俺が使っている·····リオが作り出せたなら、なにか方法があるはずなんだが·····


「あ!そう言えばぶつかった時に、破片がジン君に飛んでいくのが見えて、咄嗟に空間制御で竜巻を覆った·····」


「空間制御か·····リオ!もう一度再現してみてくれ、今度は威力を抑えめで頼む」


もし成功しても被害が出ないように、威力を抑えて実験してみることにした



リオが作った竜巻と土の玉がぶつかった所を、空間制御で包み込む

薄い膜で覆われた球体になった

すると、球体の中を、土の玉が高速回転し始めた

土同士がぶつかりあい、どんどん細かくなったと思ったら球体が帯電してるのか、パチパチとスパークし始めた

徐々に激しくなっていき、限界を超えたところで


『ッバーン!!』


凄い光と音が辺りを包んだ

先程のリオが作り出したものよりは小さいものだったが、かなりの威力があった·····


「制御は出来そうか?」


「んー作った空間を動かしたりはできるけど、あの光を動かしたりは出来ないみたい·····あの光はなんなの?」


あれって電気だよな·····そう言えば、電気というものはこの世界にないのか

魔道具で灯りを作ることは出来るが、あれは光魔法を魔道具化させたものだ


「俺の世界では、電気と呼ばれていたものだが、この世界で1番近いものは雷だな」


「じゃあ、私·····雷を作ったってこと!?」


「空間制御の新しい使い方だな!複合魔法ってところか?名前は雷球なんてどうだ?」


たまたま出来た魔法だが、雷魔法が手に入った


空間制御·····やはりかなりのチートスキルだな、ユニークなだけある


「雷球か·····」


リオがちょっとニヤニヤしてる


「リオにしか使えない魔法だ!頑張って使いこなせよ」


「うん!制御してみせるわ!」


ファングウルフをアイテムボックスに収納した俺達は、引き続き奥へ向かうことにした


リオが小さい声で『私にしか使えない魔法·····』とかブツブツ言っているのが聞こえた




日数にして15日間、洞窟に泊まり込んだ

と、言っても異空間で寝れるから魔物に寝込みを襲われることもないし、ベットでぐっすり眠ることができる

食料も、ファングウルフの肉が大量に手に入るので困らない

飲水も水魔法があるので問題なかった


かなり快適な、洞窟ライフを送りながら、リオの魔力増強の修行を行うことが出来た


この15日間、新しく出た魔物はいない

ちなみに一番奥まで行ったが何も無かった




事件らしい、事件と言えば·····



「あぁ〜極楽·····」


異空間に念願の風呂が出来たことだ

しかも露天風呂


これはリオに作り出してもらった

この世界には風呂はあるらしいが、露天風呂はない

そのため、イメージを伝えるのに苦労したが、いい具合のものができた

何度も作り直したので、リオの魔力がよく枯渇した

いい修行になったと思う·····


ちなみに、お湯は水魔法と火魔法でいい湯加減だ

念のために言っておくが、混浴じゃない、湯船の真ん中に、木の板を挟んで男女に分けている

脱衣所も分けているので、入ってしまえば完全に別々になる



なんにしても、これでいつでも、どこでも快適な生活を送ることが出来るようになった


いつでも旅立てる準備が出来た俺達は

一度、宿屋に戻ることにした

宿屋で寝泊まりしてないのに、金だけは払っている状況だ·····ベットを借りてるとはいえ·····


『自分たちのベットを買おう·····』


宿に戻った俺は、静かに心に決めた

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