第12話 ランクアップと新防具
エルさんに言われるがままに後をついて行き、応接室に通された。
応接室に入るとテーブルとソファが置いてあった。座って待っているように言われたので、ソファに座って待つことにした。
数分後、応接室のドアが開けられて、ギルドマスターが入ってきた。
「ジン! 無事に帰ってきてくれたか! 紹介がまだじゃったな! 知っておると思うが、ワシはギルドマスターのランディじゃ!」
そういいながら笑顔で迎えてくれたが、意味がわからなかった。
依頼の場所に行って、依頼を達成して帰ってきただけで、ギルドマスターと話をする必要があるのだろうか?
少し時間はかかったが……
「少し遅くなったけど、無事に帰ってこれたよ、服はボロボロだけど……ハハハ……」
苦笑いで答える
「そうじゃ、どうしてこんなにも時間がかかったんじゃ? そんなに遠い洞窟でもなかったじゃろ? 12日間も行方不明じゃったんじゃぞ?」
時間がかかったことが原因のようだ。ランディの目付きが真剣なものになった。と言うか、俺はそんなに洞窟にいたのか……
「あ、あぁ。実は……」
俺は洞窟であったことを説明した。
もちろん、アイテムボックスやスキル、血刀のことは省いて説明した。
「で、これがそのシャドウベアーとブラッドウルフの素材だ」
そう言って、袋から毛皮や魔石、爪、牙を取り出す
「 「……」 」
エルさんもランディも固まってしまった。
「本当にシャドウベアーを単独で倒したのか?
あのシャドウベアーじゃぞ?
しかもブラッドウルフなんて
ついこの前、冒険者になったばかりのFランク冒険者がCランクの魔物を倒せばびっくりされるのは当たり前だ。
「本当だ。素材以外に証明が必要か?
毛皮は防具屋に持っていく予定だから、それ以外は買取をお願いしたいんだがいいか?」
「ふむ……わかった! まずは依頼ご苦労じゃったな。シャドウベアの討伐報酬と素材の買取に関しては少し時間をくれんか?
少しやることがあるからの……明日、またギルドに顔を出してくれ」
そう言ってランディが足早に出ていった
「それでは、このままこちらで、依頼達成の確認と買取素材の確認をしますね。このテーブルに出していただければ順番に見ていきます」
エルさんにそう言われたが、全部はさすがに乗りそうにない……そもそも袋にそんなに入っているように見えない。
仕方ないので、残りはまた後日にまわし、乗る分だけ乗せていくことにした
「……かなり多いですね、エレメンタルだけで魔石57個ですか……エレメンタルの魔石は魔道具に使われるのでどの属性でも銀貨1枚で買い取りになりますね」
この世界には魔道具があるのか……あとで真道具屋でも探してみるか。
「ほかの素材も品質がいいですねーー。」
そう言って買取が進んでいき、素材だけを先に渡して、明日の朝一番にギルドに来るように言われた。
毛皮はどれが使えるかわからないので、とりあえず渡していない。
あと、依頼報酬は先に渡してくれるそうなので、エレメンタルの魔石57個渡した。報酬は銀貨57枚だ。明日は魔石の買取分も入るので、一気に懐が暖かくなった。
俺はギルドを出た足で、防具屋に向かうことにした。
「すみませーん。素材の皮持ってきましたー」
シェリーさんの姿が見えなかったので、奥に声をかけた。
「あぁ、来たんだね。で、皮はどの魔物のやつだい?」
奥から返事をしながら、シェリーさんが出てきた。
「これをお願いしたいんですけど……」
そう言って、袋からシャドウベアー、ファングウルフ、ポイズンリザードの皮を出していく。羽織っていたブラッドウルフの毛皮も一緒に渡した。
「おぉ、またいろんな種類のを持ってきたね……お!これはいいね!こいつの皮は伸縮性がいい上に防御力も高いからいいのが作れるんだよ!」
シェリーさんはポイズンリザードの皮を手にしながら言った。
「それじゃあ、その皮でお願いできますか?」
「わかったよ! それじゃ先に採寸するね」
そう言ってメジャーで俺の背丈を測り、メモを取っていく。
「よし! 明日の昼には出来てるからね! お金はその時でいいよ銀貨5枚持っといで! ついでにファングウルフの毛皮でインナーも作ってあげるよ」
「分かりました、それじゃ明日取りに来ますね」
俺は、ブラッドウルフの毛皮を羽織り、とりあえず宿屋に向かうことにした。
部屋に入った俺は、ベットに入りすぐに意識を手放した。宿屋には、1週間分の宿賃だけ先に支払った。
『狐の尻尾亭』で一晩休んだ俺は朝一からギルドに向かっていた。
ギルドに着いて、扉を開けると、前と同じく、凄い人だかりができていた。
「ジンさんですね。マスターから部屋に通すように言われています。こちらにどうぞ……」
俺に気づいた職員が話しかけてきた。
職員の後をついて行くと、豪華な扉の前に連れてこられた。
『コン、コン、コン』
「マスター、ジンさんをお連れしました。入ります。」
ドアをノックし中に入ると、ギルドマスターのランディが奥の椅子に座っていた。
「まぁ、そこに座りなさい」
指示されたソファに腰掛ける。
「すまんな、朝一番に来てもらって。今回は君のランクについて話があったのでな、わざわざ来てもらったんじゃ」
そう言って、昨日渡していた俺のギルドカードをテーブルにおいた。
「実はのぅ、シャドウベアーをソロで倒すには、ランクC上位以上の実力をもっていないと無理なんじゃ。
ジンはそれを成し遂げたからの、昨晩、本部に掛け合ってランクアップの手続きをしておいたんじゃ」
そう言って、今度は別のギルドカードをテーブルに置いた。そのカードには大きくCと書かれており、色も綺麗な青色だった。
「どうじゃ、これを受け取ってくれんか?」
俺は、Cランクのギルドカードを受け取った。
「有難く受け取るよ。でもCランクになると町を移動しないと行けないな……
あまりこの辺にはBランクの依頼はないようだし」
「ん? あるぞ?
あーそうか、お主はまだ、
「他にも依頼ボードがあるのか?」
「あぁ、実はBランク以上は2階にある別室に依頼内容が張り出されるんじゃ、C以下とは報酬も内容もかなり変わってくるからのぅ」
なるほど、それでBランク以上の依頼が見当たらなかったのか……
「それに、Bランクの依頼からはBランク以上でないと受けれないぞ?お主はまだCじゃからの、まずはBに上がることが出来れば、別室に案内してやろう」
Bランクはまだ受けれないのか……
「どうすれば、Bランクに上がれるんだ?」
教えてもらえるかわからないが、一度聞いてみた
「お主の実力なら、後は盗賊討伐ぐらい出来れば、Bランクに推薦してやれるぞ?」
「盗賊の討伐……」
いつかあるとは思っていた……しかし、人を殺めるとなるとちょっと躊躇してしまうな。
「お主はまだ若いからの……無理にとは言わんが受ける時はエルにでも伝えてくれ」
「わかった。その時はお願いするよ」
そう言って俺は部屋を後にした。
エルさんから、素材買取分のお金を受け取った俺は、まだ早いが防具屋に顔を出してみることにした。
「すみませーん、ちょっと早いですけど、できてますか?」
シェリーさんが見当たらなかったので、奥の部屋に声をかけた。
「はいはい! 徹夜で作ったから出来てるよー」
奥から黒が基調の防具を持ったシェリーさんが、返事をしながら出てきた。
「最後の調整するから、一度着てみて」
防具を手渡してきたので、その場で服を脱いで着替える。シェリーさんの顔がちょっと赤い気がするが、スルーだ。
「どうですか? 似合いますかね?」
爬虫類っぽい魔物の皮なので、レザーで少し硬いのかと思っていたが、意外と伸縮性があり邪魔にならない。それに通気性がいいのに水などは通さないらしい。フードもついていて、雨の日にも良さそうだ。
「サイズはピッタリだね。調整もしなくて大丈夫そうだね。それじゃ、銀貨5枚だよ!」
「はい!ありがとうございます。また必要な時は寄らせてもらいますねー」
お金を支払った俺は、そのまま店を出て一度宿屋に戻った。
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