第19話 新たな目標
「……と、言うことで、ジン様には王都まで来ていただきたいのです!」
話としては、Bランク最速記録を塗り替えそうな冒険者の噂が、王家の耳に入ったらしく、わざわざ王都から馬車を飛ばして、この町まで来たらしい。
しかも、町に着くともうBランクになっていたからすぐにでも話がしたいと思っていたそうだ。
そして、王家専属の冒険者として雇いたいので、一度、王都まで来いという事だった。
「なるほど……では、丁重にお断りいたします」
王家専属とか冒険者の意味が無い、自由に冒険したり依頼をこなせるのが冒険者の魅力だと、俺は思っている
装備から何から揃えてもらえるのは魅力だが、装備に困っているわけでも、金に困っているわけでもないので断ることにした
「そうでしょう、そうでしょう! 王家専属の冒険者など魅力しかありません! 断るのが当たり前でしょうとも!…………なっ!?
今、断ると……!?」
ルーシーとその横のランディが口を開けて固まっている。
「はい、お断りします。現状、装備にも金にも困っているわけでもありませんし、自由のない冒険者は冒険者ではないと思いますので。他に候補がいらっしゃるなら、そちらを当たってください。それでは……」
そう言って、俺はギルドから出て西門に向かった。
引き止められて、長々話すのは時間の無駄だと判断して、2人が固まっている間に出ていくとにした。
※ ※ ※ ※
「おまたせ! それじゃ洞窟に向かおうか」
「あれ? 早かったね、もういいの?」
西門に着くと、リオが待っていたので声を掛けた。
俺達は、食事をしながら、洞窟へ向かった。
食事と言っても、シャドウベアーとファングウルフの合挽き肉に、ポイズンリザードの肉を少し入れて、全調味料を入れて焼いた、ハンバーグのような塊だ。
スキルを手に入れるのには、便利なので大量に作っておいた。
料理スキルのおかけで、味は自然と美味しくなるのは不思議だ……さすがに毎食これだけは食べれないので、食事の前に一口サイズにしたものを食べるようにしている。
リオに、この『スキル肉』を食べさるのは、今日が初めてだ。
ちなみに今の俺達のステータスはこんな感じだ。
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【名前 / 性別】ジン/男
【年齢 / レベル】17歳 / Lv.27
【スキル】料理:Lv.5 / 剣術:Lv.3 / 槍術:Lv.1 / 火魔法:Lv.3<0.8> / 水魔法:Lv.3<0.2> / 風魔法:Lv.3<0.6> / 土魔法:Lv.3<0.0> / 闇魔法:Lv.1<0.7> / 身体強化:Lv.4<2.3> / 毒耐性:Lv.2<0.1>
【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 /
【名前 / 性別】リオ / 女
【年齢 / レベル】16歳 / Lv.10
【スキル】火魔法:Lv.1<0.1> / 水魔法:Lv.1<0.1> / 風魔法:Lv.1<0.1> / 土魔法:Lv.1<0.1> / 闇魔法:Lv.1<0.3> / 光魔法:Lv.3 / 身体強化:Lv.1<0.6> / 毒耐性:Lv.1<0.2>
【ユニーク】
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リオが一瞬で全魔法をコンプリートしてしまった。
俺の剣術スキルも、レクスとの模擬戦でレベルが上がっている。
食後は、全属性の魔法を練習させながら、洞窟に向かった。
※ ※ ※ ※
洞窟に着いた俺達は、エレメンタルを狩りまくっていた。
エレメンタルは魔法の練習も兼ねているので、リオに倒させている。
途中、ファングウルフもいたので、食材調達のために倒して、アイテムボックスに収納した。
ちなみに、パーティを組めば経験値が均等に分けられるらしい、経験値とかレベルとかよくわからないシステムだが、この世界の常識だからスルーしよう。
「ふぅ、こんなもんだな」
「……やっと、終わった、のね」
「リオ、体力ないな……」
あらかた狩り終わって、リオをみると完全に燃え尽きていた。
仕方ないので、魔道二輪に乗せて帰ることにした。
町までは1分程で着いた。2人乗りでも、凸凹道を段差を感じさせないほど、スムーズに進むので乗り心地がかなり良かった
西門の門番はかなり驚いていたが、ギルドカードをみせて町に入り、ギルドに向かった。
ギルドに入るなり、ランディがすごい形相で飛んできた。
「ジン! 帰ってきおったか! 話があるからこっちへ来い!」
あのまま出ていったのは、不味かったのかもしれないな……仕方ないので、ランディに従って応接室に向かったーー。
※ ※ ※ ※
応接室でソファに腰掛けると
「ジンよ、本当にあれで良かったのか? 王家専属となれば、何不自由なく生活できるのじゃぞ?」
ランディがそんなことを言ってきた。
「いいもなにも、俺は不自由なく生活できる環境が、不自由でしかないと感じたから断ったまでだ。後悔はないからいいんだ。それに、俺が王家専属になったらリオは放ったらかしになるんじゃないのか?」
リオの記憶探しの旅に付き合う約束している手前、すっぽかして王都に行くのも断った理由の一つでもある。
「ふむ、確かにそうじゃが……
ジンが決めたことじゃからのぅ、ワシがとやかく言うもんじゃないな……
それより、ジンよ、1つ見て欲しいものがあるんじゃが」
ランディが、急に改まって、古びた依頼書を取り出した。
「王家専属となっておっても、王都で見せられていたと思うが、Bランクになった者は、嫌でも見ることになる依頼書じゃ……」
俺は、テーブルに置かれた依頼書をのぞき込んだ。そこにはこう書かれていたーー。
『4つのダンジョンを攻略せし者に 幸福が与えられん』
依頼内容も報酬も何も書かれていない、ただ、これだけが書かれており、一番下には『北のダンジョンを攻略した者に道が開かれる……』とだけ書かれていた
「これは? 依頼書と言うより……何かのヒントみたいなんだが」
「これはのぅ……いつ、誰が、依頼を出したかわからんのじゃ……
ダンジョンは、かれこれ100年以上は誰も攻略されておらん。
この依頼は王家が責任を持って管理しておっての、各ギルドに貼られているのじゃが、報酬を決めかねておる……金や名誉などを候補に上げておるが……」
「ここに書いてある、幸福が報酬なんじゃないのか?」
「そうだとは思うがのぅ、誰も信じちゃおらん……
言い伝えでは、全てのダンジョンを攻略した者には『願いが叶う』と言われおるがな……」
願いが叶うか……元の世界に戻ることも叶うのだろうか?
「北のダンジョンってどこにあるんだ?
場所は分かってるのか?」
北と言われても、どこを基準にしてるのかもわからない内容だ。
「ふむ、それなら分かっておるぞ、王都から北に、海を渡った場所にダンジョンはある。ワシも若い頃に行ったことがあるが、直ぐに逃げ帰ってきた……
他のダンジョンは見つかっておらんからのぅ、まずは北のダンジョンを攻略するしかなさそうじゃ」
ランディも若い頃は、冒険者としてかなり腕が立ったらしいが、それでも攻略出来なかったらしい。
攻略すれば、次のダンジョンに行けるようなことが書いてあるので、他のダンジョンはとりあえず、後回しだろう。
「なるほどな……まぁ興味はあるが、なぜ俺に?」
態々見せなくても、Bランクの依頼ボードに貼ってあるなら、勝手に見ると思うが……
「ジンなら、もしかすると、攻略出来るかもしれんと思ったんじゃ……それとな、金を持っておる貴族連中が、冒険者を雇って攻略に躍起になっておるんじゃ」
「王家もそのひとつってことか……」
王家や貴族が躍起になる理由があるのだろうか?
ダンジョンを攻略したら手に入る『幸福』が目的か……?
「どうじゃ! 受けてみんか?
ワシは死ぬまでに、あのダンジョンの最後に何があるのか知りたいんじゃ……そのためにギルドマスターになったのにのぅ……」
「マスターの頼みだからって訳じゃないが、やりたいこともないし、見に行くだけ行ってみるか……リオはそれでも構わないか?」
リオの記憶探しの旅のついでに、ダンジョンとやらを見に行くことにした。
念の為、リオの意見も聞いておく。
「私はジン君について行くだけだから…………一緒にいれるなら問題ない……」
最後の方は聞き取りにくかったが、俺について来てくれるらしい。
「そうと決まれば、リオをBランクにしないといけないな!
Bランクの依頼は、Bランク以上じゃないと受けれないからな」
リオが『よし、頑張るぞ!』って小声で言ってるのが聞こえた。
「おぉ! 受けてくれるか!
それならAランクも目指してみんか?」
「Aランクになる必要があるのか?」
Aランクの必要はなさそうなんだが……
「ダンジョンは海の先にあると言ったじゃろ?そこまで船で行く必要があるじゃろ」
そりゃそうだが……なぜ、Aランク?
「ダンジョンまでの定期便は出ておらんのじゃ、それに乗せて行ってくれる人を探すのも手間じゃろ。
1番手っ取り早いのは、自分の船で向かうことじゃ」
そりゃそうだが、まだAランクになる必要が見えてこない
俺が疑問に思っていると、ランディが話を続けた
「この前話した、冒険者武術大会を覚えおるか?」
「あぁ、Aランクになるための大会だろ?それと船が関係あるのか?」
「実はのぅ、その大会で優勝報酬として魔導船が貰えるのじゃ!
Aランクに勝てるジンならそれが手っ取り早いじゃろ!」
ランディがニヤニヤしながら答えた。
「そう言うことか……それなら、優勝するしかないな!」
ひとまず俺達は『冒険者武術大会』に出場することになった……その前にリオをBランクにしないといけない。
武術大会開幕まで残り2ヶ月……まずは修行だーー。
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