第18話 冒険者武術大会と王都の使者
「そ、そこまでじゃ!」
現実逃避から戻ってきていた、ランディが声を上げた
俺は血刀をブラッドチェーンに戻し、闇魔法も解除する
「まさか、ジンがここまでやるとはな·····完敗だ·····」
レクスが悔しそうに地面に座り込んでいる
「ジンはもう、Bランクの器ではないのかもしれんな·····今度の武術大会が楽しみじゃわい!」
ランディが興奮気味によく分からない単語を口走った
「武術大会?なんだ?それ」
「武術大会を知らんのか!?BランクがAランクになるために出場する大会じゃ!冒険者ならみんな知っておるぞ!2ヶ月後に王都で開かれるんじゃぞ!?」
「え?そんなのがあるのか·····でも、今朝Bランクになったばかりだから、まだ挑戦しなくていいかな」
ただでさえ、Bランク最速記録を塗り替えてしまって悪目立ちしてるのに、これ以上目立ってもいいことが無い
「そうか·····まぁ武術大会は毎年やってるでの、また来年にでも受けたらええじゃろ·····」
ランディさんが残念そうに言った
「結局、俺とレクスの模擬戦になっちゃったけど、リオは合格でいいんだよな?」
念の為、確認しておく
「問題ないぞ、Aランクに勝てる奴が同行しておるんじゃ、素人でも大丈夫じゃろ」
そんなんでいいのか、冒険者ギルド·····
まぁ有難くお言葉に甘えておこう、リオはこれから強くするから問題ないしな
「リオ、そう言うことだから、冒険者登録おめでとう!」
「ありがと!」
リオが満面の笑みで答えた
美女が笑うと何だか照れるな·····
その後、冒険者について、エルさんからリオに細かく説明してもらい、リオと俺でパーティを組むことにした
昼過ぎだったので、ギルドで飯を食べたあと、リオの強化のために街の外に出てきた
「それじゃ、早速強くなるために修行なんだが、その前に俺のことについて話しておこうと思う」
これから行動を共にする上で、お互いに出来ることを把握しておくことは大切なことだ
「話す前に一つだけ、守って欲しいことがある」
「守って欲しいこと?」
リオが不安そうにこちらを見ている
「俺の能力のことだが、他言しないようにしてくれ、知られたくない能力が多いんだ·····」
「わかったわ!ジン君の頼みだもん、絶対に他言しない、約束する!」
「わかった、それなら·····」
俺はリオに、全てを話した
俺が転移者であること、
そして、鑑定でリオのステータスに光魔法と
リオは、静かに俺の話を聞いていた
俺が全て話終えると、ゆっくりと口を開いた
「確かにそれは他言できないわ·····ジン君が私を強くできるって言った理由がわかったわ!私、ジン君の役に立てるように、頑張って強くなる!」
リオがやる気に漲っている
理解してくれてよかった
「それじゃあ強くなる前に、光魔法と空間制御で何が出来るかやってみてくれ」
そう言うと、リオが立って「んー」とか「えい!」とか色々やっているが何も起こらない
「何も出来ないみたい·····私、本当にそんなスキル持ってるのかな?」
リオが不安そうに聞いてきた
持っているのは間違いないが、使い方が分からないんだろう·····何かイメージ出来るものがあればいいのかもしれないな
「それじゃ、光の剣を作ってみてくれ」
そう言って俺は血刀を、リオに見せる
イメージしやすいものがあれば作りやすいはずだ
「んー!っあ!」
リオが手を前に出して、力を入れた
手の前に光の刀が作り出された、見た目は血刀と同じだ
「できた!できたよ!」
リオが喜んでいるが、すぐに消えてしまった
「なんか·····すっごい疲れた·····ジン君はあんなの2本も出して戦ってたの?」
魔力をかなり使ったようで、疲れ切っている
そういや、俺は他の人より魔力が高いんだったな
「んーまぁ修行すれば大丈夫だろ!それより光魔法が使えたんだ、よかったな!」
修行で身につくか分からないが、他に方法が思いつかないのではぐらかす
「今日は魔力をかなり消耗してるみたいだから、明日から本格的に修行するぞ!」
そう言って、俺とリオは宿屋に戻ることにした
『狐の尻尾亭』に戻ってきた俺は、2部屋取ろうとしたが、リオに「自分のためにお金を使われるは、申し訳ない」とか言われた
今更だと思ったが、そのまま部屋に戻ってきた
宿屋の飯を初めて食べたが、カインさんが食べた方がいいと言うだけあって、かなり美味かった
交代交代に部屋を使い、体を拭いて、寝ようとした時、どちらがベットで寝るかで揉めた
俺はリオを床で寝かすわけにいかないので、ベットを譲ろうとしたが、リオは、この部屋は俺が借りた部屋だからベットは俺が使うべきだで、平行線だった
「わかった·····それなら一緒にベットで寝よう!それが嫌なら俺は床で寝る!」
話が進まなかったので無理やり俺が床で寝る方法を絞り出した
「え·····わ、わかったわ!それじゃ一緒に寝ましょ!」
リオの顔が真っ赤だ
確実に断ると思っての提案だったのに一緒に寝ることになってしまった·····
「それじゃ·····おやすみ」
「おやすみなさい·····」
お互いに気まずい中、眠りについた
リオには、早く稼いでもらって2部屋取ろう·····
朝、目覚めるとドアの下に、手紙が挟まっていた
内容を確認すると、『王都より使者が来ているので、冒険者ギルドに来い』と書かれていた
王都に知り合いなんて居ないが····
呼ばれてるから行くしかないよな·····
「どうしたの?」
目を覚ましたリオが、難しい顔をしている俺に聞いてきた
「いや、ちょっとギルドに行ってくる、終わったらエレメンタルの洞窟に行くから、エレメンタルの依頼を受けて、西門で待っててくれ」
俺はリオにそう告げると、足早にギルドに向かった
ギルドに着くと、ドアの前には豪華な馬車が停められていた
とりあえず、ギルドに入る
扉を開けると、ランディと男性が話しているのが見えた
ランディがこちらに気づいたようで、向かってきた
「ジン、おはよう。すまんな呼び出してしまって」
「いや、大丈夫だ。使者と言うのは?」
「あぁ、この方が王都からの使者の·····」
「ジン様ですね·····私は王都から来ました、使者のルーシーです。はじめまして」
ランディが紹介しようとすると、横に着いてきていた男性が自己紹介をした
「はじめまして、冒険者のジンと言います。今回は態々どうされたんですか?」
直球で話を聞く
「ここで話すのも·····周りに目がありますので、場所を返させてもらっても?」
ルーシーさんがそう言うので、ギルドの応接室に向かうことになった
応接室に移動した俺達は、ソファに腰掛け、ルーシーさんから、話を聞いていた
「·····と、言うことで、ジン様には王都まで来ていただきたいのです!」
話としては、Bランク最速記録を塗り替えそうな冒険者の噂が王家の耳に入ったらしく、わざわざ王都から馬車を飛ばしてこの街まで来たらしい
しかも、街に着くともうBランクになっていたからすぐにでも話がしたいと思っていたそうだ
そして、王家専属の冒険者として雇いたいので、一度、王都まで来いという事だった
「なるほど、では、丁重にお断りいたします」
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