第13話 魔導具屋との出会い
「こいつの活用法考えないとなーー」
宿屋に戻った俺は、宿屋の裏のスペースを借りて、バイクを出して考えていた。
移動に使いたいが、ガソリンタンクが使えない状態だ。俺には修理する知識がないのでどうにもならない。
「アイテムボックスの肥やしにするしかないのか……」
「ん!? お兄さん!
それをちょっと見せてもらっても?」
後ろから、20代後半ぐらいの無精髭を生やした男が話しかけてきた。
俺と同じで『狐の尻尾亭』に泊まっているお客さんの用だ。
「えぇ、いいですよ、壊れてますけどね」
バイクを見せた。この世界にはない乗り物だから、興味があるのだろう。
「おぉ! なるほど! ふむふむ……そうか!」
なんか1人でブツブツ言ってる……
「えっと……」
「お兄さん! これを修理させてくれませんか?」
俺が話しかけようとした時、すごい勢いで振り向いて、聞いてきた。
直して貰えるなら、それにこしたことはない。このままだと、乗ることなくアイテムボックスの肥やしになるだけだ。
「直せるならお願いしたいぐらいですが……直し方がわかるんですか?」
「あ、申し遅れました。私、旅をしながら魔道具屋をやっている、ティムと申します。以後お見知り置きをーー。」
ティムと名乗る男性は、魔道具屋らしい。バイクは魔道具じゃないが、修理できるのだろうか。
「そうでしたか!
俺は冒険者のジンと言います。修理が出来るなら、是非お願いしたいです。ちなみに費用はいくらぐらいですか?」
直してからぼったくられても困るので、今のうちに費用云々に関しては決めておくことにした。
「いえ、費用は大丈夫です。私がやりたいと思ったことなので。
ただ……その代わりと言ってはなんですが、材料となる魔石を取って来ていただきたいんですがーー。」
バイクを修理するのに、魔石を使うらしい。ガソリンはこの世界に来てから見てないので、魔石を動力にするのだろうか?
「それぐらいなら大丈夫ですよ。ちなみにどの魔物の魔石が必要なんですか?」
この辺りにいる魔物ならすぐに取りに行けるが……
「実は……エレメンタルなんです。冒険者でも数を集めれる人は中々居ません。
属性を付与させたり、魔力を通しやすい魔石なので魔道具に使いやすいのですが……今は手持ちがなくて」
「エレメンタルでいいんですか? 属性はなんでもいいんですか?」
俺にとっては、エレメンタル狩りは苦にはならない。居る場所が固まっていて、むしろ楽なぐらいだ。
「え……?属性は風と水と火が各20個ほど必要なんですが……大丈夫なんですか?」
全く驚かない俺に対して、ティムさんが驚きながら答えてくれた。
「20個なら1時間あれば大丈夫そうですね。取ってきますので待っててもらえますか?」
今の手持ちで半分は揃っているので、殆ど時間もかかりそうにない。
「1時間ですか!?そんなに早く……もしかしてすごい冒険者さんでしたか?」
「いえいえ、今朝Cランクになったばかりの、ただの冒険者ですよー
それじゃ、すぐ取ってきますね!」
こんな簡単に直してもらえるなんて、夢にも思っていなかった俺は、急いで洞窟に向かった。
※ ※ ※ ※
「よし!これで20個だ!」
洞窟に着いた俺はエレメンタルを狩って魔石を集めた。予定の魔石を10分程で集め終えた俺は、また宿屋に向かって走った。
西門で門番にギルドカードを見せて町に入った。
門番が「もう帰ってきたのか!?」とかビックリしていたが笑ってスルーした。
「お待たせしましたー!」
宿屋に着いた俺は、バイクを調べているティムさんに声をかけた
「!? もう帰ってきたんですか?
まだ30分も経っていませんよ?」
「早く直して欲しくて、つい急いじゃいました」
そう言って袋から各属性の魔石を取り出し、ティムさんに渡す。
「これで大丈夫ですか?」
「はい! これさえあれば明日の朝には直してみせますよ!」
そう言って、ティムさんは作業を始めた。
直すと言うよりは改造になりそうだ。
「それじゃ、お願いしますね」
やることが無くなった俺は、宿屋のおばちゃんにティムさんの事を説明し、明日の朝までは作業してるかもしれないことを伝えた。
「町でも散策してみるかー」
この町に来てから、宿屋とギルドを往復しているぐらいで、あまり町中を見ていなかった俺は、時間潰しも兼ねて散策してみることにした。
「そういや、今日は飯食ってないな……どこかで飯でも食べてみるか」
いつも自分で飯を作って食べていたので、この世界の料理をまだ一度も堪能してないことを思い出した。
「確か、大通りに飯屋があったよな、昼間でもやってるならあそこにしよう!」
いい感じの飯屋を思い出した俺は、町の中心に向かった。
※ ※ ※ ※
「お!昼間でもやってるな」
そう言いながら店の扉を開ける
中世ヨーロッパの見た目に合った、かなり味のある店だ。
夜にこの付近を通りかかった時に繁盛しているのを見たので、それなりに人気な店なはずだ。
「いらっしゃい! 空いてる席にどうぞ!」
店に入ると、小太りなおっちゃんがカウンター越しに接客してくれた。
店の中はガラリとしており、客が全然いない。
昼間はあまり繁盛してないのだろうか。
「あまり出せる料理がないんだ……兄ちゃん勘弁な!」
適当にテーブルに着いた俺に、おっちゃんが申し訳なさそうに言ってきた。
「昼間はメニューが少ないんですか?」
夜がメインの店なら昼間はあまり力を入れてないのも理解出来る。
「いや、そんなことねぇんだが……最近この付近に盗賊が居座っててな……食材が馬車ごと取られちまって物価が上がってんだ……」
盗賊が原因だったらしいーー。
折角、この町の美味しい料理を堪能できると思っていたが、延期になりそうだ。
盗賊を討伐対象にするか悩んでいたが、飲食店に迷惑をかけるなんて、定食屋の息子としては捨て置けない。
「それじゃ、今ある食材で作れるものを1人前お願いします!」
ギルドに向かうことにした俺は、食事もそこそこに店を出た。
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