第14話 盗賊討伐と女の子

 

 盗賊を討伐対象にするか悩んでいたが、飲食店に迷惑をかけるなんて、定食屋の息子としては捨て置けない。


「それじゃ、今ある食材で作れるものを1人前お願いします!」


 ギルドに向かうことにした俺は、食事もそこそこに店を出た。


 味は美味かったが、おっちゃんが「本当はこんなもんじゃねぇんだ……」って呟いていた。


『待ってろ!おっちゃん!』


 ※ ※ ※ ※


「エルさん! この近辺で盗賊の討伐依頼ない?」


 ギルドに着いた俺は、すぐにエルさんの元へ飛んでいき依頼を確認した。


「盗賊の討伐依頼を受けてくれる気になったんですか!?」


 エルさんが少し嬉しそうに答えた。


「盗賊の討伐依頼の場合、パーティを組むことを推奨してるんですが……」


 パーティもいいが、パーティの場合、俺の力を全て出し切れない場合がある。

 報酬も山分けになるし、あまりいいことがない気がする。

 何より、パーティを募集すると時間がかかる。今は一刻も早く食料を奪った盗賊を懲らしめないといけない。


「いや、今回は1人で行く!

最近、食料を運搬していた馬車が、被害を受けていると思うんだが」


 俺が急かすようにエルさんに情報を出す。


「詳しいですね、でも、その盗賊達はかなり規模がおおきぃ……」

「あるなら、その依頼を受ける!」


 他の盗賊の相手をする気はないので、強引に依頼を受けた。


 エルさんの説明によると、先日被害にあった場所は、北門から出て馬車で半日程のところだそうだ。

 普通に歩けば1日かかるが、身体強化で上がった俺の足であれば、そんなに時間もかからないだろう。


 ※ ※ ※ ※


 北門を出た俺は、全速力で走り続けていた。

 3時間ほど走っているが全然疲れていない。

 身体強化の効果もあるが異世界に来てから体力的な疲れは一切ないので、他に理由がありそうだ。


 そんなことを考えているとマップに反応があった。


「7個……人の反応だな」


 道から外れた林に集まっているようだ。ここからは、まだ4kmほど離れている。

 俺は、少しスピードを落とし、バレないように近づいていく。


 しばらく進むと、確認できる距離まで近づけた。

 林の中にいるのが、マップにしっかり表示されている。音を立てないように細心の注意を払い距離を詰めていく。話し声が聞こえてきたーー。


「今日は女一人か! 仕方ねぇ一度戻ってまた夜にでも仕切り直すぞ!」

「へぃ! 最近は警戒されてるみたいで、この辺の道を馬車が通りにくくなってやすね」


 盗賊らしき奴らの話し声が聞こえてきた。

 奴らの1人が、女の子を担いでいる。女の子は意識を失っているのか、男に担がれて力なく揺れている。

 男達がどこかに向かい始めたので、バレないように後をつける。



 20分ほど歩いたところで、男達が穴に入っていった。隠れ家にでも繋がっているのか、穴の入口は入念にカモフラージュされている。

 もし、道に迷ってここに来たとしても、まさかここに穴が空いてるとは誰も思わないだろう。


 しばらくの間、マップで盗賊達の動きを見ていたが、そのまま奥に進んで行ったようなので、俺も後を追いかけることにした。


 穴は一度下に掘った後に、横穴を掘っているようだ。いくつか分岐点があったが、マップで確認しながら、男達が通った道を辿った。

 通路に明かりは無いが、天井の所々に、小さい穴が空いていた。穴は地上に繋がっている様で、光と空気が入り、横穴は薄暗かった。


 男達の後を追って行くと、洞窟と繋がった。


「!?」


 俺は、洞窟の中をマップで確認して驚愕した。

 洞窟の中には、かなりの人がいた。この洞窟には、さっきの女の子見たいに、連れてこられている人もいるかもしれないので、マップで盗賊だけ赤色で表示されるように設定すると……盗賊は47人いた。

 どうやら、盗賊じゃないのは1人だけのようだ。多分、さっき担がれていた女の子だろう。


「1人ずつ確実に、殺っていくしかないな……」


 そう言いながら、俺はアイテムボックスから取り出した一口サイズの肉を口に放り込んだ。


 これはシャドウベアーの肉だ。


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【シャドウベアーの肉】

<闇魔法:Lv.0.4 / 身体強化:Lv.0.3>


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 スキルが必要な時に直ぐに食べれるように、味付けや火入れは終わっている状態でアイテムボックスに収納していた。ちなみに、飯屋であまり食べてないので、スキルは入手できた。


 闇魔法を手に入れた俺は、影に潜むことをイメージすると、姿が薄くなり壁と同化したようになった。


「これいいな……とりあえず近場から攻めるか」



 一人で行動してる盗賊がいたので、背後をから一気に首を刎ねた。


『初めて人を殺した……』

 ーー少し体に力が入った。


 この世界では、どんな理由であれ盗賊として活動していれば、死罪となるらしい。

 だからと言って、俺が殺していい理由にはならない。

 俺の罪が消えるとは到底思わないが、せめて俺が殺した盗賊は、全員回収し、弔うことにした。


 俺はこの時、『敵意を向けてくる相手には全力で対応すること』を心に決めた

 そうじゃないと俺が俺でなくなる気がしたからだ……


 ※ ※ ※ ※


 それから1時間ほど盗賊を倒し続けた。

 1人でいるやつには、背後から一気に殺した。

 複数人で集まっている奴らには、闇魔法で目隠しをしてから、全員無抵抗にして殺した。

 全員『首チョンパ』だ。


 中には「俺は今日4人殺ってきたぜ」とか「女は犯せるだけ犯したら奴隷行きだ」とか「今日見つけた女は上物だから後で犯そう」だとか自慢げに話している奴がいた。


 やっぱり盗賊は全員クズだな……


 47人いた盗賊も残りは3人になった。

 この洞窟で1番広い部屋に4人のマーカーが表示されている。その内1人は、抱えられていた女の子だろう。

 部屋の入口から中を覗くと、親玉であろう大男と手下らしい2人がいた。

 大男は右手にバカでかい斧を軽々と持っている。


「こいつは上玉だな! どこで攫ってきたんだ?」


 大男が2人の男に聞いている。

 さっき地上にいた奴らのうちの2人だ。


「それが……俺たちに道を聞いてきたんでさぁ」


「なんでも、自分がどこに向かっているのかわからないとか、意味不明なことを言ってましたぜ?」


「とりあえず睡眠薬で眠らせて連れてきやした」


 手下の2人が答えた。


「あの子は寝てるだけみたいだな……まずは、親玉からを始末するか」


 俺は親玉の背後に移動して、首を刎ねようと血刀を構えた。するとーー。


「誰だ!」


 親玉が俺に気づいて、でっかい斧を振り回してきた。

 俺は、咄嗟に回避して距離を取った。驚いて、闇魔法が解除されてしまった。


「テメェは誰だ……どこから入ってきやがった!」


 どうやら俺の殺気に反応したらしい。


「どこからもなにも、普通に入口からだっ!」


 そう言いながら、手下2人に一気に近づくと、首を刎ねて、アイテムボックスに収納した。


「何をしやがった! あいつらはどこに行った……

テメェ何者だ!」


 大男が怯える姿は、かなりシュールな光景だ。


「これから死ぬんだから知る必要はないだろ……とりあえず死んだら、ちゃんと弔ってやるからなっ!」


 大男との距離を一気に詰めて首を刎ねる。

 初撃ではいい反応を見せたが、手下が殺られた後は、狼狽えて、完全に戦意を喪失していた。

 大男をアイテムボックスに収納し、ついでに斧も回収しておいた。


「さてと……この子どうするかな……」


 俺の目の前には、赤みがかった髪をした女の子が、寝息をたてていたーー。

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