第15話 冒険者ギルドの守秘義務
俺は今、地上を歩きながら町を目指していた。
来る時は1人で3時間走った距離を、今度は女の子を背負いながら歩いてる。
背中がちょっと幸せだ……
ちなみに、盗賊の隠れ家にあった盗品は、全てアイテムボックスに収納済みだ。一応盗品は盗賊を倒した人の物になるので、全部俺の物という事だ。
「この子、本当に何者なんだ……」
俺は、鑑定画面を見ながら呟いた。
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【名前 / 性別】リオ / 女
【年齢 / レベル】16歳 / Lv.10
【スキル】光魔法:Lv.3
【ユニーク】
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「光魔法持ってる人初めて見たな。それに、ユニークスキルも持ってる……」
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【
空間を制御、操作することができる。
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そのままのことしか書いていなかった。
そもそもこの世界の魔法やスキルは、その人のイメージによって変わる。
使う人がこうしたいと考えたことが、スキルのレベルや精神力の高さによって、実現できれば発動するしできなければ何も起きないという事だ。
ユニークに関しては、この子が起きるまで待つしかなさそうだ。
※ ※ ※ ※
町に着いた頃には日が暮れて、魔道具の外灯が町中を照らしていた。
俺は、門番に銀貨1枚支払い、リオの手をステータス板に触れさせて登録を済ませて、町に入った。
意識不明の人を町に入れる時は、これでいいらしい。町の外に放っておいて、魔物に襲われても嫌だしな……
ギルドに着いた俺は、リオを背負ったまま中に入った。一瞬こちらを向いた冒険者達がザワついて、こちらをチラチラ見ている。
「エルさん、今戻ったよ」
受付にエルさんがいたので、声をかけた。
「ジンさん! 見たところ怪我もなさそうですね!
途中で帰ってきたんですか?
だから言ったじゃないですかー!
とりあえず、無事でよかったです!
背負ってる子はどうしたんですか?」
エルさんが一気にまくし立ててきた。
「エルさん、落ち着いて、とりあえず話したいことがあるから、一度マスターと話せないかな?」
アイテムボックスに入っている、盗賊の始末もあるのでギルドマスターであるランディに直接話せたら1番早い。
「し、失礼しました。それなら、マスターを呼んで参りますので、前回の応接室に案内しますね」
落ち着いたエルさんが、顔を少し赤らめながら、応接室に案内してくれた。
応接室で待っていると、しばらくしてランディが入ってきた。
ちなみにリオは、隣のソファに寝かせている。
「話があるそうじゃな、何かあったか?」
部屋に入るなり、ランディが聞いてきた。
「あぁ、実は盗賊の討伐に行ってきたんだが……」
「それなら、聞いておる、大規模な盗賊じゃったろ?
その様子じゃと、さすがに逃げ帰ってきたか?」
俺が説明をしようとしたが、ランディが口を挟んできた。
「いや、盗賊は全部討伐したんだが、その事で話があるんだ」
ランディがお門違いなことを言っていたので、訂正した。
「……え?」
「……全部討伐じゃと?……1人でか?」
ランディとエルさんら目を点にしながら、聞いてきた。
「それで、話なんだが、ギルドには守秘義務ってあるよな?」
2人に構っていたら話が進まないので、無理やり話を進める。
アイテムボックスのことを話す以上、守秘義務を確認しておいた。
「あぁ、守秘義務はあるぞ! エルもこの場の立会人として守秘義務は守らせるから安心せい」
「わかった。それじゃーー。」
そう言って俺は、目の前にあったテーブルをアイテムボックスに収納して見せた。
「 「!?」 」
「何をしたんじゃ!?テーブルが一瞬で消えたじゃと?」
2人ともかなり驚いているので、一度テーブルを戻して話を進める。
「これは俺の能力だ。細かいことは話す気はないが、今回討伐した盗賊47名を、全員運んできた」
2人とも何か遠い目をしている。
「それで、討伐した盗賊をどこに出せばいいか聞きたいのと、供養の方法などあれば教えて欲しいんだが……えっと、2人とも大丈夫か?」
現実逃避してる2人を呼び戻して話を進める。
「え……あぁ、盗賊は地下闘技場に出してくれ。
供養に関してはギルド側に一任してもらう決まりじゃから、そのまま預からせてもらうぞ……それと守秘義務は必ず守るから安心せい……信じる者もおらんと思うがの……」
盗賊を出す場所を確認できたので、闘技場に向かうことにした。
※ ※ ※ ※
「これで、全員だな」
闘技場に移動した俺達は、盗賊を全員取り出し終えた。全員『首チョンパ』なのですごい絵面だ……
ギルドに用意してもらった布を被せた。
エルさんがリスト片手に、盗賊の顔と名前を確認している。
ギルド職員も結構キツイ仕事みたいだ……
「さて、報酬についてじゃが、盗賊によって報酬が変わるから、明日の朝にでも、また来てくれ、盗賊の討伐依頼は無事完了じゃ、明日の報酬の時にランクアップも済ませるからの」
ランディが今後について説明してくれたので、明日また来ることにした。
そう言えば、バイクはどうなっているだろうかーー。
※ ※ ※ ※
宿屋に戻った俺は、宿屋の裏に来ていた
ちなみに、リオは何やかんやで、ギルドに説明することを忘れていたので、今は俺の部屋のベッドで寝ている。
「ティムさん、そいつはどうにかなりそうですか?」
もう夜も遅いというのに、宿屋の明かりが溢れる、薄暗い裏庭で、ティムさんはバイクをいじっていた。
近くの椅子には食べ終えた、食器が置いてあったので、ちゃんどご飯は食べてるようだ。
「ジンさん! 何とかなりそうですよ」
『キュルキュルキュル、フイィィン、ドッ』
そう言って、ティムさんがバイクのセルを押してエンジンをかけたがすぐにエンストしてしまった。
魔道具として改造しているので、当たり前だが、ガソリンの時と音が違った。
「私の魔力だと足らないみたいです。かなり燃費が悪くなってしまいました……
今はできる限り、燃費を良くする方法を検討中なのですがーー」
「燃費ですか……一度触らせてもらっても?」
「はい、どうぞ。
ボタンを押しながら、魔力を流してみてください」
俺の魔力はみんなより多いと、エルさんが言っていたのでどれぐらい魔力を使うのか試してみることにした。
『キュルル、フイィィィン』
ティムさんに言われた通りに、セルを押しながら魔力を流すとエンジンがかかった。
どうやら、俺の魔力量ならエンストする気配はない。
「問題なさそうですね、俺の魔力なら特に燃費が悪く感じませんが……
1つ注文があるとしたら、魔力を貯めておけるようになりませんか?」
魔力が尽きかけている時に 結局乗れなかったら意味が無いので出来ないか確認してみた。
「いやぁ……ジンさんはやはりすごい方ですね!
魔力を貯蔵するシステムですか……一度考えてみます! 明日の朝を楽しみにしていてください!」
そう言うと、ティムさんが、ブツブツ独り言を言いながら、バイクをいじり始めたので、俺は部屋に戻ることにした。
部屋に戻ってきた俺は、ひとつしかないベットを見ながらどうすればいいか、考えていた。
「ベッドは1つ……この子が寝ていて起きる気配がない……女の子を床に寝かす訳にもいかないーー。」
俺は渋々、ファングウルフの毛皮を床に敷いて寝ることにした。
※ ※ ※ ※
仁が退出した後のギルドにてーー。
「あれは何なんじゃ!?
まさか伝説の空間魔法か!?」
「わかりません……ですが、ジンさんが只者ではないのは確かです……」
「そうじゃな……明日の朝にBランクにして、あの依頼を……」
「それよりマスター! 盗賊の処理を早く終わらせないと、朝になっちゃいますよ!」
「お、おぅ、そうじゃな……
あやつがギルドに来てから忙しいわい……
老体にはいささか厳しいのぅ……」
ランディとエルの夜はまだまだ長そうだったーー。
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